黙して語らない騎士、ちょっと父気分。
団長さんとルーナさんのお子さんが無事に生まれた。
ティート君という素敵な名前で、団長さんと同じ金髪に、ルーナさんと同じ茶色の瞳、顔は‥どっちも造形が素晴らしいので、すでに素晴らしい。
「かっわいい〜〜〜!!!!」
「うふふ、ありがとう〜〜」
今日は出産してから2週間。
そんな早くにお邪魔して平気なの!??って心配だったんだけど、こっちの世界ではそれくらいで親しい人にお披露目も兼ねて赤ちゃんを見せるのが一般的らしい。
キラさんはお仕事なので、私とニルギさんで執務室一同のお祝いを持って、団長さんの家にお邪魔させて頂いた。
デレデレの団長さんとルーナさんにお祝いを渡して、もう一度大きな籠の中でスヤスヤと寝ているティート君を見る私にルーナさんはいつもと変わらないほんわかした微笑みを浮かべる。
「まぁ、半年は回復魔法をかけてもらうから、体は大丈夫なのよ〜」
「はぁあああ‥、異世界に来たって実感するセリフです」
「私もよ〜。こっちの世界は随分と色々してくれるわよね〜」
「そうだった!ルーナさんも異世界出身だった!」
「うふふ、私のいた世界は3ヶ月くらい回復魔法をかけて貰うんだけどね〜」
「そっちも変わらないような???」
私の世界に回復魔法なんてなかったから、きっと皆こっちに来たがるんじゃないか?なんて思っちゃった。
「そういえばナルさん、ウルキラはどう?」
「仕事はまぁなんとか?エリスさんとフォローしあってますよ」
「あのウルキラが!!!!」
‥ええ、無表情で黙して語らないキラさんがエリスさんとポツポツと話しつつも仕事をしている姿に、ニルギさんも同じ様に感動してましたよ。あ、今隣にいますけどね?
「ウルキラも父になるのか‥」
「ニルギさん、早い、早い。まだ生まれてないですからね?」
「ナル、守護魔法また増えてるな」
「え?!!また??あれキラさんにも負担じゃないんですか??」
団長さんが「相変わらずだな〜」なんて言いつつ、嬉しそうに笑っている。
何だか団長さんもルーナさんも父の顔、母の顔になっているような気がして、自分もこんな風に変わっていくのかな?と、不思議な気分だ。
「明日からバリラのルーシェさんが来るんだっけ?」
「はい、その為にエリスさんすごい張り切って準備してますよ」
「‥ルーシェさん来るしなぁ‥」
団長さんがポツリと呟く。
そういえばそうだった。ルーシェさんは王都のオルク団長さんが好きなようだけど、エリスさんはそんなルーシェさん好きな感じなんだよね。そりゃ張り切るよね〜。
「まぁ、エリス団長補佐は仕事とプライベートは分ける人だけど、一応気をつけてあげてね。特にルーシェさん」
「そっちか!!」
「大丈夫だ。俺もいる。ウルキラは‥分からん」
「ニルギさん!!そこはキラさん信じてあげて!」
思わず突っ込んだ私は悪くない。
でも、確かに女性の地位の低い国出身だから、必要異常に肩に力が入りがちだし、私も気を配っておかないとなぁ。
静かに決意を込めて、手を握りしめると団長さんがちょっと遠い目で私を見て、
「言っておくけど、ナルさんも無理は絶対禁物だからね」
「え?無理してませんよ?」
「昨日、ウルキラが荷物を持って移動しているナルを見つけて転移していった」
「あ!ちょ、ニルギさん!!」
そう、昨日荷物を持って歩いていたら、キラさんがどこからか駆けつけて私の持っていた荷物を持ってくれたんだけど‥。ニルギさんいつの間に見ていたんだ‥。じとっとニルギさんを見ると、素知らぬふりしてお菓子を口に放り込んで、美味しかったのかすぐに2個目を食べていた。
団長さんはそんな私達を見て、
「ニルギも気を配ってくれよ」
「そこは安心してくれ。守護魔術は完璧だ」
「そこじゃない!!ああもうこの二人は〜〜。フランにも言っておこう‥」
ブツブツと心配そうな団長さんの言葉に思わずニルギさんと顔を見合わせて笑ってしまう。お父さんになったけど、団長さんは変わらず団長さんだ。
と、籠の中で寝ていたティート君がぱちっと目を覚ます。
「あ、起きた」
「ティート〜〜〜!可愛いなぁ!ほらナルさんとニルギだぞ〜」
「‥ついで感!でも、可愛い。小さいなぁ〜」
小さくて、くてっとした柔らかいティート君をルーナさんも団長さんも、「ようやく慣れた」と言いつつ嬉しそうに抱っこしているのを見ると、キラさんが実際に自分の子が生まれたらどんな反応をするのか‥ちょっと考えて楽しみになってしまう。
きっとデレデレになってそう。無表情で。




