黙して語らない騎士。5
イヤリングはせっかくだし・・・と、つけてみる。
あんまりあっちの世界でもつけた事がないので、自信がない・・。
上手くつけられたかな・・、キラさんを見上げてみると、やっぱり無表情だけど、ちょっとだけ照れているように見える。お、おう・・こっちまで照れるな。
「ど、どうですか?」
キラさんは、静かに微笑む。
「可愛い」
そう言ってくれて、嬉しい反面、恥ずかしいやら照れくさいやらで、私の心臓は大暴れしていた。
そっとキラさんに手を繋がれてまた歩き始めるけど、手汗・・大丈夫かなって心配になった。見上げると嬉しそうな顔をしたキラさんが見えるから、きっと大丈夫だ・・そう思う事にした。
海を眺めて、手を繋いで歩く時間は穏やかで・・、すれ違う人達ものんびりと海を見ていた。
わかる・・気持ちいい・・。キラさんも同じように穏やかだと感じてくれているといいな・・。つい最近まで、遠征に行って忙しかったろうし。
「気持ちいいですね・・」
「ああ」
キラさんのような綺麗な水色の空も綺麗で、
なんというかとても幸せだった。
「また来ましょうね」
「ああ」
言葉は少ないけれど、キラさんの笑顔が見られれば、もうそれだけで十分だった。
海の寄せては引く音のリズムを聞いているだけで、ホッとする。
いいなぁ・・こういう時間。
「・・ナル」
キラさんに呼ばれて、見上げると空と同じような水色の瞳がこちらをじっと見つめている。ドキリと胸が鳴って、私はキラさんを見上げる。
ああ、瞳、綺麗だな・・、そう思っていると、顔が近づいてきて、私は思わず目を瞑る。
「ウルキラ〜〜〜〜!!!ナルさ〜〜〜〜ん!!!やっほ〜!もうそろそろ帰る所じゃない〜?馬車乗って行きなよ〜」
・・わぁ、なんといういいタイミング・・・。
キラさんと一緒に、声のした方を見ると、
砂浜の向こうに留まっている馬車を運転するフランさんが、申し訳なさそうにこちらを見ている。大丈夫フランさんは何一つ悪くない。そして、団長さんは・・馬車から、楽しそう〜〜に手を振っている。・・・まったくあの人は・・。
「キラさん、馬車乗って行きましょう」
「・・ナル」
「で、あのプレゼント、完食させましょう」
キラさんを見て、ニンマリと笑って見せると、キラさんも気付いたのか小さく笑う。私達は、ニヤニヤ笑う団長さんに気付かれないように、うなずいて馬車へ向かう。
いいですか、いい所を邪魔をしたら馬に蹴られるんです。それを体感して頂きましょう。
帰ってから、丁寧にお茶を淹れ、私達は顔よりでっかいチョコのたっっぷり入ったクッキーを渡した。たまたま遊びに来ていたニルギさんと、お菓子を渡したフランさんが大爆笑し、私達は大変満足した。
「ほんの気持ちです、絶対食べてくださいね」
と、いう一言もプレゼントすると、団長さんは
「なんでーーーーー???!!!」
と、叫んだ。
大変良い1日になったのはいうまでもない。
その後、しばらく団長さんが静かになったので、ちゃんとお酒を改めてプレゼントしたら喜んでくれた。「ちょっとからかっただけなのに、でも今度はいい子にする」とか言ってた。・・・本当にいい子にしてくださいね・・。
隣でニルギさんが呆れたように笑っていた。
それから何日か経って、王都から騎士団の団長補佐が来る事が決まった。
団長さんは大層複雑な顔をしていた。
・・大変そうだな。
私とフランさんはそのために、部屋を準備したり、片付けに回ったりと、大忙しだった。
何度か一緒にキラさんとご飯が食べられない事もあって、キラさんの機嫌は最高潮によくなかったらしい・・。
そんな時に、シーヤ騎士団に件の団長補佐が嵐のように現れたのだった・・・。




