黙して語らない騎士。2
爽やかな晴天である。
前日まで、書類の山に追われて息も絶え絶えな団長さんを見るに見かねて、手伝い始めたら思いの外時間がかかって、キラさんが心配して迎えに来て、なんなら一悶着あったが・・、とりあえず本日を無事迎えられた。
そう、今日はデートである。
デートなんである。
食堂のお姉さんがキラさんとデートする事をどこからか聞きつけて、色々服を貸してくれた。ありがとうお姉さん。お土産を買って帰るけど、その情報・・マジでどこから聞きつけたのか、帰ったらじっくり聞くわ。
貸してもらった白い七分袖のブラウスと、カーキのスカートは前面のウエスト部分にリボンがついている。貸して頂いた籠のバッグも実に可愛い。これ、売ってたら私も買いたい・・。よく考えたら、リュックしかないし。
・・・・なんて騎士団の詰所前で、考えつつ、キラさんを待っている。
あああーーーーー緊張するーーーー。
手汗がやばいーーーー。
今日という日を乗り切れるのか?世の中の男女は、マジでこんなソワソワしてる事してんの?無理だ!帰りたい!!なんなら今からお腹痛いって言って帰ろうかな・・そう振り返ったら、キラさんがこっちに来るのが見えた。
毎日見てるのに、デートというだけで、三割り増しでキラキラしてるキラさんに、心臓が止まる。
無理ーー!!!今、顔、めっちゃ赤いーー!!
白いシャツに、紺のパンツを履いているラフなキラさん、実は初めて見る。
嬉しそうに水色の瞳がこちらを見て、近付いてくる。格好いい・・めっちゃ格好いい・・。そして死ぬ。萌え死ぬって聞くけど、これかな?って思った。
「ナル」
嗚呼、声まで甘い仕様ですか、そうですか。
自然に手を繋いできて、心臓がすでに死にそうですよ。
キラさんは無表情だけど、私には後ろからお花が飛んでいるのが見える。すげー飛んでる・・。キラさんは私をじっと見て、本当に嬉しそうだ。
「ナル、可愛い」
「お願い・・・キラさん、今日、もう本当に序盤で死にそうだから、控えて・・、お願いします」
私は真っ赤な顔で、切実に訴えた。
世の中の付き合ってる男女のメンタル・・やばくない?!待ち合わせの時点で死にそう・・・。
静かに笑った気配がしたけど、私は言葉が出なくて、手を引かれてようやく歩き出した。・・・まだ序盤・・、帰ってきたら、私どうなってるんだろ・・そうぼんやりと思った。
石畳の道を歩きながら、なんとか顔を上げ、町中を見回す。
来た時に見た、お洒落な店もあれば、キラさんと来る途中に寄ったような、素朴な感じのお店もあった。
「ナル、何か見たいのがあるか?」
「えーと・・・、今回籠バッグ貸してもらったんですけど、これと似たのが欲しいので、お店が近いなら見てみたいです。あ、あとお菓子をお礼に渡したいので、お菓子屋さんとか・・、って、結構みたい店多いかも・・」
「そうか・・」
キラさんが、私を見て微笑む。心臓に悪い。
一応団長さんや、癒しのニルギさんや、フランさん、そしてキラさんにも助けてもらったお礼もしたいので、なんとなく調べておきたいのだ。
「騎士団から近くて、すぐ行ける場所とかだと有難いです」
「・・では、こっちかな」
「よく知ってますね」
「騎士団だしな、町中を警備のために見回るからな」
「そうだった・・騎士さんは、そういうお仕事もあるんですね」
「入団したての時は、よく警備で歩いていたな」
「はぁ〜」
若いキラさんも、さぞかしカッコよかったであろう。
見回りしてたら、女性の注目の的だったろうな。・・・うん、だって今、めっちゃキラさん、道ゆく女性に見られてる。
リアルにそんな人いるんだな・・そう思って、手を繋いでいるキラさんを見上げると、綺麗な水色の瞳がまた嬉しそうに、こちらを見つめる。




