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黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人と家族。
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黙して語らない騎士、変わらず騎士。12


キラさんに家まで見送ってもらい、あれからすぐにキラさんは騎士団へ行った。


私はといえば、牛乳を盗られただけなんだけど‥ウルリカにミルクをあげつつ、少し冷静になってきた頭で悶々と考え込んでしまった。だって、結構小さな子供だったし、服もちょっと薄汚れてた。



「この辺ってそんなに治安が悪い所、なかったはずなんだけど‥」



そもそもキラさんが選んだこのエリア。

なんなら団長さんの家にも、ライ君の家にも近い。大変安心安全、しかも平和なエリアな筈なんだ。


まぁ、確かにスリにあったこともあるし、拐われかけた事もあるし、悪い人が輸出とか輸入とかしてて‥、あれ?結構物騒だったな?でも、貧しい家庭にはちゃんと支援が行き渡っているから、あんな風に盗みをする子供とか思いも寄らなくて、騎士団に働いていた身としてはちょっとショックではあった。


ミルクを美味しそうに飲んでいるウルリカを見て、子供を産んだから余計にそう感じたのかもしれないなぁ‥なんて思いつつ、縦抱きしてゲップを出そうと背中をトントンするが‥、出ない。キラさんだとサッと出るのに〜〜。


「くぅっ!!ここにも甘えていたツケが‥!!」


ウルリカの背中をトントンと、ラップのように叩いていると、



「お邪魔します!!」



玄関のチャイムと同時にニルギさんがうちへやってきた。


「最早お帰りなさい。今日は早かったですねぇ」

「ああ、まだお帰りではない。今はあくまでお邪魔しますだ。牛乳を盗られたらしいが元気そうで何よりだ!ああ、それとなウルキラと話していた『かめら』の試作品を持ってきたんだ!」

「え?!もう出来たんですか??!」


ウルリカを抱っこしつつ立ち上がると、見事なゲップが出た。

ニルギさんはそれを聞いて「立派なゲップだ!」と喜びつつ、ローブの胸ポケットから、5センチくらいの四角形の箱を取りだした。一番上の面に落ちないようにご丁寧にネックレスのチェーンが掛けられていて、どうやら首に掛けられるようだ。



「よーし、まずはゲップが出たウルリカとナルを撮ってみるか!」

「それが、カメラですか?」

「ああ、なかなか面白いだろう?このガラスの面が写真を撮る方で、右側の面にある小さな穴に指を押し込むと写真が撮れる」



そう言って、ニルギさんが写真を撮った瞬間、一番下の面から紙がヒラリと落ち、それをさっとニルギさんがキャッチして私に見せてくれた。


「わ!!ちゃんと撮れてる!!」

「ルピス殿と頑張って作った甲斐があったな!どれ、これはルピス殿に送ってもいいか?」

「え、あ、はい。でも、私とウルリカの写真でいいんですかね?」

「それが一番喜ぶだろ!あとウルキラのも送ってやろう」


嬉しそうにニコニコ話すニルギさんに、さっきまで色々感じていたモヤモヤが少し晴れる。‥本当、なんだかんだと気にしてくれて有り難いなぁ。私とウルリカが写っている写真を見ていると、



「ニルギ!?」

「あ、キラさん。お帰りなさい」

「ただいまナル。写真はまだ撮ってないか?」

「え、今しがた撮った所ですけど‥」



そう言って、私とウルリカの写真を見せるとキラさんがニルギさんをじとっと睨む。


「‥俺が一番にナルとウルリカを撮りたかった‥」


明らかに拗ねた顔でニルギさんにそう言うと、ニルギさんがブハッと盛大に吹いて「うちの息子は可愛いなぁ!!」とゲラゲラと笑いながら、四角いカメラですかさずキラさんを連写した‥。あの、そこの親子…?


「まぁ、いいじゃないか。俺とルピス殿の頑張りに免じて、一番最初の写真権くらいくれても」

「‥‥わかった」


全然納得してない顔のキラさんがニルギさんに渋々と頷いた。

キラさんもニルギさんには強く出られない辺りは確かに可愛いな。

ホクホクしながら拗ねたキラさんの顔写真を撮ったニルギさんは、それをローブのポケットに仕舞い込むと、私に作ったカメラを渡してくれた。


「お前さんは魔力がないから、ウルキラにカメラに補充してもらえば30枚くらいは写真が撮れる」

「え!すごいですね!!」

「一般人の魔力だと、精々10枚くらいだがな‥。なにせ魔力があるからなぁ」

「‥3倍も撮れるキラさんの魔力‥」


思わずしみじみとうちの夫はすごいなぁと思って、ふと思い出した。


「魔力‥、そうだキラさん、あの子供は‥?」


「それをニルギに報告しようと思ったら、事件の話は聞いてたくせに、まずはカメラが出来上がったから‥と我が家へ行ったと団長に言われて‥」

「ん?事件以外で何かあったのか??」


ニルギさんはワクワクした顔でキラさんを見つめ、



「まずはウルキラも入れてナルとウルリカの写真を撮りたいんだが‥」

「ニルギさん、お仕事!まずお仕事しましょうね!!」

「‥ちっ、ダメか。じゃあお菓子はあるか?」

「‥ニルギ、お菓子を出すからまずは話を聞いてくれ」



うん、ニルギさんは今日もマイペースだな。

そんなことを思いつつ、渡されたカメラを見つめて私もちょっとソワソワしてしまった。




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