黙して語らない騎士、父になる!?5
素敵なプレゼントを貰って感動冷めやらない私。
明日は皆にクッキーでも焼いて持っていこう!そう決意して、キラさんにクッキーのレシピを教えて貰ってから、二人でベッドに入る。
「‥今晩、なんだか異様に寒いですよね」
「ああ。もしかしたら雪が降るらしい」
「雪!?ここに??」
「まぁ、シーヤに降るなんて滅多にないがな」
「そうですよね‥。今日なんてすごくいい天気だったし」
そんな話をして、以前行った雪のすごい場所を思い出した。
そうそう、バレンタインデーの時だったけなぁ〜、‥なんて思いつつ目を瞑ると、あっという間に眠ってしまった。
翌朝。
布団に丸まって寝ている私をキラさんが静かにゆする。
優しいなぁ〜。そしていつも寝こけててごめん。そっと目を開けると、キラさんが小さく笑って私の頭を撫でる。
「‥ナル、呼び出しがあった」
「ん!??呼び出し??」
事件でも起きたの?!
一気に頭が覚醒して、慌てて体を起こ‥せないんだよな、これが。
よいこらしょっと腕を押して体を起こすと、キラさんが腕を引っ張って起き上がるのを手伝ってくれた。その時、不意に窓の外を見えた。
なんか白い‥?
「え!??ゆ、雪!??」
「ああ、雪だ。しかもかなり降っている」
「えええええ?!」
サッとキラさんが私の肩に分厚いカーディガンを羽織らせてくれて、一緒に窓の方へ歩いて行くと、外は一面銀世界である。マジか!雪のすごい地方ならわかるけど、シーヤでこんなに降ったの初めて見た!!
「呼び出しって、もしかしてこの雪で?」
「ああ、街がパニックらしい。馬は問題ないが、馬車が滑りまくっている」
「大変!キラさん、すぐに騎士団に行かないと!」
思わずのんびり話をしてたけど、一大事じゃないか!
私の世界でも都会であればあるほど、雪には脆弱だったんだ。シーヤなんて滅多に雪も降らないから、もっと脆弱かも。キラさんは私の言葉に頷いて、
「そんな訳で今日は必ず家にいてくれ」
「そりゃもちろん‥」
「間違っても雪かきはしないでくれ」
「‥‥バレた」
「あとでニルギが様子を見に来る」
「今日も心配性がすごい‥」
私がキラさんを見上げると、キラさんは私の体を優しく抱きしめるとそっと手を離す。
「‥‥できればナルといたいが、恐らくこの雪だ。いつ帰れるかわからない」
確かにこの雪じゃそうだろうな。
ヘラっと笑ってキラさんを見上げる。
「お菓子をいっぱい作っておきます。ニルギさんに届けてもらうんで無理しないで下さいね」
なにせ昨日レシピ教えて貰ったしね。
キラさんは私の言葉に嬉しそうに微笑むと、頬にキスをして、手をお腹に当てる。
「ウルリカ、まだ待っててくれ」
「大丈夫ですよ、キラさん‥。ウルリカはまだ生まれません」
「‥そうか」
じっと私のお腹を見つめるキラさん‥。
これ絶対医療魔術の何かを使って、お腹の様子を見ていそうだな‥。なにせキラさんだし。キラさんは私にもう一度外へ行かないように!と言い含めてから出勤していった。
ウルリカ、君のお父さんは今日も心配性だぞ。
静かになった部屋の窓からもう一度外を見ると、芝生の庭には真っ白な雪が降り積もっている。‥確かにちょっと外へ出て、あの真っ白な雪を踏みしめたい。‥キラさんに絶対ダメって止められたから、今回は我慢するけど。
「さて‥、じゃあ早く起きたし、朝ご飯を作って食べたらクッキーを作ろうかな」
ポツリと言うと、お腹の中からウルリカが手足を伸ばしてググッと返事をするかのように押してくる。
「お、今日も元気だね。何食べたい?あ、そうだ甘いパンケーキ?」
お腹に話しかけてみると、ググッと押されたのでパンケーキにしよう。
明日は病院だから甘さは控えにしないとだけど。
「‥っていうか、この天気で明日病院行けるかな?」
窓の外には、まだ雪が次から次へと降っている。
‥無理かもしれないから、甘めにしても問題ないかな?キッチンへ行って、早速砂糖を手に取る私であった。




