黙して語らない騎士、ちょっと父気分。2
久々に会ったルーシェさんは変わってなくて、いつものようにビシビシ‥いや、私がいるといつも以上にビシビシかもしれない。
大分離れた距離から、アビーがグッと首を伸ばしてくれて、ようやく頭を撫でるのを許してくれたけど‥。妊婦の私をここまで心配してくれるのも有難いといえば有難い。
バリラから来た竜騎士の騎士さん達に、エリスさんとキラさんで騎士団の中を一通り案内して、今日はひとまず休んでもらう。
「今日は移動してきてばかりなので、しっかり休んで下さいね」
「ああ、ありがとう。総員、休憩に入れ。竜の世話は話をした通り交代でするように」
ルーシェさんがビシッと指示を出すと、大きな体の竜騎士さん達は敬礼をしてから、それぞれの持ち場へ移っていった。はぁ〜〜、相変わらずビシビシしてるな。
「ルーシェさんは、執務室にお茶を用意してあるので、お疲れでしょうが話し合いを‥」
私がルーシェさんを見ると、じっと私を見て、
「あの執務室の階段を上り下りしてるのか?」
「あ、はい」
「飛び降りてたりしてないだろうな?」
「‥流石に、今はしてません」
なぜ飛び降りてた事を知っているんだろう。
今はキラさんの守護魔法で間違ってもそんな事出来ない体になってるけど。思わず目を逸らすと、ルーシェさんが怪訝な目で私を見る。
「‥全く、貴女は危なっかしいな。ウルキラ殿が心配する気持ちも分かる」
「へ?キラさん?」
「ずっと案内しつつ、ナルさんを見ていたぞ」
「え、そうなんですか?」
気が付いたら私の横に立っているキラさんを見上げると、静かに頷く。
「アビーも心配そうに見ていた」
「あ、アビーにまで!!」
竜にまで心配される私って!!
と、ルーシェさんがプッと吹き出す。
「ウルキラ殿は本当に竜のようだな。アビーもそんな感じだから、私は人間との結婚は無理だな」
可笑しそうに笑うルーシェさんに、後ろでその会話を聞いていたエリスさんがショック!!!といった顔で青ざめている。糸目なのに表情豊かだな‥。
「え、でもルーシェさん、いい人だな〜って思うくらいはいないんですか?」
なんだか可哀想なので、あえて話題を振ってみる。
と、後ろで顔を上げて、耳をダンボにしているエリスさんが目の端で見えた。わかりやすい。
「‥そうだな結婚してもこうして働いていたいしな‥。そういうのを許してくれる相手がいれば、だな‥」
エリスさん、瞬間自分を指差したけど、後ろにいるから全然アピール出来てませんってば!私は頭痛がしそうだ‥。なんて思っていると、ふとお腹に違和感を感じて、お腹に手を当てる。
「どうかしたか?」
即座にキラさんが私に聞くけれど‥。
「え、えーと、うん、大丈夫、です?」
「‥ナルさん、大丈夫か分からないぞ」
ルーシェさんにまで複雑な顔で言われてしまった。
私はお腹をさすりつつ、
「ん、ちょっとお腹の調子が?」
「ウルキラ殿、医務室はどちらに?」
「こちらだ、すぐに行こう」
「ちょーーーーっっと待って!!大丈夫!!本当に大丈夫ですって!!!」
心配性が二人に増えた!!!
エリスさんは後ろで吹き出しているけど、そんな場合じゃないから!私は慌てて両腕を上げて元気をアピールしたけれど、あえなく医務室へ連行されてしまった‥。
‥ウルリカ、お母さんの周りの人は皆心配性すぎると思わない?
ちなみに医務室から「問題ねぇ!」と言われ執務室に帰って来た私がその話をニルギさんにすると、キラさんを見上げて真剣な顔で、
「やはり今から医療魔術を極めるべきだな‥」
「常時胎児が無事か見られる魔術が確かあったはずだ」
「やめて〜〜〜、騎士から医者になるつもりですか!!」
必死で止めると、隣に座っていたルーシェさんは頷いて、
「確かに医療魔術が使えると、戦いにも便利だな」
「こ、ここにもキラさんと同じようなことを言う人が!!!」
どんだけじゃーい!と思ったけど、ルーシェさんってキラさんに似ているんだな。なるほど、キラさんに似ているルーシェさんとエリスさんってくっ付く可能性あるのかな?うーん、分からん!!




