黙して語らない騎士は動く。9
遠い目をした団長さんに、
「お願いだから・・ウルキラに僕が殺されないように、細心の注意を払ってね・・」
そう言われた・・・。
珍獣を扱えるけど、注意しろって事・・・?私の要領を得ない顔を見て、ため息をつきながら団長さんがヨロヨロとデスクに座って仕事をし始めたので、私も始めることにした。
「そういえば、王都の騎士団って忙しいんですか?」
「なんで・・・・?」
「ラフさんに来ないかって、誘われて・・・」
「うあああああぁぁあああああああーーーーーーー!!!!!!」
ガバッと机に突っ伏す団長さんに、思わずビクッと体が跳ねる。な、何?!!
「お願い・・、それ・・・、絶対ウルキラに言わないでね・・。僕、やだよ・・まだ剣の錆になりたくない・・・」
「いや、それくらいで団長さんを斬り捨てないと思います」
「そうであって欲しい・・・、あ、絶対明日ニルギ呼びつけよう」
「ニルギさん!?じゃあ、後でお茶菓子買ってこようかな〜」
「・・・・こんなに気遣ってるのに、この差!!!」
いや・・・、からかってこないし・・、頼りになる・・の差では・・とも思うけど、さっきも何となく助けてくれたっぽいから、あえて言わなかった。
「あとで団長さんにも、何か買って来ますよ〜。何がいいですか?」
「強い酒」
「ニルギさんに言っておきます」
「ごめん、嘘です。この間買って来てくれた、甘くないお菓子がいいです。お願いします」
うむ、そういう素直になる所は大変よろしい。私は、ニコッと笑って・・
「じゃあ、3時になったら、団長さんのお財布で買い出し行って来ます!」
「うぅ、ナルさんがどんどん強くなっていく・・」
・・半分くらいは出しますよ、笑って答えると、ようやく仕事を始めた。うん、私も頑張ろう。
大量の書類を、フランさんも手伝ってくれて、なんとか捌いていく。掃除と違うけど、これもなかなか充実感がある。
あと少しで3時・・になる頃に、団長さんがお菓子お願いしたい〜!というので、私は休憩も兼ねて買い出しに行く用意をする。団長さんは、ちゃんと財布を出してくれた。太っ腹!
フランさんが籠を貸してくれたので、早速出かけた。
美味しそうなのがあったら、夕飯後にキラさんと食べるのを買っておいてもいいかも・・。そう思いながら騎士団の詰所を出て、以前キラさんに教えてもらったお店へ急ぐ。
今日はお菓子屋さんが混んでいたので、注文をすると包んでもらうまで、ちょっと邪魔になりそうだったので、店の入り口で待っていた。
「ナルさん・・・?」
呼ばれて振り返ると、ラフさんが立っていた。
「あれ、ラフさんもお菓子を買いに来たんですか?」
「・・いや、町の様子を見に・・」
「ああ、警備的な・・」
仕事熱心だな・・。あ、シーヤの町の調査もするって言ってたような・・、そうでないような・・。
「お仕事お疲れ様です。王都から来て、あちこち回るのも大変ですね」
「まぁ、それが仕事だからな」
「確かに」
私がヘラっと笑うと、笑い返してくれた。
うん、こういうコミニュケーションの方がずっといい。あのツンケンした対応は好きではない。
「ナルさんは、ここの住民なのか?」
「あ、いいえ。ここへはキラさんに騎士団の仕事を紹介して頂いて、それ以来シーヤに住んでいます。海とか綺麗だし、いい町ですよね」
「・・・そうか」
と、お店の中から注文したものが包まれたのか、声がかかるので、会釈してお菓子を取りに行く。ついでに、会計の所にあった飴を一つ買って戻った。
「ラフさん、これどうぞ。休憩の時にでも食べてください」
ころっと、可愛いラッピングをされた飴を渡す。
「お花のお礼です」
ヘラっと笑うと、ラフさんは嬉しそうに笑う。
珍獣って団長さんは言ってたけど、普通の人だよね・・?
そんな事を思いつつ、私は買ったお菓子を、早くも食べたいなぁ〜なんて思っていた。




