黙して語らない騎士に宝石を。14
ニルギさんと一緒に無事に商会の魔法や武器を使えないという部屋へ入って、ようやく肩の力を抜く。
ジェイ君とネリちゃんは部屋の入り口を警護してくれるので、私とニルギさんで部屋に用意された書類を見るけれど‥、本当にさっきのあの流れは一体なんなのだ。無礼も無礼だし、キラさんが聞いたら私は姿を消す力をずっと使えと言われそうだ。いや言うな、絶対言う。誓ってもいい。
難しい顔をしつつ、書類をさばいているとニルギさんは別の仕事の書類を見つつ、
「ナル、俺の秘蔵のお菓子を食べるか?」
「‥ん??お菓子をどこから出したんですか?」
「魔術で出した。何がいい?チョコか?カップケーキか?」
「う、うう‥チョコで」
「そら、一口食べておけ」
チョコをひとかけ食べると、ちょっとモヤモヤしていた気持ちが落ち着いたけど‥、私の眉間のシワはどうにもならなかった‥。ニルギさんが可笑しそうに笑って「ウルキラみたいになってるぞ」と言うので、シワを伸ばしてみた。
「さっきの‥よくあるんですか?」
「王都なんかはよくあるな。貴族なんて化かし合いみたいなもんだ」
「‥そうなんですか‥」
あんなの何度もあったら、私はうんざりしてしまうなぁ。
ああでもそうか、だから昔‥王族なのにラフさんもこっちの生活の方が気楽だなんて言ってたんだな。私は今更ながら本当に自分はキラさんに拾って貰って良かったなぁって思うし、皆が優しい事が本当に有難いなぁってしみじみと痛感する。
「‥ネリちゃん、気をつけた方が良さそうですね」
「そうだな。まぁ、流石にアリア様の警護をしている時は手を出さないと思うが、ナル相手だと舐めてかかりそうだな」
「なんてこった!‥私の警護をお願いしてて大丈夫なんですか?」
「それはウルキラが考えるだろ。その前にナルを自分の側に置くと言いそうだが」
それは私も思った‥。
しかしそれではネリちゃんの勉強の場を奪ってしまうことにもなるしなぁあ‥。ニルギさんはちょっと笑って「だから俺がいるんだろ」と話す。確かに‥、さっきは本当に頼りになりました!
「ニルギさんはやっぱり大人ですね」
「はは!そうでもないぞ」
「いや、本当さっきは助かりました‥」
「ウルキラにもよく言っておいてくれ。そうすればあいつも落ち着くだろ」
「確かに‥。こんなの聞いたらキラさん絶対ここに‥」
「ナルはいるか」
「言ったそばから来たーーーーーーー!!??」
いきなりドアが開いたと思ったら、キラさんが部屋の前に立っていて‥私を見てホッとした顔をする。
あの?!お仕事じゃないの??
私が目を丸くしているけど、キラさんはツカツカと私の所へ一直線にやってきて、ギュッと抱きしめたけど‥、ニルギさんが目の前にいますけど??!!
「き、キラさん!あの、人前なので!」
「ニルギは気にしなくていい」
「俺もいいぞ」
「二人は良くても私は嫌です!!キラさん、あのお願いだから離れましょうね‥」
ちょっと背中をポンポンと叩くと、キラさんはちょっと不満げな顔で私をそっと離す。そんな様子をニルギさんが可笑しそうに笑って見ているけど、息子さんをどうにかして下さいよ〜〜。
「随分早くここへ来られたな」
「ダーナ卿がフランの屋敷へ行った。またすぐそちらへ行く」
また行っちゃうのかぁ‥。
会えてちょっとホッとしたんだけど、すぐにいなくなっちゃうのかと思うとやっぱり残念だし、寂しい‥という気持ちが思い切り顔に出てしまったのか、キラさんが私の頬をそっと指で撫でる。
「すまない‥。今回も心細い思いをさせて‥」
「いや、その多少?でも、今回は仕事ですから!頑張ります!!」
「‥‥心細い?」
「え、えっと、まぁ、はい‥」
そんな改めて確認されるとちょっと恥ずかしいのですが‥。
少し顔を赤くしつつ頷くと、キラさんが天を仰ぐ。
「‥ニルギ、どうにかできないか‥」
「ウルキラ、冷静になれ。あと半年続くからな」
うーん、キラさんはどこにいても、どんな時もキラさんだな。
ちょっと笑ってしまったけど、いつものキラさんが見られてやっぱり嬉しかった。ヘラっと笑ってキラさんを見上げると、キラさんは険しい顔をして「‥ナルといたい」と言ったけど、えっとお仕事なんで無理かな?




