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黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人と家族。
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黙して語らない騎士、変わらず騎士。15


キラさんとウルリカ、私で3日ぶりの外である。

高く、薄い冬の青空はなんとも気持ちがいい。

すっと息を吸うと、冷たい風は鼻に入ってきて、なんだかそれさえも清々しい。


「ウルリカ、寒くない?」


抱っこ紐に入れてるウルリカを見ると、寝ている‥。

君、寝るの早くない?っていうか、ほぼずっと寝ている‥。この延々と寝てしまうのはまさに私に似ているなぁ。



「気持ち良さそうだな」

「そうですね。あ、この角度キラさんにそっくりです」

「そうか?」

「寝ている顔は私が一番見てますからね!断言できますよ?」

「‥そうか」



キラさんがちょっと照れ臭そうにはにかむので、思わず胸の中がキュンとなる。ぐっ‥可愛いな。と、キラさんが私の空いた手をそっと握る。


「今だけ、手を握っても?」

「ど、どうぞ?」

「ナル、声が裏返ってる」

「そんなことないです!ちょっと照れただけです」


自分から照れ臭いから‥って言っちゃって、普通に声が裏返ったのを肯定している私‥。ええ、ええ、アホですよ。だってキラさんの甘い瞳にドキッとしちゃったんだもん!!赤い顔でキラさんをちらりと見上げると、嬉しそうに水色の瞳が私を見つめていて、心拍数がやばいことになってる。


「‥キラさん、見過ぎです」

「仕方ないな。カメラを撮れないし」

「魔術でも撮れるのに‥」


知ってるんだぞ、片手でも魔術式で撮れちゃうの。

そう思うけれど、嬉しそうに私を見つめるキラさんにこれ以上何を言えよう。キラさんの手を軽く引っ張って、公園へと促す。一緒に歩き始めると、ここ1ヶ月ロクに家から出なかった景色が少しずつ冬から、春の景色に変わっているのに気がつく。



「もう少ししたら、お花見もできそうですね」

「そうだな」

「あ、でもその前に騎士団の訓練場の木の下にも行きたいな」

「なぜ?」

「‥あそこは思い出の場所なんで、一番最初にお花見というか、ウルリカと行くならそこがいいなって‥」



大事な場所に、新メンバーでもあるウルリカを招待したいんだけど‥、そういうのって変?キラさんを見上げると、そこにはそれはもう嬉しくて堪らないといった表情のキラさんが私を見ていて‥。


「そうしよう。首が座ったら一緒に行こう」

「へへ、良かった〜〜。じゃあ約束です」

「ああ、約束だ」


キラさんが私の手をギュッと握って、それはもう嬉しそうに目尻を下げると、



「ウルキラさーーん!ナルさーーん!」

「っへ?」



呼ばれた先を見つめると、公園でライ君とセラ君が小さな子の手を引きながら歩いている。えー!なんで二人がここに?って思ったけど、今日は休日だ。ライ君が小さな男の子をサッと抱っこしてこちらへやってきた。


「ナルさんお元気そうで何よりです!」

「うん久しぶり!元気だった?団長さんは仕事してる?」

「ええ、ニルギさん不在をいいことにサボろうとしているんで相変わらずせっついてます」

「あちゃー!団長さん‥」

「でも大丈夫ですよ。エリスさんが常に見張ってますし」

「それなら大丈夫か。てか、その子は‥」

「兄貴の子供です。ニキ、大きくなったでしょ?」

「ええ?あの時の??!そんなに大きくなったの?」


以前、ウルクさんの元へ赤ちゃんが捨てられたしまったけれど、その子がこんなに大きくなったの?!驚いて、スタスタと歩く薄茶の髪の子をまじまじと見ていると、ライ君がニキ君を見て、



「今、フィアナさん妊娠中で、大体休みは俺かセラが交代で見てるんです」

「え?妊娠中??!!」



そういえば、フィアナさんを即座に赤ちゃんと一緒にウルクさんは引き取って結婚したんだった!ひえぇ〜〜、そうか‥私達がバタバタとしている間にも愛は着実に育まれていたのか‥。っていうか、ウルクさんすごいな。


「‥ちゃんと育てられるって、本当にすごいね」

「ああ、俺達にとっては先輩だな」

「ええ!?だ、ダメですよ!ウルキラさん!!そんなこと、間違っても兄貴には言わないで下さいね!!ものすごく調子づいた顔が思い浮かんで腹が立ちます!!」

「ま、まぁまぁ、ライ‥」


うん‥。

相変わらずライ君はお兄ちゃんのウルクさんをこき下ろすな。

まぁ、それでも二人がちゃんとお互いを認め合っているっていうのはわかっているけど‥。



「あれ〜〜、ウルキラ団長補佐?」

「ゲッ!!噂をすれば‥、なんでいるんだよ!?」

「ええ〜?兄貴に対してなんだよその反応。警備だよ!警備!あ、ナルさん出産おめでとうございます!これもし良かったら、さっき買ったんすけどポプリです!お一つどうぞ!」



ライ君がすかさず「なんでそんなもん警備中に持ってるんだ!」と怒鳴れば「つわりで苦しんでるから、いい匂いするのがあればいいかなって思って」とウルクさん。優しいが仕事中なんですが?私はチラッとキラさんを見上げると、貰ったポプリの小さな袋を見て、



「‥奥さんを労わるのは大事だ」

「思いっきり私情入ってません?」

「そうか?」



と、ちょっとキラさんシラを切った。




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