黙して語らない騎士、ちょっと父気分。1
今日はいよいよバリラから竜騎士団がやってくる日だ。
朝からエリスさんは楽しみなのかウキウキしていて、なんていうか感情を隠さない人なんだな‥。
訓練場まで竜に乗って飛んでくるというので、ウキウキしたエリスさんと、フランさんとライ君、セラ君、私とキラさんで並んで空を見ていると、騎士さんの一人が空を指差す。
「来たぞ!!」
「お〜、本当だ!やっぱ早いな!」「もうすぐだな」
皆の声に私は眉間にしわを寄せて空を見上げるけど、何も見えない‥。
キラさんを見ると、もう見えているらしい。
指差してくれたけど、なんか豆?アリサイズじゃない?ってくらいの小さいものが見えるだけだった。騎士さんって視力もいいんだね‥。
やがて私の目から見ても、竜が飛んでいる姿が見える。
先頭をアビーが飛んでいるのが見えて、エリスさんじゃないけどウキウキしてきた!だって竜、可愛いし!
姿が見えたと思ったら、もう早かった!
あっという間に竜は地面に次々に降り立って、ルーシェさんがアビーから降りたつ。
「バリラから参りました。ルーシェ・ティトワです。今回もお世話になります」
「今回も長旅ご苦労様です。まず一旦休憩を‥」
ニコニコのエリスさんにちょっとルーシェさんは戸惑いがちに返事をしている姿を見ていると、私の頭に何かが乗っかった。
「ん?」
顔を上げると、アビーがそっと私の頭の上に自分の頭を乗っけている。
「アビー!久しぶり!元気だった?」
「キャウ〜〜〜!!」
アビーが私の声に返事をして、顔を近付けた瞬間、
「アビー!!ナルさん!!離れなさい!!」
ルーシェさんの声に私とアビーが驚いて、ビクッと体が跳ねた。
そろっとルーシェさんの方を見ると、怒り100パーセント!で出来たルーシェさんが私の方へズンズン進みながら、
「まったく!!あなたは妊娠しているのでしょう!!こんな危険な現場でなぜ働いているんですか!!アビー!ナルさんが好きだからって近付き過ぎたらダメってあれだけ言っておいたでしょう!!!」
‥えーと、要するに心配してくれているんですね。
私はヘラっと笑ってルーシェさんに手を振る。
「ルーシェさんお久しぶりです。お元気そうで何よりです」
「もう!!体は大丈夫なんですか?」
「はい、特につわりもないし、結構元気です」
「それなら良かった。いつもよりは疲れやすいと話を聞きましたから、無理はしないで下さいね。そこのエリス団長補佐に全部押し付けるのが一番です!!」
ビシッと勢いよく指差して話すルーシェさん‥。
そんなに心配してくれるとは思わなかったよ。横でキラさんが静かにウンウンと頷いて、エリスさんがすかさず「私はしっかりやってますよ〜」と話すと、ルーシェさんはふん!と鼻で笑った。
「‥今回の訓練、こちらは精鋭を連れて来ましたから、よろしくお願いしますね。エリス団長補佐」
「はい!!!こちらも腕によりをかけて訓練しますね!」
‥それ、どんな訓練?
思わずキラさんを見上げると、
「‥今回、先日魔物が同時に違う種類が出現した地域に、調査と訓練を兼ねて行ってくる」
「え、大丈夫なんですか?」
「竜もいるし、大丈夫だ」
キラさんがそう言うと、アビーが嬉しそうに鳴いて、また私の方へ顔を寄せると、エリスさんと話していたルーシェさんがこちらを見てないのに、
「アビー!待て!!」
と、言うのでアビーは一気に不満顔になった。
すごい、見てないのに見えてる‥。
「なんか頼もしいですね‥」
「そうだな」
キラさんと私は顔を見合わせて小さく笑うと、アビーはキラさんに撫でてもらおうと顔を擦り付ける。私もアビーを触りたいので、そっと手を伸ばすと‥、ルーシェさんがこちらを振り向いて慌てて手を後ろに隠すのだった‥。
うん、ルーシェさん変わってない。
しかし更に厳しくなったかも???




