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黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人と家族。
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黙して語らない騎士、父だけど夫でもある。

最後はルーシェさん視点です〜。


ソマニの竜の卵は無事に三つとも孵化した。

赤い竜が三匹。どれも健康体。


王都へ報告すれば王からの労いの言葉と感謝が綴られた手紙が送られ、それは驚いた。バリラはそういうものは一切なかった。竜が孵化をするのは当たり前、それを手伝うのも当たり前。命の在りようも采配一つで決められていたから。



「ルーシェさーーーん!!!」



元気な声に後ろを振り返れば、ナルさんがウルリカ君を抱っこし、そのウルリカ君の腕の中には白い竜‥パウが顔を出してこちらを見つめていた。嗚呼、本当にこの国に来て良かった。そんな事を思いながら眩しい存在に目を細める。


「元気にしてましたか?」

「はい!あっという間に三ヶ月経ったけど、こっちの竜ちゃん達の大きさやっぱり全然違いますね!」


ナルさんが、フラン殿が広げてくれた大きな池の中で泳ぐ三匹の竜を見て目を丸くした。確かにもう十歳くらいの子供のサイズだしな‥。ナルさんの後ろで小さく会釈するウルキラ殿も、竜達を見て「子供が育つのは早い‥」と呟くので笑ってしまう。


この人達にとっては竜も子供も同じような存在なのだろうな。



「そういえば籍をようやく入れたそうですね!」

「え!?あ、ああ、その、まぁ、そうだな」

「フランさんがあと三ヶ月で完璧な挙式を挙げられるようにと、ライ君とセラ君で総力を上げていたんで楽しみです!」

「そ、そうなのか?!」

「エリスさん、すっごく張り切ってましたよ」

「あ、あいつは‥!!!」



先日、ようやくひと段落をしたタイミングでエリスが「籍を!!籍だけでも入れましょう!!!」と、泣きだしたので、そういえば忘れていたな‥と、籍を入れたのだ。結婚式はまだ良いと言ってたのに‥!じわっと赤くなる私を微笑ましそうに見るナルさんをじとっと睨むも、へらっと笑って返された‥。


ナルさんは周囲を見回し、


「しかし、ジャングルみたいですねー!これが庭って、フランさんの尺度はどうなってるんだろう」

「それは確かに‥。最初に「小さな庭しか用意できなくてすみません」と謝られた時は戸惑った」

「良かった!ルーシェさんも同じ感覚だった!」

「私は一般庶民の出だぞ?当たり前だ‥」


一体どんな人間だと思っていたんだ。


「あう〜〜!」

「ウルリカ、やっぱり他の竜を見たらテンション上がるね」

「‥やはり竜騎士か」

「早い!まだ八ヶ月ですよ?」

「クゥゥウ〜〜!」

「あ、パウ怒ってる!ヤキモチ焼いてるよ、ウルリカ」

「あう?」


ナルさんの言葉にウルリカ君は胸の中にいる白い竜を見て、小さな手でパウの頭をペチペチと叩いた。‥いや、本人にしたら撫でたのか?



パウが水色の瞳を輝かせ、ウルリカ君の顎下に頭を擦り付ければ、ウルリカ君が嬉しそうにきゃっきゃと声を上げた。‥平和だ。平和そのものだ。



ナルさんはそんな二人を見て、


「‥いやぁ、ようやく落ち着きましたけど、竜って大変ですね。うちの家具は大体パウに味見されました。執務室のデスクも齧られたし、団長さんなんて書類をこれ見よがしにパウに齧らせようとするからライ君とセラ君が団長さんを檻に入れましょう!って言ってたんですよ」


ぶっと思わず吹き出してしまった。

檻に入った団長‥、それはちょっと見てみたかったかもしれない‥。

くすくすと笑えば、大きな赤い竜が頭上を通り過ぎ、静かに池の淵に着地した。



「ああ、帰ってきたな」

「大きい〜〜!アビーより少し大きいんですね」

「あの子は大きい子だな。だから四つも卵を産めたんだろう」



赤い大きな竜のリムは池で遊んでいる竜達を一匹ずつ舐めると、今度はこちらへのしのしとやって来た。


「お、おお?」


驚くナルさんと、目をキラキラさせたウルリカ君にパウ。

リムがウルリカ君の顔をベロッと舐めると、パウも舐めた。


「‥自分の子ってわかってるんですねぇ」


ナルさんが感動したようにリムを見上げる顔は、やっぱり母親だった。その顔が故郷でもう土に還ってしまった母のようだとぼんやりと思った。


「ちゃんと元気に育てますからね!安心してね」


ナルさんがそう言うと、リムがベロッとナルさんの顔も舐めると、ウルリカ君とパウが羨ましそうに見ていてつい笑ってしまう。



「‥良かったな、リム」



私の言葉にリムがこちらを見ると、同じようにベロベロと舐められた。

おい、そんなに舐めるな!私は子供じゃないぞ!?顔を押し退けようとすると、ウルキラ殿が羨ましそうにこちらを見て、


「やはり竜騎士への愛はすごいな」

「あ、愛‥?!」

「俺達も頑張ろう、ナル」

「キラさん、甘い!空気が甘くなってるけど、今は仕事中!」


ナルさんが慌ててウルキラ殿を止める姿に、また笑いがこみ上げる。

ああ、この先もこの家族が幸せだったらいいな。

どうかずっと幸せであって欲しい。



と、向こうからよく見知った顔が笑顔で走ってくるのが見えた。



「ルーシェさーーーん!!」

「エリス?!仕事は‥」

「三ヶ月、こっちで仕事させて貰えることになりました!オルク団長が新婚が離ればなれだと寂しいだろうと!!あ、その代わりウルキラ殿が王都へ行きますが‥」

「散々お世話になったんだ。それくらいさせて欲しい」

「え!?ウルキラ殿が?な、ナルさんは?」

「あ、私もそっちで一緒に仕事するので大丈夫です!ここで行かずしていつ行くってやつですよ!」



そ、そんな簡単にいいのか??

ぽかんと口を開けると、細い目を更に細めたエリスが嬉しそうに私を見つめ、


「‥私の全て。一緒にいられて嬉しいです」

「ちょ、ひ、人前だぞ!!」

「あ、私達はどうぞお気になさらずに」

「コミュニケーションは大事だぞ」

「う、うう!!」


な、なんだこれ?

戸惑う私にエリスは甘ったるい空気を出しているが、



「わ、私はそういうの無理だから〜〜〜〜!!!」



と、叫んで逃げ出すと、赤い竜のリムが後ろで可笑しそうに鳴いた気がした‥。





キラさんシリーズ、実は前回も途中まで書いていたのですが、しっくりこず‥。

ようやく納得できたので一気に書きました!やっぱり皆を書いていると、私が元気を貰う‥。育児ネタは好き嫌いもあるからどうかなぁと思ったのですが、気にしないことにしました(笑)


ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!

毎回500話超え、しかも時々復活‥くらいの小説なのに「いいね」をしてくださって感謝です(^^)

また続きを書きたいと思っていますので、今しばらくお待ちください〜。

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