黙して語らない騎士。3
キラさんは、可愛らしくディスプレイされている雑貨屋さんへ連れて行ってくれた。
欲しいと言ってた籠バッグが並んでいたり、可愛いリボンや髪飾り、アクセサリーが、綺麗に並べてあり、しばらくそんな世界から離れていた私のテンションは上がった。
「かっ、可愛い・・・!!!!!」
普段は可愛いのにそこまで盛り上がらないのに、久々過ぎて・・。わ〜〜、可愛いっていいねぇ!やっぱり心が浮き立つわ!!・・殺伐とした空気の中に身を置いてたから、余計に愛おしく見える。
「キラさん、ありがと〜!めっちゃ可愛い!!」
私はお礼を言うと、キラさんが静かに笑う。
そっと手を離すので、珍しいな・・と思って、見上げると
「ゆっくり見てくればいい」
あ、あっちこっち見たいのかな・・って、思ってくれたのかな?離れた手に、ちょっと寂しいとも思ったけど、お言葉に甘えて店を見て回る事にした。横目でキラさんを見ると、キラさんも時々アクセサリーを見てたので、安心して選ぶ。
洋服を貸してくれたお姉さんには、髪飾りがいいかな・・。
食事を作る仕事だし、日常で使えるものがいいかな・・とか、籠バッグはこっちの方が私には使いやすくていいかも・・と、貰ったお給料から見合った価格の物を選ぶ。貨幣の数え方は、地球と同じだったんで助かった。
会計を済ませて、キラさんの所へ行くと、何も言わず私の買った物をさっと持ち、手を繋ぐ。うん、言葉出して。
まぁ、キラさんだしな・・、そう思いつつ、また歩く。
一歩路地に入ると、建物と建物の間から、キラキラ光る海が見える。船だろうか、小さいのから、大きいのまで悠々と進む姿が見える。
「うわぁ・・・キラさん海ですよ!海!!ここから見えるんですね!」
「この下り坂を降りていくと、港に着く」
「へぇ〜〜!!」
「今日、時間があれば行ってみるか?」
「はい、見てみたいです」
そう答えると、キラさんは静かにうなずく。
建物と建物の上の方では、洗濯物が干されていたり、花が飾られていたり、時々建物越しに会話する人も見えたり・・、なんだか外国観光に来た気分になってワクワクした。・・あ、ここ異世界だった。
「お菓子屋に寄る前に、少し早いけどお昼に行くか?」
「あ、そうですね・・、荷物増えちゃうかもですし、そうしますか」
・・・お、ちょっと緊張取れてきたかも・・・。普通に会話できると、少し冷静になれた。
キラさんは、さすが騎士団だけあって、たまに道行く人から声をかけられたり、相談されたりしてた。おお・・・地域のお巡りさんみたいだな。
「キラさん、私服でも皆に知られているのすごいですね」
「・・・少し困る」
「はは、確かにそうですね。仕事から逃げられないですね」
「・・ナルといるのに」
「あ、そういう・・・いえ、あの、大丈夫ですよ?・・・頼られるのは、大事ですからね・・?」
キラさんの一言に、ドキッとさせられる。
頼むよーー、やっと冷静になってきたんだから!!!
お昼を食べるお店は、雑貨屋さんの近くにあって、テラス席なんかもあるカフェだった。うわーー、溢れるスタ●感。ちょっと緊張しつつお店に入って、テラスへ通される。メニューを読めるけど、内容がわからない・・・。
「キラさん、メニューは読めるんですが・・」
キラさんに助けを求めると、小さく笑って、メニュー表を見ながら説明してくれた。ありがたい・・・。
「野菜も食べましょう!」
「・・・夕飯で」
「騎士団でだって、お野菜なかなか食べないじゃないですか。もう、嫌ですよ・・野菜不足で体調崩したら、困るのはキラさんだし、そうなったら私も心配だし・・」
「心配?」
「キラさんが、体調崩したら心配です!・・って、これ、前もこんな会話しましたね」
ヘラっと笑うと、キラさんは優しく笑う。
野菜は、ちょっと頑張って食べてたので、よく褒めておいた。私は頑張った事は、褒めて育てる主義だ。




