黙して語らない騎士、成長中!
春!ウルリカ3ヶ月!
よくミルクを飲み、よく寝て、ふくふくと育った我が子は首も座って、今や体をウニウニと良く動かしている。やっぱりキラさんの子供だけあって運動が好きそうで安心したよ。私では壊滅的だしね。
今日は騎士団へ書類を出しにウルリカとお出かけである。
ウルリカが生まれてすぐに私が消えてしまう事件が発生して、キラさんが「外出しないで欲しい」なんて言っていたけれど、呆れた顔のニルギさんに、
「どんだけ守護魔術かけたんだ。言っておくが、王族よりもすごいからな?」
という一言で徐々に外出を1人で出来るようになった。
有難う義理父さん。っていうか、王族よりもすごいってどんだけ〜〜???
しかしそのお陰で同じく王族よりもすごい守護魔術を掛けられたウルリカと一緒に外出できるので良い事にしよう。
すっかり首も座って縦に抱っこするとキョロキョロと私と同じ茶色の瞳で周囲を見回すウルリカが可愛い。
本当はニルギさんが迎えに行くぞ〜って言ってくれたけど、こんな時くらい歩いていかないと私の脚力は弱まる一方だ。すっかり雪も溶けた街並みを歩いていくと、坂道を登った先に少し薄茶色の石が積み重なった騎士団の建物が見えた。
「なんかほっとする‥」
もうすでに実家のような騎士団。
そこを見るだけで安心するんだから、不思議なもんだ。
普段はウルリカと家の周りを散歩したり、キラさんと近くの公園へ行くだけだったので、久々の騎士団にウキウキする。そして、もう一つウキウキなのが‥、
「ナル!」
「あ、キラさん?迎えに来たんですか??」
「ああ。心配で‥」
「徒歩15分くらいでそんな心配しなくても‥」
「だが1人で騎士団は久しぶりだろう」
「キラさん、過保護。めちゃくちゃ過保護になってる」
ヘラっと笑って、騎士の隊服に身を包んでいるキラさんを見上げた。
そう、私のウキウキの理由その2はキラさんが、この隊服姿が見られて嬉しいのだ。本人はお休みなのに会議があるから出勤なんて‥と不満そうだったけど。
何かのフェチではないと思ってたけど、キラさんの隊服姿はやっぱり格好いいなあって思っているんだよね。思わずニマニマしていると、キラさんが私の肩に掛けてあるカバンをサッと持つと手を握った。
「‥無事、姿が見られて良かった」
「心配し過ぎですよ。皆さん元気でした?団長さんの書類は?」
「‥‥芳しくない」
「え!??エリスさんがいるのに?!」
「それは、後で説明する。ひとまず執務室へ行こう」
「は、はい」
王都の騎士団から来てくれた副団長のエリスさん。
かなりの手腕を持ってしても団長さんのサボりぐせに対抗できなかったのか?!いや、でも、団長さんだしなぁ‥なんて思いつつ、キラさんと騎士団の門を潜ると、練習をしていた騎士さんや、通りがかりに私を見つけた騎士さん達が手をブンブン振ってこちらへ駆け寄ってきた。
「うぉおおお!!!ナルさんおひさしぶりっす!!!」「近い」
「マジで可愛いっすね、赤ちゃん!!!」「そうだな」
「ウルキラ団長補佐にそっくりっすね!」「ナル似だ」
「もう復帰っすか?!」「いやまだだ」
横で私の代わりにキラさんが全部答えてる‥。
寡黙な騎士だったのに、今日は随分と饒舌だな。
淡々と答えるキラさんを気にする事なくニコニコと話しかけてくれる騎士さんに、私は私で嬉しくなる。やっぱりこの空気いいよなぁ〜。
「えーと、ひとまず執務室へ行ってきますね〜」
と、私が言うと騎士さん達がハッとして顔を見合わせる。
なに?!何かあったの?私が皆の顔を見回すと、騎士さん達はそれぞれ顔を見合わせると、1人がちょっと顔を歪めて、
「あの、ナルさん‥。なるべく優しくしてあげて下さい」
「団長さんに?」
「あ、あの人はいつも通りで。むしろもっと厳しめで」
「あ、そ、そうなの」
「エリス団長補佐、すごく‥見てられなくて」
エリスさん、そんなに大変な事態なの!?
私は驚いて、キラさんの手をグッと引っ張った。
「キラさん、ひとまず執務室へ急ぎましょう!!」
「ああ。だがゆっくりでウルリカがいる」
「そうだった。ごめんウルリカ、うっかりしてた」
「あう」
抜群のタイミングで返事をしてくれたウルリカに聞いていた騎士さん達がデレっとした顔になる。「マジで可愛い」「将来絶対賢いっすよ!」って言う言葉にお礼を言いつつ、逸る気持ちを抑えて執務室の扉をノックしながら入っていく。
「失礼します!!ナルです!」
「あ、ナルさん!久しぶり〜」
団長さんが目の前の席で相変わらず素晴らしいくらいに積み上げられた書類を書いているその横で、青い顔をしながら書類に判子を押すエリスさんに思わず目を丸くした。
本当に一体どうしたの??!
キラさんシリーズから年明けです!
(いやもう腰が痛くて死にそうでしたが、ようやく復活しました。坐骨神経痛とか椎間板ヘルニアってやばいくらい痛いですね‥)




