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黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人と家族。
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黙して語らない騎士、成長中!11


女装したエリスさんとルーシェさんのお陰であっという間に犯人はお縄になり、犯人を捕まえてご機嫌なアビーは嬉しそうに私の方へ来て、撫でろとばかりに頭を私の手に擦り付けてきた。


「うう、アビー可愛い!可愛いねぇ、偉いねぇ!」

「クェエエ」


アビーが嬉しそうに鳴くと、抱っこされ眠っていたウルリカがぱちっと目を開けアビーをじっと見つめフニャッと笑った。



「あう〜!」

「クェ!!」

「あう、あう〜〜」

「クェエエ〜!」



嬉しそうに手をパタパタを動かし、アビーに触ろうとするウルリカにキラさんとニルギさん、ルピスさんが目を輝かせた。


「竜を怖がらないとは‥、これは将来竜騎士か?」

「将来有望ですね」

「魔術師も捨てがたいと思ったけれど、竜騎士‥。やはり竜を飼うか」


「ちょっと待って下さい。ウルリカの人生はウルリカのものですからね?」


3人のウルリカ大好き人達を止めて置いた。

しかしウルリカとアビーは会話するようにきゃっきゃと戯れている。‥確かにお腹の中にいた時から、アビーが来るとお腹の中でぽこぽこ動いてたっけ。やっぱり竜騎士?



と、ルーシェさんが犯人を引き渡し急いでこちらへ向かおうとしていると、オルク団長と団長さんがルーシェさんを呼び止めた。


「一瞬の検挙だったそうですね」

「いえ、そんな。エリス殿の協力もあったからで‥」

「そうですか、それは良かった」


ルーシェさんが慌ててオルク団長さんに話していると、エリスさんがそれをどこか眩しそうに見つめ、それから騎士さん達の方へ向かおうとすると、アビーがふとそちらを振り向き、ドスドスと足音を立てながらエリスさんに近付くと、エリスさんの襟首を口でバクッと掴んだ。



「こ、こらアビー!何をしているんだ!」

「クェ!」

「いいから離しなさい!エリス殿に迷惑だろ!」

「クェエエ!!」

「こら、ちょ、アビー!!更に掴まない!!」



ルーシェさんの言葉を丸っと無視して、エリスさんの襟首を頑なに離さないアビーに、ニルギさんがポンと手を打つ。


「どれどれ、ちょっとアビー頭を屈めてみろ」

「クェ?」


ニルギさんはいつの間にかウルリカの言葉を翻訳しようと作ったヘルメットを被せた。



『これ、ルーシェの、つがい』



「「「「「え?」」」」」



つがい?

私は横にいたキラさんを見上げると、至極冷静な顔で、



「番とは主に夫婦を指す。恐らくアビーはルーシェ殿とエリス殿は夫婦だと言いたいんだろう」



きっぱりと言い放つと、エリスさんとルーシェさんの顔が一気に真っ赤に染まった。


「ちょ、ちょっと!!アビー、何を言って‥」

『ルーシェ、こいつ好き。帰ったら、泣いてた』

「わあぁああああ!!!ちょ、ちょっと黙って!!!!!」

『会えたら、嬉しそう。離れたら泣く』

「な、泣かない!!泣かないからあぁあああ!!!!」


真っ赤な顔でアビーに必死に叫ぶ横で、女装姿のエリスさんが真っ赤になって顔を覆っている‥。と、それを見ながら目を輝かせるニルギさんとルピスさん。



「竜の感情まで言語化できるなんて世紀の大発明ですね!」

「これは、魔物にも使えるな。そうすれば魔物の討伐にも利用できる!」

「確かに‥、魔術の術式をもう少し広範囲で使えるように工夫しましょう」

「そうだな!じゃ、ナル。こっちはもう十分活用できたから一旦持ち帰るな。あ、ウルリカ。今度はちゃんとお前専用のしっかりとした丈夫なやつを作るから待ってろよ!!」



2人は意気揚々と転移していき、真っ赤になって涙目のルーシェさんとエリスさんを置いて行ってしまった‥。あの、最後までちゃんと責任持ってあげて?どうしたものかと思っていると、エリスさんがアビーの口をそっと手で撫でると、アビーはそっと襟首を掴んでいた口を離した。


ルーシェさんはもう泣きそうな顔で、エリスさんを見上げると力なく呟いた。


「私は‥、それでも竜騎士が好きで‥」

「ええ、私もそんな貴方が好きですから辞めないで下さい。私が辞めます」


ザワッと後ろで固唾を吞んで2人を見ていた騎士さん達が声を上げると、ルーシェさんが「それはダメです!」と叫んだ。ああ、もう〜〜〜!!ど、どうすりゃいいんよ〜〜!!オロオロしていると、キラさんがちらっとオルク団長さんを見て、



「オルク団長殿。頼んでいた竜騎士を王都で育成する計画は?」

「ああ、昨日王都で可決されました。ルーシェ殿、竜騎士育成の為、我が国で指導して頂きたいと正式に本日付けでヴァン団長に申し込んだ所、「本人が了承すれば‥」とお返事を頂いたのですが‥」



キラさんとオルク団長さんの言葉に目を見開いた。

いつの間にそんなの頼んでたの??!キラさんを驚いた顔で見上げると、ふっと口元を緩めた。


「‥空からの攻撃は大きい。機動性も申し分ないし、竜にも乗りたい」

「最後、私情が入ってませんか?」

「‥ナルもウルリカも竜が好きだ」

「それもかなりの私情では?」


私の突っ込みに対し、オルク団長さんが可笑しそうに笑って、



「理由はともあれ、まずはルーシェ殿がいないと始まりません。どうですか?我が国で働いて頂けないでしょうか?」



オルク団長さんの言葉に呆然としているルーシェさんとエリスさんはお互い顔を見合わせると、エリスさんがルーシェさんを見つめ、



「私と結婚して下さい。そうして、これからも空を飛んで下さい」

「‥‥はい、ぜひ」



小さい声だったけど、真っ赤な顔で頷くとエリスさんの顔が嬉しそうに輝き、ギュッとルーシェさんを抱きしめると、アビーが嬉しそうに鳴き、騎士さん達や周囲の見守っていた人達の歓声が港で一際大きく響いた。




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