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黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人の番外編。
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黙して語らない騎士、父になる!?10


「あれ!??ナルさん、もう復帰?!」


驚いた顔で出迎えてくれたのは、団長さんである。

食堂へマフィンを届けて、ついでに挨拶へ行こうと執務室までいったら、案の定てんやわんやの大騒ぎだ。ライ君とセラ君は私を見るなり嬉しそうに駆け寄ってくる。



「ナルさん!!お菓子美味しかったです!「僕とライも食べました!」

「あ、ライ君、セラ君お疲れ様。二人も食べられて良かった〜」



はーー、やっぱりうちの職場はいいなぁ。家でお菓子作りも楽しいけど、こういうやり取りが楽しい。


ニルギさんはさっさと自分専用の棚からお菓子を取り出して、お気に入りのお菓子屋のチョコクッキーとマシュマロをソファーに座って食べ出した‥。ちなみにここに来るまでに私の焼いたマフィンをすでに2個食べているのにだ。



「‥ニルギさん、あんまりお菓子食べ過ぎると体に良くないですよ?」

「そうだぞニルギ!昨日もウルキラに先にナルさんのクッキー食べたって怒られてたろ?今日は大丈夫だろうな?」



大丈夫、そこは昨日キラさんが一番に食べてました。

しかしそこ突っ込むのか‥。こんなにドタバタなのにこういうのんきな所、本当嫌いじゃない。むしろ好き。



と、執務室の扉をノックしながらフランさんが慌てて入ってくる。



「大変です!食堂の調理のおじさんが持病の腰痛に!って、あれ?ナルさん?」

「あ、どうも。おじさん腰痛って‥、炊き出し大丈夫何ですか?」

「他の調理の得意な騎士にも頼んでいるんですけど‥、なにせこの雪でみんなあちこち出払っていて‥」

「ですよねぇ‥。あの、切り物くらいならしますよ?」

「え??で、でも‥」

「ほら、座って切るだけならできますし」



ソファーに座ったままお菓子を食べるニルギさんが「俺も切ろうか?」と言うけれど、そこは全力で遠慮します。むしろ雪を溶かしてきて下さい。


フランさんと団長さんは顔を見合わせて眉を下げる。


「‥ナルさん、もうーーーーしわけないけど‥、じゃあ切るのだけでも手伝って貰える?ウルキラには僕が責任持って説明しますので‥」

「はい!っていうか、私からもキラさんに話しますよ?」

「うん、話しておいて。僕きっと燃やされちゃうから」

「‥うちの夫はそんなに酷くは‥ない、かも、しれない‥」

「ほらーー!!この雪で仕事が忙しくて怖いんだから!本当頼むね!」

「わかりました。じゃ、書類もお願いしますね」

「うっ!!持病の癪が!!!」


団長さんがわざとらしく胸を抑えるけど、さっき元気そうだったでしょうに。

呆れた顔をしてから、食堂へ降りようとすると噂のキラさんが執務室へ入ってきて、私を見ると目を丸くする。



「ナル!?」

「あ、キラさん。お菓子持ってきたんです。あとちょっとお手伝いを‥」

「手伝い?」

「調理のおじさんが腰痛になっちゃったそうです。切り物だけ座ってやらせて貰えるように今頼み込んだんです」



一応団長さんの身の安全の為に、そう伝えるとキラさんがジロッと団長さんを睨む。と、即座に団長さんが視線を逸らした。早い。とても持病の癪が痛むような人の動きとは思えない。



キラさんはもう一度私を心配そうに見て、


「検診で体は大丈夫だと?」

「‥‥そこは問題なしです。性別は今日もわからなかったけど」

「‥無茶はするなと言われなかったか?」

「キラさん、特殊能力開花させた?」


思わず聞いちゃったよ。

キラさんは私の言葉に何か感じ取ったらしく、ちょっと眉を寄せる。


「無茶は、本当にしないでくれ」

「大丈夫。そこはしませんよ。なにせ野菜を切るくらいです」

「‥わかった。団長、書類追加で今日中に提出を。ニルギ、ナルを頼む」


団長さんがすかさず「ええええ」って叫んでいるけど、書類はマジでやって下さい。ニルギさんはお菓子を食べつつ「はいはい」と立ち上がってこちらへやってくる。



「ウルキラはまたどこかへ行くのか?」

「もう1つ村の橋が雪で埋まった場所があるので、そこへ行く。フランから場所を聞いておいてくれ」



テキパキと仕事を割り振ったキラさんは私の手を握ると、



「じゃ、食堂までナルを送ってくる」



静かにそういうと、誰も彼もがどうぞどうぞとばかりに手を振るので私はちょっと恥ずかしい‥。執務室の扉を閉めて、ゆっくり階段を降りて行こうとすると、キラさんがぎゅっと私を抱きしめた。


「‥キラさん、仕事中です」

「ナルは休みだから問題ない」

「いや、そんな感じ?」

「そんな感じだ」


ちょっとひんやりする体のキラさんを見上げると、嬉しそうに水色の瞳が私を見ている。‥なんだか今日の晴天のようだなぁと思って、私もホッと力が抜けた。‥やっぱり近くにいると安心だな。ふふっと笑うと、キラさんが首を傾げる。



「ナル?どうかしたか?」

「‥キラさんが側にいると安心だな〜ってちょっと思って‥」



ヘラっと笑ってそう話すと、キラさんが団長さんのように胸を抑えて「‥帰りたい」って呟いたけど、いや、まだ仕事だからね?




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