黙して語らない騎士の口を動かすお仕事です5
私の身長は154cmくらいなので、180cm以上あるキラさんから見れば、確かに小さい子・・だろう。だが成人した20歳です!と言っても、ものすっごい疑わしい目で見ている・・気がする。
「私の国の人って、顔立ちが幼く見えるんで、よく間違われるんです」
「・・・・そうか」
「こっちの人は、皆さん大人っぽいというか、綺麗な顔立ちをしている人、多いですよね」
まぁ、主にキラさんだけど・・・。
ランプのほんのりした明かりの中だと、これまた彫りの深さが際立つ。美術室にあった綺麗な彫刻みたいな顔だなぁ・・って思ってしまう。
「・・・ナルは、綺麗なものが好きか?」
「ええ、まぁ?」
「・・・・・・・・・・・・そうか」
随分と、返事が重いような・・?
「ええと、私が出来そうな仕事・・って、何かありますかね?」
私は、思いっきり話をそらす事にした。
空気は変えていけばいい。
キラさんは、少し考えて・・
「・・・・家事や掃除はできるか?」
「はい、まぁ一人暮らししてましたし」
「一人で暮らしていたのか?」
「・・ええ、まぁ、私くらいの年齢なら・・」
こんな小さい子が?とか思ってない・・?これでも成人なんだぜ?
「・・・そうか・・、それならこの世界を少しずつ覚えるために騎士団で、炊事や掃除の仕事をするのもいいかもな・・」
「寮みたいなの、あるんですか?」
「ああ」
「キラさんも騎士団の寮に住んでいるんですか?」
「ああ」
「それなら安心だなぁ・・」
最初に会った人がいてくれると、心強いし。言葉少ないけど。
よし、保護してもらったら、キラさんのいる騎士団の寮でお仕事できないか聞いてみよう。
「キラさん、もし騎士団で働けるようになったら、時々話とかしてもらえます?」
「もちろんだ」
はぁー・・・良かった。
この世界にいきなり来たけど、ひとまずキラさんという知り合いが一人できた事は、大きい。ちょっと・・いや、だいぶ安心だ。そう思ったら、もう眠気がやってきた。そりゃそうか・・いきなり乗馬をしたわけだし、明日もするわけだし。
「・・キラさん、すみません・・ちょっと疲れたんで、先に寝ますね。・・あと、もし起きなかったら、すみませんが起こしてもらえると助かります・・。私、なかなか起きられないので・・」
「・・・・わかった」
静かにキラさんが返事する。
はぁーこれで、明日も安心だ・・。
着てきたまんまの服で寝ちゃうのも、なんだけど・・・お布団で寝られる有り難さに感謝しつつ、そっと目を閉じる。
翌朝、
「ナル・・」
トントンと私の肩を優しく叩くキラさんの声で目が覚める。
うぅ、眠くて目がなかなか開かない・・。
「お、起きます・・・」
とか言いつつ、うつ伏せの状態から、ゆっくり体を起こし、座る。
私・・覚醒に時間のかかる奴なんで・・すみません・・。
そう思いつつ、目をこすって辺りを見ると、少し日が昇りかけている景色が窓から見える。
「結構、早くに出るんですね・・?」
そう言いつつ、キラさんを見ると薄く笑っている・・ような?
「早起きは苦手か・・?」
「・・・そうですね・・・。結構いつまでも寝ちゃいます」
うぅ、ちょっと恥ずかしい・・。目を完全に覚ますために顔を洗ってこよう。
「顔を洗ってきます」
ちょっと体はフラつくけど、昨日の乗馬直前よりは体が動く。
洗面台で顔を洗って、さっぱりしてから、髪をポニーテールにする。
乗馬するなら、この方がいいだろう。
洗面所から出てくると、キラさんは私の顔を見てボソッと・・
「成人・・・・・・・」
と言った。
おい、信じてないな?




