黙して語らない騎士、変わらず騎士。11
ジェイ君とネリちゃんに呼ばれて大急ぎでこちらけ駆けつけた警備隊長さんは、逃げた子供のことを知ってものすごく驚いていた。
「今しがた、そこの店の店長にも話を聞いたんですよ‥。いつの間にか食品が消えたように無くなっているって‥」
「消えたように‥」
私とキラさんで思わず顔を見合わせる。
「やっぱり、転移の術‥ですかね?」
「だが、魔力の気配がしないのは気になる」
「魔力の気配?」
「転移の術はそれなりに魔力を使う。そうなれば、魔力の気配が残る」
ジェイ君とネリちゃんは、私の横でうんうんと頷き、警備隊長さんは「そうなんですよね〜」と首を傾げていた。そっか、皆そういうのわかるのすごいなぁ。今更ながら感心していると、ちょっと強面の警備隊長さんがあご髭を摩りつつ、考え込む。
「転移の術なんて、それこそ魔力を膨大に使うんだがなぁ」
「じゃあ、一体あの子はどうやって消えたり、現れたりしたんでしょう‥」
「そこなんですよね〜‥。魔力の気配が察知できれば、そもそも俺達ももっと早く気がつけたんですが、それがないとなると‥」
キラさんが考え込むように店をジッと見つめ、
「ひとまず近隣の住民や店などで、もう少し情報収集を頼めるだろうか。もし何か分かればすぐに騎士団に報告してくれ。こちらでもすぐ対応する」
「わかりました!」
ちょっとゴツイ顔をしたおじさんなんだけれど、人の良さが滲み出ている警備隊長さんはサッと敬礼してから、早速ジェイ君とネリちゃんを見ると、ニッと笑った。
「よし、じゃあすぐに近隣に聞き込みに行くぞ!」
「「は、はい!」」
「では、ウルキラ団長補佐、失礼します!ああ、そうだった奥さんご無事で何よりです。お子さん、可愛いらしいですねぇ。今度ゆっくり見せてください!では!」
手を振ると、颯爽とジェイ君とネリちゃんを連れて行ってしまったけれど‥。
「‥なんというか、格好いいですねぇ」
うん。本当に街の為に、皆の為に働くその精神たるや。
しみじみとそう呟いてからキラさんを見上げると、じっとキラさんが私を見つめているが、その表情がなんというか、あまり見ない顔をしている。‥いや、無表情に近いんだけどね?なんていうか、眉を寄せて拗ねてるような、怒ってるような?
「‥キラさん、どうかしました?」
「‥俺は、格好いいだろうか?」
「っへ?」
格好いいって、キラさんの為にある言葉だけど??
思わずぽかんと口を開けて、ハッとした。
あ、これもしかして拗ねてる?!
確かに警備隊長さん格好いいなぁとは思ったけど、そこは仕事やジェイ君達に対する態度とかそういった事を引っくるめての言葉だったんだけど‥、キラさんにとってはそうじゃなかったのか。
「キラさんはいつだって格好いいですけど‥」
「しみじみと呟いていたから‥、俺も髭を伸ばすべきかと考えた」
キラさんに髭?!!
思わず目を丸くして、まじまじと綺麗な顔をしたキラさんを見つめた。
サラサラと音がしそうな銀髪に、綺麗な水色の瞳、整った顔立ちに確かに髭もありかなぁ?とは思ったけど‥。いや、そうじゃないな?!髭はもっと後でもいい。なおかつそうじゃない。
格好いいと言った私の言葉に面白くないと思いつつ、警備隊長さんのように髭を伸ばそうかと考えたキラさんに胸の中がジワリとくすぐったさと、可愛らしさが広がって思わず悶えそうになる。
「ふふ、親になってもキラさんはキラさんですね」
「親になってもナルの一番でいたい」
「ううっ!!う、ウルリカ助けて‥。キラさんが甘いよう‥」
「大丈夫だ。お腹の中からきっとずっと聞いている」
「そういう問題じゃないと思うんですけどね?」
結婚したら、子供ができたら、こういうトキメキというのは段々と減っていくのかな?って思ってたのに‥、キラさんはどうやらそんなことはないようだ。ヒョイッと私の腕の中にいたウルリカをキラさんが抱っこして、キラさんはウルリカのふわふわした銀色の髪を撫でる。
「‥ウルリカにもずっと格好いいと言われたい」
「言ってくれますよ、ウルリカなら」
「そうだろうか」
私は力一杯頷いた。
だって私の夫だし。騎士だし。それにやっぱりキラさんだしね。
「ひとまず騎士団に戻って報告して‥、戻ったら昼食を作る」
「キラさん、すぐに私を甘やかさない!」
「そうか?」
ダメだこりゃ!
私も自立をせねば!
「‥牛乳は持っていかれちゃいましたけど、お昼ご飯こそは作ります!」
私が気合を入れて、キラさんにそう宣言すると、キラさんは優しく微笑んで「楽しみにしてる」と言ってくれた。‥やっぱりキラさんが一番格好いいと思う。‥恥ずかしくて、言えないけど。




