黙して語らない騎士に宝石を。9
今回、来る予定でなかったダーナさん。
それが突然、皇族だけど貴族側のダーナさんが来て、ソマ二や王都の騎士団が危険だと判断してシーヤ騎士団に連絡をしてきたらしい。
そっか、だから突然キラさんソマ二へ行ったのか。
パフェを食べつつ、セトリさんから説明を受けたけど‥、本当にガダってやつは‥。団長さんの「もう本当いい加減にして〜〜!!」って叫ぶ姿が目に浮かぶ。
「‥なかなか大変な状況なんですね」
「まぁ、積もる話はこの後で。今はナルさんしっかりパフェ食べて下さい!」
「は〜〜い。ご心配ありがとうございます」
美味しい果物パフェを食べていると、あれだけあったアイスやら生クリームの塊を食べきったニルギさんが「残すならいつでも食べてやる!」と言うので果物をおすそ分けしておいた。細身の体によく入るな〜〜。
食べ終えてから、周囲を案内してもらいつつ商会へ戻る頃にはすでにお昼だ。
遮音に魔術も武器も効かない部屋で、フランさん、セトリさん、私、ニルギさんで明日の仕事の打ち合わせをサッとしておく。‥ニルギさんはお菓子を食べつつだけど。
今回、話し合いに参加する名簿を見ると、ダーナさん以外の皇族の名前が目に入る。不思議に思ってフランさんを見ると、ちょっと笑って‥
「今日会ったダーナさんは皇族なんですが、皇位の継承権は3番目なんです」
「え??そうなんですか?」
「はい。今回皇族として正式にこちらへ話し合いに来るのは皇女のリラ様です。貴族側がダーナさんなら皇族ですからソマ二へ潜り込めると思ったのでしょうね‥」
なんつーことをするんだ。
思わず真顔になると、ニルギさんがぶっと吹き出す。
「まぁ、ガダのことだ。何もしない訳はないさ」
「それもなんというかあれですねぇ‥。リラ様?はいつこっちへ?」
「あと3日後だな」
なるほど。ダーナさんは随分と早くに来て入念に下調べしていると?
そりゃ王都の騎士もシーヤの騎士も気にするよね〜。
こんこんと部屋をノックする音が聞こえて、フランさんが扉を開けるとキラさんが立っている。
「キラさん!」
「‥こっちは変わりないか」
「大丈夫ですよ〜。ナルさんにざっと状況説明しておきました」
フランさんはがにこりと笑うと、キラさんは無言で頷く。
そうして側にいた騎士さんに「すぐ戻る」と話して、部屋の前で待ってもらうとキラさんが部屋へ入って来る。
「ニルギ、魔術は?」
「街中にはおかしな術は掛けられていなかったし、ダーナ卿も魔術の気配はなかった。まぁ今後接触すれば違うかもしれないがな‥」
おおっと〜。
会話が不穏だなぁ。
セトリさんと目が合うと、小さく笑い合う。平和が一番だよね〜‥。
キラさんはいくつかフランさんとニルギさんと確認し合うと、また仕事へ行くらしい。大丈夫かな?休めてる??私はキラさんを見上げる。
「キラさん、あんまり無理しないで下さいね」
「ナル‥」
嬉しそうにキラさんは目を細めて私の方へ歩いてこようとしたが、一瞬体の動きを止めて、静かにドアへ体を向けた。
「‥また後で‥」
「あ、はい?いってらっしゃい」
「‥‥行ってくる」
キラさんはちょっと苦しそうな声をして部屋を出て行った。
大丈夫かな〜〜??実は苦しいんじゃないの??
私が心配していると、ニルギさんが体を震わせている。
「ニルギさん?」
「ありゃナルを抱きしめたいけど、まだ仕事中だからと自制してたな」
「え?!!」
「ものすご〜く我慢してましたね〜〜」
「ええ??!!」
「夜はフランさんの家に泊まるからナルさん、ウルキラさんに会えますからね!」
皆によってたかって(?)慰められた‥。
い、いや、私は寂しいとかではなく、心配をしててだね?
多分寂しくて仕方ないのはキラさんの方だと思うんだ?そう思うけど、何も言ってないのに全て悟られているキラさんに思わず笑ってしまう。
なんだかんだで夕方まで仕事をして、フランさんの家にいよいよ出発だ。
商会から馬車に乗って、夕陽の見える街中を走って行く。前回同様白い建物が綺麗に夕陽がスポットライトみたいに当っていて、海外に来たな〜って感じる。いや、バッチリ異世界ですけどね。
「綺麗ですねぇ‥」
私がポツリとこぼすと、ニルギさんが静かに笑って頷いてくれた。
そうして港近くの大きな白い門に囲まれた豪邸が見えた。馬車が悠々と門の中へ入って行き、ものすごい広い庭園に目の前には噴水まである。
ロータリーのような場所に、馬車がゆっくり止まると皆で降りるけど‥。目の前の豪邸の玄関がなんかもう博物館のような大きさなんだけど?
「ようこそナルさん。ちょっと小さいうちですがどうぞ中へ!」
全く悪びれもせず、ニコニコと話すフランさんの言葉に私が「小さいとは??」と言うと、セトリさんとニルギさんが「ちょっと感覚がですね…」「大分違うな」と、概ねフランさんへの違和感に同意してくれた。




