黙して語らない騎士の口を動かすお仕事です4
夕食を食べ終えると、手を繋いでまた部屋へ戻る。
温かいご飯を食べて、体が大分楽になる。
部屋に入り、ベッドに腰掛けてホッとしていると、トントンとドアをノックする音が聞こえる。キラさんは、すっと立ち上がり、ドアを開けると、女の子が袋を持って立っていた。
なんだろう・・・?キラさんのファンか??美形だし。
「すまんな」
そう言って、お金を渡すと袋を受け取って、ドアを閉める。
そして、私の方へやって来て、女の子が持っていた袋を渡す。
「・・えっと、これ、何ですか?」
「下着と、洗面道具だ」
「え!?用意してくれたんですか?」
全く考えていなかった・・というか、思いつかなかった・・。
そうだった・・・お財布と、携帯くらいしかリュックには入ってなかった・・。
「服は・・・、すまないが都市についたら用意する」
「いえいえいえ、じゅ、十分ですよ!ありがとうございます!!」
言葉足りないなぁとか、心で文句言って逆にごめん!!めっちゃ気遣ってくれるじゃん!・・しかも、迷い込んできた上に、お世話になりっぱなしだし・・。反省しろ、私。
「疲れたろうから、先に風呂に入れ」
「はい、入ります。ありがとうございます!」
反省した私の行動は早い。
サクッと風呂に入ってこよ。
お風呂はお湯を自分で張って、桶で浴びる・・というものだった。
安心して、私日本人・・このスタイルは慣れっこさ。
髪は石鹸らしき物がおいてあったので、それで軽く洗って流す。次に、また町へ行けるか・・お風呂に入れるかはわからないし。しっかり洗える内に、洗っておこう。
バスタオルはなくて、ハンドタオルくらいの大きさの物しかなかったが、よく絞って拭いた。
髪を持っていた髪ゴムで結んで、ゴミが落ちてないか確認してから、浴室を出る。次に使う人の事を考えておくの・・大事だし。袋に入っていた下着は、私の世界と変わらない形状だった。ハラショー・・神に感謝だぜ。
歯磨きもついでにしてから、お風呂を出る。
「・・・お風呂、お先です。ありがとうございます」
そっとドアから出てくると、キラさんは剣の手入れをしていた。
こちらをチラッと見て、剣にまた目を戻すと
「ああ」
と、一言返してくれた。うん、返してくれたしいいや。
私はベッドに座って、リュックに入れておいたブラシで髪を一旦解いて、梳かす。石鹸だけで洗った割に、いつも使うシャンプーと同じ櫛通りでちょっとホッとした。
不意に視線を感じて、キラさんを衝立越しに見る。
淡い水色の瞳と目が合って、思わずドキっとする。
「・・・ど、どうかしましたか?」
「・・・髪」
「・・髪?」
「長いな」
「あ、そうですね・・。そういえば、こっちの人はあまり長くないんですね」
「あまり伸ばす習慣がない」
「そうなんですか・・。キラさんも伸ばしたら、綺麗だと思うけど」
「・・・・長い髪が好きなのか?」
「好きというか・・、私の周りには銀髪の人はいなかったので・・・綺麗だなって思って・・」
「・・・・そうか」
・・・そして、静寂に包まれる部屋。
な、何ですかね・・この間は・・。
よし、会話だ・・会話しよう。
「キラさんのいる都市って、なんて言うんですか?」
「シーヤという名だ。港があるので、交易が盛んだ」
「簡潔にありがとうございます・・」
「仕事は色々あるが、ナルはまず学校へ行った方がいいと思う」
「学校って、幾つの子が行くんですか?」
「10歳から16歳までだ」
ああ・・、はい、私、幼く見えるんですね・・・。
「私、こう見えて20歳です・・」
「・・・・・・・・・・・・?」
ちょっとわからない・・みたいな顔をしたキラさんが、思わず可愛いと思ってしまった。
「えーと、20歳で・・本当なら働きに行く予定だったんです」
そういうと、今度こそ驚いた顔をした。
衝立越しに。