黙して語らない騎士、父になる!?12
シーヤに降った雪は観測史上初の大雪となった。
そんな訳でパニックになったシーヤは雪の除雪に奔走する騎士団、増える書類、終わらない炊き出し‥と、それはもうてんやわんやどころの騒ぎではなかった。人は自然には勝てないよね‥。
私は炊き出しの手伝いをしようとしたけれど、キラさんと団長さん、エリスさん、リルケさんに全力で止められた。
「ナルさん、騎士団の養成校から皆手伝いに来てくれる事になったからそれよりも書類手伝って!!」
と、団長さんに懇願されて手伝う事になったけど‥。
「んん?おかしいな〜。確か私は産休中では?」
ふと冷静になって執務室のいつも使っていた机でポツリと呟くと、まさに苦渋!!といった顔をしたエリスさんが眉を下げ、
「ううう、すみません。この大雪でまさかのあちこちからの情報整理に追われてまして‥。そこにつけ込んでラトル殿が書類を後回しにしたばっかりに‥」
いや、それむしろこっちがすみません‥かな?
その隣で「あ、これ書類一枚足りないけど、まぁいっか」とか言ってる団長さんをどうにかした方がいいかもしれない‥。フランさんもライ君も、セラ君も書類と食料調達、医薬品が届かなくて困っている人に対して調整に奔走してるってのに、まったく団長さんときたら‥。
と、ニルギさんが執務室へバターンと大きな音を立てて扉を開けた。
「大変だ!!お菓子が売ってない!!」
「あ〜〜、そうですよね。街道が雪に埋まってるから‥」
「ニルギ!だからといって転移して買いに行くなよ!!まだ薬の調達もある!」
「‥お菓子がなくてどうやって乗り切れるんだ‥」
「「いや、そこは乗り切ろう」」
思わず私と団長さんで声を合わせて突っ込んだ。
しかしニルギさんは心配そうに専用の棚を見て考え込んでいる。
「仕方ない。俺が自分で作るか!ついでに皆にも振る舞ってやろう」
「だ、ダメだーーーー!!!!一番ダメなやつだ!!作っておいたのあげますから!」
「まだあったのか?」
「‥執務室の皆さん用に取っておいたんですけど、この際背に腹はかえられません!皆さんの命を守る為に差し上げます」
団長さんが「英断だ」と深く頷く‥。
今度お菓子を改めて作って渡そう。そう思ってニルギさんにお菓子を渡すと、今度はウルクさんが執務室へ飛び込んできた。
「た、大変です!!雪国でしか見られない魔物が多数街道沿いに出てきたと近隣の住民から救援の要請が来ました!!あ、あと雪崩がその街道で起きて、もう1つ言うと近隣の家が雪でいまにも潰れそうで助けてくれと‥!」
「だ、だあぁあああ!!情報量!!!」
「落ち着いて団長さん!と、とりあえず救援と救助と‥」
思わず団長さんに言うと、いつの間にか私の横で立っているニルギさんがクッキーを食べつつ、
「この雪で魔物も混乱してるのかもしれないな」
「冷静にお菓子を食べながら言われても‥」
「そ、そうだ。でも冷静にならないと‥、ニルギ!急ぎ転移でウルキラと一緒に現場へ行って魔物の討伐をしてくれ!雪かきは騎士団の養成校の子達にお願いして、雪崩は‥」
団長さんがどうしたものかと考え込んでいると、執務室をノックしてルピスさんがひょっこりと顔を出した。王都の魔術師さんなのにどうしてここへ??
「ルピスさん!?」
「こんにちは、雪がすごいという情報を聞いてオルク団長から救援の要請を受けて参りました」
「「「て、天の助け!!!」」」
思わず団長さん、エリスさん、私で叫んだよ。
王都の騎士団だって忙しいのに、オルク団長さん本当にいい人過ぎる!!感激する傍らニルギさんがルピスさんにクッキーを渡し、
「では申し訳ないがルピス殿、早速現場へ向かおうか。魔物と雪崩とどっちを相手にしたい?」
「‥ウルキラはどちらに?」
「魔物だな」
「では雪崩の方を行きましょう。魔物は心配ないでしょう」
おお、お兄さん‥。
サラッとキラさんを信じきってのセリフに感動していると、ルピスさんは私を見て小さく微笑む。
「‥元気ですか?」
「元気過ぎて、なぜかここにいます」
「‥ナルさんらしいです。ただ無理はしないように」
「キラさんと同じ事言ってる‥」
そういうと、ルピスさんはちょっと嬉しそうに微笑んだ。
うん、キラさんのお兄さんも変わらず元気そうだし、キラさんを大事に思っていてなんだか私も嬉しい。
今日は寒い!!この話を書いている時は、「秋なのにあったかいな〜」なんて思ってたのに‥。あっという間に寒くなりましたね‥(inコタツ)




