黙して語らない騎士、変わらず騎士。16
ライ君とセラ君に仕事中はちゃんとしろ!と、言われつつも、つわりのお嫁さんの事は同じように心配してたのか、「まぁ、今回だけだぞ!」と許してあげるライ君達。なんだかんだと言いつつ優しいよね。
「私までポプリありがとうございます」
「いやいや、ついでみたいになっちゃって申し訳ないんすけど、あんまり嗅いだ事ないポプリなんすけど、いい匂いだなぁって思って、いくつか買い込んじゃったんで‥」
「おい!!バカ兄貴どんだけ買い込んだんだ!?もう少しで二人目生まれるんだから、あれだけ無駄遣いはするなと‥!」
すかさずライ君の雷が落ちたけど、ウルクさんはどこ吹く風。
ニキ君の頭をワシワシと撫でて「ライとセラの言う事、よく聞いておけよ〜」とお父さんの顔だ。うーん、大物だ‥。
「じゃ、俺そろそろ失礼します!ライ、セラ、ニキを頼むな」
「わかってる!早く仕事行ってこい!!」
ライ君にしっしと手で追い払われても笑顔で警備に戻ったウルクさん。
団長補佐のキラさんはそれを見て小さく笑い、
「あれで色々気にしてくれている」
「そ、そうですか?うちの兄貴、大丈夫ですかね?」
「ライやセラを信頼している。十分いい兄貴だろう」
キラさんがライ君とセラ君にそう話すと、二人は嬉しそうに‥でもちょっと素直になれないのか、笑顔を堪えるような顔をするので、思わず吹きだしてしまった。
「本当に面白いよねぇ、ライ君達」
「あ、ナルさん!そんな笑って‥」
「いやぁ、良い兄弟だなぁって思ったんだよ〜〜!ふふ、今日会えて良かった」
「それなら、いいんですけど‥」
ちょっと顔を赤くしたライ君の手を、ニキ君がクッと引っ張る。
「あっち、いく〜」
「わかったわかった。じゃあ、ナルさん、ウルキラさんまた!ニキとお菓子買う約束してたんで!」
「うん、またね〜!今度はうちへも遊びに来てね!」
「はい!ぜひ!!」
ライ君とセラ君がニキ君の手を繋ぎつつ、手を振って公園の向こうにあるお店へ歩いていく姿を見て、ああいう兄弟っていいよなぁとちょっと羨ましくなってしまう。私も兄弟の一人か二人でもいれば、何か違ってたかな?キラさんと繋いだ手を見て、
「思わぬ事実まで知っちゃって、びっくりですね」
「そうだな‥。ウルクももう少し鍛え上げて、昇進できるようにしないとだな」
「へ?」
「二児の父になるんだ。休みも取れるようにしておきたい」
「だ、団長補佐〜〜〜〜〜!!」
キラさんってば、ウルクさんもその家族の事も考えてるとか!
あ、でもキラさんって一見人に興味なさそうだけど、結構騎士さん達とか警備隊の人達とかよく覚えてるよね?
「もしかして、キラさん騎士さん達の家族構成とか‥」
「覚えている。情報漏洩のないように‥もあるが、有事の際には家族の事も考慮する必要があるからな」
「くっ‥!うちの夫がすごい!」
「でも、そう配慮するようになったのもナルのお陰だ」
「え?」
私がぽかんとキラさんを見つめると、キラさんは私の腕の中で寝ているウルリカの頬を撫でる。
「ナルが大切で、ナルが大切に思っている人も大切で、そうしたら、皆大切にしたいと思った」
「え‥、でもキラさん十分出来てると思いますけど‥」
「‥以前は、一人よがりな所も多かった。だからナルのお陰だ」
キラさんはウルリカの頬を撫でつつ、私に優しく笑いかけてくれたけど、それを気付いてすぐに実行できるキラさんのがずっとすごいと思うんだけど‥。
「キラさんは控えめだなぁ」
「そうか?」
「そうですよ。私だったら自分ですごいだろ〜って言っちゃう」
ヘラっと笑うと、キラさんはますます目を細めて今度は私の頬を撫でる。
「そんなナルもいい」
「キラさん、私に激甘ですよ」
「そうか」
キラさんがそう言って、流れるように私の唇にキスをする。
ちょーーーい!!ここお外!!周囲の目!!!
思わず周囲をキョロキョロを見回すと、公園の端っこでボールを皆追いかけていて誰も見ていなかったけど‥心臓に悪い!っていうか恥ずかしい!!
赤い顔でキラさんをジロッと睨むと、キラさんが可笑しそうに笑う。
「ナルは可愛い」
「だーー!!もう一回止めて!キラさん甘いの止めて!!」
「‥無理かもしれない」
「そこをなんとか頑張ってキラさん!!」
そう叫ぶと、キラさんが珍しく声を出して笑った。
うう、くそ!カメラで今こそキラさんを撮ってやる!!急いでカメラで写真を構えたら、一瞬でいつもの顔になった!くそ〜〜〜!!魔法か?!!




