黙して語らない騎士、ちょっと父気分。6
昨日はまさかの団長さんとルーナさん、ティート君に会えて、ホクホクした気分で執務室までキラさんと一緒に出勤すると、エリスさんがちょっと難しい顔で書類を見つめている。
「お、おはようございま〜す?」
「あ、おはようございます。えーとウルキラ団長補佐、ちょっといいですか?」
キラさんは頷くと、エリスさんの見ていた書類を渡されて読み始める。なんかあったのかな?そう思いつつ、私は自分のデスクの方へ行くとフランさんが挨拶してくれたので、昨日団長さんに会った事と、フランさんの商会が始めたお店に行ったことを話すと嬉しそうに微笑んでいた。
「いいお店でしたよ〜。団長さんも料理美味しいって話してました」
「そうですか〜。それは良かったです!香辛料も結構凝っているんですよ〜」
確かに。
料理がいい香りしてたな‥。
「ソマニは、結構変わった植物が自生している地域なんです」
「あ、そういえば前に蔦の植物が暴れてたけど、あれもそもそもソマニの植物でしたよね‥」
「あれはちょっとガダの魔術も組み込まれてたけど、まぁ、そうですね〜。でもあれも乾燥させるといい香りがして、お肉の臭みを取ってくれて便利なんですよ〜」
そうだったんだ!
キラさんとニルギさんで燃やし尽くしちゃったって言ってたけど、残しておけば良かったかな?
私とフランさんでそんな植物の話をしていると、バタバタと執務室へウルクさんが入ってくる。
「魔物違うタイプのが2種現れました!!」
「え?!また!??」
私が思わず驚いて声をあげると、エリスさんはフランさんを見る。
「フランさん、今回一緒に付いてきて下さい」
「え?僕ですか???」
ライ君もセラ君も驚いて、フランさんを見る。
「ふ、フランさんは非戦闘員ですよ!?」
「もちろん戦いは参加させないよ。ちょっと気になる植物があってね」
私達にとって大事なフランさんが現場に行くのに不安になっていると、キラさんが私の頭をポンポンと叩く。
「フランは騎士の訓練もしていたし、ナルも現場を見た事あるだろう。ちゃんと守るから大丈夫だ」
「え?騎士の訓練してたんですか?!」
フランさんの引き出し、多いな。
現場かぁ‥。キャンプなのに魔物の討伐に連れていかれて、大蜘蛛を倒すのを見てヒヤヒヤしたっけ。あれをフランさんも体験させるの?大丈夫かな??
フランさんはニコッと微笑んで、
「竜にも乗れるんでしょうか?ちょっと楽しみなので行ってきますね!」
「ふ、フランさ〜〜〜ん!気をつけて下さいね!!」
「絶対帰ってきて下さいね!」
「エリス団長補佐をいざとなったら盾にして下さいね!」
ライ君、セラ君、私でフランさんに口々に話すと、キラさんが私の肩をトントンと叩く。
「‥俺は?」
「え?」
もしや心配して欲しいの??
いつもキラさんはけろっとした顔で帰ってくるので、そんな風に思って欲しいなんて思ってもみなかった。じっと水色の瞳に見られてしまうと、照れ臭いやら、それもそうだな‥と、納得もしてしまう。
「‥キラさん、怪我しないように帰って来て下さいね。あ、あと、ウルリカも待ってますから!」
そう話すと、ぽこっとお腹を蹴られた。
おお、ウルリカも返事してくれた。
お腹を見てから、キラさんを見上げると、キラさんは私を見て嬉しそうに微笑む。
「‥すぐ帰る」
「はい、行ってらっしゃい」
そんな私をエリスさんはジトーーっと見て「いいな!!そういうのいいな!!」って言いつつフランさんに背中を押されて、執務室から出て行った‥。えーと、なんかすみません?
「キラさん、エリスさんルーシェさんに良いところを見せたいようで?」
「‥そうか。出来れば手伝う」
「なるべく、こうドキーッとさせられる方向でお願いします!」
「‥‥善処する」
うーん、これはキラさんには難しいお願いかも?
ちょっと眉間にしわを寄せたキラさんは、難しい顔で執務室へエリスさんを追いかけるように出て行ったけど、大丈夫かな?
ライ君とセラ君を見ると「エリス団長さんにお菓子でも用意しておきましょ」というので、せめて帰って来た時に心穏やかであれるようお茶菓子を用意しておいたら、やって来たニルギさんが速攻で食べようとするので慌てて止めた。自分のお菓子は自分の棚に入ってるでしょうに!




