表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人と家族。
549/566

黙して語らない騎士、父だもん。


結局ギリギリまで団長さんに「サインを一つでも多く!!」と、エリスさんは仕事をさせると、山盛りの書類を腕に抱えキリッとした顔で、


「では!これから王都へ戻ります!」


と、言うから団長さんと私で慌てて止めた。



「エリスさん、流石にちゃんとお見送りさせて下さい!残った仕事は全て私とキラさんで全部団長さんにさせますから」

「ナルさん‥」

「一刻も早く戻ってルーシェさんを出迎えたい気持ちもわかりますけどね」

「そうなんですよ!!王都へ!王都へようやく竜と一緒に来てくれたので、もう嬉しくて‥!」



パッと顔を輝かせたエリスさん。デレデレである。

ただわかるよ、ようやく結婚の運びになったし、そのルーシェさんがこちらで竜騎士として仕事をするもんね。そりゃ一刻も早く帰りたいのはわかる。


けど、ちょっと待って欲しい。なにせ1年間も王都の騎士団から出向してくれた上に、後半の半年間は団長さんの書類仕事で疲弊させちゃったから、せめて良い思い出で締めくくらせたい。


「ナルさん、後半口から言葉が出てたよ‥」


団長さんに言われて、えっと目を丸くした。

やだ‥、ウルリカといるとつい独り言が多くなっちゃうからかなぁ。キラさんを見上げると静かに頷き、


「俺も時々思考が口から出る」

「キラさんもなんだ‥。じゃあ、仕方ないですね」

「あのっ!?そこののんびり夫婦?フォローしてないよ?全然僕をフォローしてないからね?」


何故書類仕事を帰る間際まで残していた団長さんをフォローするのだ。

じとっと睨むと、団長さんは申し訳なさそうにエリスさんに視線を移し、



「本当にシーヤ騎士団一同、エリス殿にお世話になりました‥。エリス殿がいなければ騎士団初の育児休暇を取得するなんて、絶対にできませんでしたし、共に仕事をする上でも多くの学びがありました。私も、そしてウルキラも感謝してもしきれないくらいです」



そう言って団長さんがエリスさんに手を差し伸べると、エリスさんは細い目を更に細め、団長さんとしっかりと握手を交わした。


「‥私こそ、すっかり慣れたと思っていた仕事でしたが、こんなにも沢山の発見と気付きを与えられ、感謝しかありません」


ライ君とセラ君がそれを聞いて目を潤ませると、エリスさんが優しく微笑み、


「ライ君、セラ君、そしてフランさん、不慣れな私に対していつもフォローをありがとうございます」

「エリスさん!団長さんが、団長さんがすみません」

「いえ‥、これも修行、鍛錬の一部と思っておりますから」

「今度はもっと僕達も団長さんに書類仕事を的確にできるようにしますね!」

「ええ、ですが無理は禁物ですよ」


団長さんが半ば死んだような目で「ごめんって‥」と、言っているけれども大いに反省して頂きたい。フランさんはにっこり微笑むと、



「さぁ、エリスさん。外で騎士達がささやかですがお見送りの物を用意しているので、一緒に行きましょう。ちなみに結婚式はうちの商会でぜひプロデュースさせて下さいね。落ち着いたらプランを一式送ります」



サラ〜ッと宣伝しつつ、エリスさんを執務室の外へ案内すると、色々なプレゼントを腕に抱えた騎士さん達がワッとエリスさんに駆け寄り、


「ありがとうございました!!」

「また特訓しに来て下さい!」

「今度はぜひ遊びに来て下さいよ!」


と、それは揉みくちゃにされながらどんどんプレゼントを腕に押し付けていくので、ライ君とセラ君が慌てて「プレゼントはこちらに入れて下さい」と、箱を取り出して誘導していた。‥優秀が過ぎる。


エリスさんはそんな騎士さん達に挨拶しながら、後半はもう涙声で、



「‥帰りたいのに、帰りたくないです‥」



と、言うものだから、騎士さん達や私まで泣きそうになる。

最初は王都の騎士団と仲が悪くて大変だったのに、今やこうして助け合う仲にまでなれたこと、本当に良かったな‥。ウルウルしていると、抱っこをしたウルリカが私を不思議そうに見上げ、


「あう?あ〜〜?」

「ん?大丈夫だよ。ちょっとね、寂しくなっちゃって‥」


私の顔を心配そうに見るウルリカに胸が温かくなっていると、事務員さんが一人こちらへものすごい勢いで駆け寄って来た。



「た、大変です!!王都にルーシェさんが至急団長さんとウルキラさんに来て欲しいと‥!!」

「え!?」



ザワッと皆が顔を見合わせると、エリスさんが、


「え、僕は‥‥?」

「え?ええっと、エリスさんは呼ばれてたかな‥」


慌てた事務員さんに、エリスさんは遠くを見つめ、



「‥どうやら私はまだここで仕事をするべきのようです‥。きっと王都にはもう仕事がないのやも」



なんて言うから、絶対そんなことないから!もう一度確認させるから!!と、私とキラさん、団長さんが慌てて言う横で、フランさんがライ君とセラ君に「プレゼントは王都へ送る手配をしておきましょう」と、冷静に指示を出していたのであった‥。




エリスさん、多分執筆期間を考えると足掛け2年はあったと思う‥。

お疲れ様でーす!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ