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黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人の番外編。
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黙して語らない騎士、父になる!?1


ウルクさんに花束を渡され、男女どちらが生まれるかを騎士団で賭けているという話を聞いた。そういえば団長さんの時も賭けてたな。ライ君とセラ君に賭けに負けて財布がものすごーーく軽くなったので、今回は負けられない戦いらしい。そうかそうか、ぜひ頑張ってくれ(?)



エリスさんとキラさん、フランさんに囲まれるように書類仕事をしている団長さんを大変温かい目で私とライ君、セラ君で見守っていたら、あっという間にお昼だ。



「は〜〜、もうお昼かぁ‥」

「や、やっとお昼だ‥。嗚呼!書類じゃなくてティートを見ていたい!」

「‥団長さんがすっかりお父さんですね」

「そりゃ、お父さんだもん。抱っこもミルクもオムツ替えも上手になったよ」



ニコニコと話す団長さんになんだか和む。

最初に会った時は、異世界の人を保護する名目で結婚してた人が今やルーナさんとティート君にデレデレとなっているなんて人生とは不思議なものだ。


キラさんが私を見て、


「ナル、お昼はここで食べるか」

「あ、ええと3時のお茶はここでするんで、せっかくだし訓練場まで行こうかなって」


キラさんはちょっと心配そうに見つめるけど、キラさん‥、妊婦は健康な場合はなるべく動いておいた方がいいんだよ。いつもキラさんが私を心配するあまり歩かせまいとするけれど、病院からは「育児は体力勝負!!鍛えておけ!!」って言われているんだ。頼むから歩かせてくれ。



「じゃあ、一緒に行こう」

「はい、お願いします」



キラさんがすかさず安全第一とばかりに私の手を繋ぐ。普段は恥ずかしいけれど、今は妊婦の私を心配するという名目があるので、私もあんまり恥ずかしくない。



団長さんとエリスさんに見送られて、一緒に食堂まで行くと、お昼の入ったバスケットを手渡されつつ食堂のおばちゃんやおじちゃんに「今日までだっけ?体に気をつけてね!」と言ってくれて、お菓子までプレゼントしてもらった。‥優しいなぁ。



訓練場の石で出来た門を潜って、キラさんと大きな木の下まで歩いていくと、ちょっとだけ風が冷たい。


「う〜〜、やっぱり風が冷たくなってきましたね」

「寒いなら戻るか?」

「いえ、ここでゆっくり食べられるのはもう今日で最後だし」

「最後‥」

「あ、といっても半年後には復帰するからお休みか」


キラさんが寂しそうに言うから慌てて訂正した。

一応、半年したら職場復帰しようと思っているんだけど、キラさんは心配らしく、ひとまず子育ての様子によって半年か、一年後復帰かで決めようと話をした。っていうか、それを柔軟に決めていいよ〜て言ってくれた騎士団有り難い。



ただ団長さんの初日の書類を見ると、一年後に復帰した時の仕事量が恐怖しかない‥。やっぱり半年後かなぁ〜なんて思っていると、キラさんがバスケットの中からサンドイッチを出して渡してくれた。



「あ、お魚のサンドイッチだ!」

「‥頼んでおいた。ナルはこっちのが食べやすいし」

「き、キラさん!!ありがとう〜〜〜!!」



もともとお肉とかガッツリしたものは得意じゃないので、お魚の方が好きな私の為にお昼のメニューをちょっとだけ変更してくれたらしい。キラさんのはガッツリ肉が入っている。



「‥キラさん、野菜は?」

「‥サンドイッチに入っている」

「それはあくまで添え物です。ほら、ピクルスありますよ」

「ナルが食べさせてくれれば」

「はい、ピックに刺してあげましたよ」



指であげたらキラさん、私の指ごと食べようとするではないか。

ちょっと赤い顔でピックに刺した野菜を渡すと、キラさんは私の手を掴んでピックに刺さった人参を食べる。う、キラさんのアップは未だにちょっと心臓に悪い。



銀色のサラサラと流れそうな前髪の間から、水色の瞳が可笑しそうにこちらを見ているのに気付いて、ジトッと睨む。


「‥キラさん、わざとやってません?」

「‥気のせいだ」


キラさんはクスクスと小さく笑うと、私の横にピタッとくっついて座る。



「寒くないか?」

「‥ちょっと暑いくらいです」

「そうか」



言葉は少ないのに私を好きだと、心配だと、いつだって水色の瞳が訴える。ああもう、結婚もして、子供もあと少しで生まれるというのに、未だにドキドキしてしまう。しかし私だって少しは強くなったのだ。時には仕返しだってしてやる!



キラさんの肩にちょっと甘えるように頭を寄りかからせると、キラさんがちょっと目を丸くして私を見たと思ったら、嬉しそうに顔を綻ばせる。



「‥一緒に、今度はお昼をウルリカとここで食べよう」

「そうですね。今度は3人ってなんか不思議ですね」



私がそういうと、キラさんは私の額に自分の額を当てる。


「ここで待っていてくれるナルが大好きだった」

「え、あ、はい‥」

「これからもずっと好きだ」

「き、キラさん〜〜〜!!?」


そ、そういう甘い言葉は大変照れるんですが?!

視線だけ上げてキラさんを見ると、すかさずキスされた。ぎゃあ!慌ててキラさんからちょっとだけ腰を上げて離れてから、横の木を見ながら、



「‥こっちへ歩いてくるキラさんも好きでしたよ。今もですけど」



呟くように言ったのに、キラさんにすかさず抱きしめられて、結局寒いどころか暑いくらいのお昼タイムを終えたのだった‥。




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