黙して語らない騎士、父だもん。
キラさんがソマニへ戻った翌日、ウルリカは全快!
一応病院へ行って太鼓判を押してもらってから私とウルリカは騎士団へ出勤である。
「おはようございまーす。二日間お休みありがとうございました!」
元気よく挨拶をすると、団長さんは目を丸くして「大丈夫?!もっと休んでていいんだよ?」と、言ってくれたけど、その机の上の書類はなんだ?なんでまた増えているんだ?
私の無言の視線を感じた団長さんはそっと手で見えないように隠したけれど、何一つ隠せていない‥。と、後ろからバタバタと足音がして、ライ君とセラ君が執務室へ入ってくると、私を見て驚いた顔をした。
「ナルさんもう大丈夫なんですか?」
「無理は禁物ですよ!あ、ウルリカ君顔色は良いみたいですね」
「‥ううっ!!うちの職場が最高過ぎる!」
私の横で団長さんが「ちょっと、僕だって心配したのになんでそんな反応違うの?」って聞いたけれど、その横の書類の山を見たらそうなります。じとっと書類を睨むと、団長さんはわかりやすく目を横に逸らし、
「そ、そういえばソマニの竜の卵はやっと一個孵化したんだけど、ナルさんの卵はどう?」
「‥わかりやすく誤魔化しましたね。こっちの卵はまだ何も変化はありませんが、ウルリカがご機嫌に抱っこしているので、何となくですけど大丈夫かなって思ってます」
「そっか。ウルリカ君がご機嫌なら大丈夫かな」
団長さんが抱っこ紐の中にいるウルリカに笑いかけると、ウルリカはにこーっと笑って「ぱう〜!」と言って、肩に掛けてある鞄をペシペシと叩いた。‥やっぱり君、言葉わかってるよねぇ???
とにかく無理をしないように言い含められてから私は早速仕事を始めることにした。幸い、ウルリカはカーペットの上で卵を抱えているとご機嫌なので助かる。ごめんよ!爆速で書類仕事を終えたら一緒に遊ぼうね!
団長さんは私から書類を受け取って判子をペタペタ押しつつ、
「ソマニで生まれた竜は赤い竜で元気一杯らしいよ。他の竜の卵も少しずつ割れてきているから、今日はウルキラもニルギもあっちに出ずっぱりだと思う」
「そう、なんですね‥」
「うちの竜も生まれるといいよね」
ちらっとウルリカが抱えている卵を見る団長さんの目は、キラさんと同じでやっぱりお父さんのような顔をしてて‥、私は小さく笑ってしまう。本当にキラさんといい、団長さんといい優しいな。
「そう、ですね‥」
ふふっと笑ったその途端、執務室へものすごい勢いでフランさんが入ってきた。
「え?!フランさん!?」
「すみません、今戻りました!書類のサインを団長さんにお願いしたくて‥、あ、団長さんこれとこれを至急お願いしますね!ナルさん、ウルリカ君はもう大丈夫ですか?」
「は、はい、色々ありがとうございます」
「ライ君、セラ君、書類が完璧でとても助かりました。ただ無理はしないで下さいね」
「「は、はい」」
笑顔だけどいつもとは違う早口にびっくりする私達。
や、やっぱり忙しいんだな‥、フランさんは団長さんがすごい勢いで書類にサインをしているのをチェックすると、ウルリカが抱えている卵を見てにっこり微笑み、ウルリカを撫でてから卵をそっと撫でた。
「早く生まれてくるんですよ?うちの庭は小さいけれど滝もあって居心地が良いから楽しいですからね」
「「「小さい庭‥‥‥」」」
思わず私とライ君、セラ君で声を揃えたさ。
フランさんは少し照れ臭そうに微笑み、
「うふふ、うちの庭が丁度環境が良かったんですが、少し手狭なので申し訳なくて‥。今度庭を広くする予定なんです」
「な、なるほど‥‥」
絶対狭くない庭だと思う。
私の心の声が聞こえたのか、ライ君とセラ君も同時に頷いてくれた。そうだよね!そう思うよね?!団長さんが急いでサインをした書類をフランさんに手渡すと、「ではまた来ますね!」と挨拶をするとまた風のように執務室から飛び出していった‥。
「フランさんがすごい勢いだった‥」
「竜が産まれたら今度は子育てだからなぁ。それまでに庭も拡張するから大忙しだ‥」
「庭を‥」
「本人曰く庭だけど、とんでもなく広い」
「やっぱり‥」
フランさんのお金持ちっぷりはちょっと我々には想像できないな‥。
私とライ君、セラ君、団長さんで静かに頷くと、それを見ていたウルリカも真似っこして小さく頷いてから、にこーっと笑ったのであった。
今日も読んで頂いてありがとうございました!!
暑いのでどうぞお体気をつけて下さい〜〜!




