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黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人の番外編。
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黙して語らない騎士、父になる!?9


翌朝、キラさんは宣言通り早くに出勤をしていった。

ちなみに雪は増えてはいないが凍っていたので、今日も大変そうだ。


朝食を食べつつ、窓の外を見ると外は真っ白で庭の雪を踏みしめたい衝動に駆られる。だって、誰も踏んでない新雪だよ?お皿を片付けて、そろっと庭を見に行くと、



「ナル。ウルキラに言いつけるぞ」

「わぁああああ!!」



後ろからニルギさんが腕を組みつつ、ニヤニヤ笑って突然声を掛けるので慌てて振り向いた。いつの間に!??っていうか、絶対玄関から入ってきてないでしょ??


「‥びっくりしてウルリカがうっかり生まれたらどうするんですか」

「そんな簡単に出てくるか」


ぶっと吹き出して、面白そうに笑うニルギさんが家の中から手招きして「早く入れ」というので、新雪は諦めた。ちょっとだけ踏みしめたかった‥。ウルリカ生まれたら一緒に踏みしめようね!



「昨日のクッキー、えらい勢いで無くなったぞ」

「え?そうだったんですか?」

「なにせ皆、普段とは違う力仕事だったからな。騎士団の食堂は家に戻れない観光客に今日は炊き出しをするという話だ」



そっか、観光客‥。

他にも家がない人もいるから、その人達の救済措置としてあちこち騎士団で奔走しているらしい。‥そんな話を聞いていると、騎士団に行きたくなるんだけどなぁ。


「‥あの、今日の検診が終わったらちょっとだけ騎士団に連れていってもらうのは‥」


「絶対言うと思った」

「だって!!やっぱり心配だし!あと団長さんの書類の進み具合は?」

「雪のように降り積もっているな」

「ああああああああああ〜〜〜〜〜!!!」


頭をかかえると、ニルギさんが面白そうに笑う。

いや、笑い事じゃないんですよ?私はもう心配で堪らないんです!



「じゃあ、検診の後に少しだけ騎士団に連れていってやる」

「いいんですか!?」

「‥ウルキラがすでにカリカリしている」

「夫がすみません」

「いや、それを言うなら息子が迷惑を掛けるな」

「そうでした。あ、じゃあ、マフィンのデコレーション早速やっちゃいますか?」

「もちろんいいぞ!!しっかりやってやろう!」



ちょっと腕まくりしたニルギさんがニコニコ笑って、私が用意しておいたクリームやアザラン、アイシングなんかも使って手早くデコレーションしていく。料理は壊滅的なのに飾りつけは得意とは‥。神様の配分とは面白いものだ。


飾りつけが出来た物から箱に詰めて、また大きなカバンに仕舞うとニルギさんはやり切った顔で満足気だ。



「よし!検診に行ったらマフィンだ!」

「ニルギさん、一応言っておきますけど、一個ですよ?」

「なんだ一個か」

「やっぱり軽く三個は食べる勢いだった‥」

「いや、5個は軽いぞ」

「そうじゃない、そうじゃない」



執務室のニルギさん専用の棚に沢山お菓子が入っているのに、まだ食べようというから驚きである。こんなに甘いのを食べるのにどうしてこんなに細い体を維持できるのだろう。魔術?魔術なのか?そんなことを思いつつ、病院へ検診に転移で行く。



病院のグレーヘアの落ち着いたマダムなお医者さんに「問題なし!無茶しないようにね」と、さり気なく釘を刺されたような気がしたけれど、きっと気のせいだと思いたい。


「お、もう終わったか?ところでどっちだった?」

「さり気なく聞かないで下さい。ニルギさんも男女のどちらに賭けているか知っているんですよ。あとまた今日もわかりませんでした」

「ラトルと似た感じだな〜」

「そうですね〜。さ、じゃ騎士団へ行きましょう!!」

「ナルは本当に仕事が好きだな」

「‥仕事はまぁ好きですけど、騎士団のみんなが好きなんですよ」


ちょっと照れくさいので、最後は語尾が小さくなっていく。


すると私の言葉を聞いたニルギさんは、ちょっと目を丸くしたかと思うと、嬉しそうに微笑み、病院から一緒に外へ出る。外は今日は雪が止んで、青空が見えている。これで雪がどんどん溶けるといいな。



「これならウルキラも家に帰れそうだな」

「そうですね。そしたらお菓子は‥「お菓子は作ろう。楽しいからな」

「食い気味で言いましたね。じゃ、今度は何にします?」

「ラトルが塩っ気のある菓子がいいそうだ」

「ああ、そうでした!じゃあ、甘いのとしょっぱいの作りますか」



そんなことを言いつつ、またも騎士団に転移すると‥、


「あっち補給足りてないぞ!」「こっちに馬を貸してくれ!」「毛布、まだあるか?」


と、騎士さん達があちこち駆けずり回っている。

こ、これは相当大変だな??ニルギさんを思わず見上げると、ニンマリ笑って頷く。



「言っておくが無理するなよ」

「‥そんな楽しそうに言われても」

「まぁ、まずはマフィンを食堂に届けよう。騎士達も喜ぶぞ」



確かに。

これだけ忙しそうなんだ、甘いのでも食べて少しでもリラックスしてもらおう。ニルギさんの隣を歩いて1日ぶりの騎士団に懐かしい気持ちで入っていった。




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