黙して語らない騎士に宝石を。4
そうして、次の週にはライ君の弟のセラ君がやってきた!
13歳のセラ君は、ライ君に似ていて赤毛の短い髪にそばかすの散った‥ちょっとタレ目の少年だ。でも最初に来た時のライ君に似ていて、私とフランさんはそれだけで心を掴まれてしまった。可愛い!懐かしい!!
団長さんはセラ君を皆に紹介してくれると、ちょっと緊張気味のセラ君、顔を赤くしつつ‥
「は、初めまして。いつも兄達がお世話になっています!計算は得意なのでよろしくお願い致します!」
キラさんもいたけど和んでいるようだ。
ほんわりと空気が柔らかい。
「セラ君よろしくね。ナルと言います。えっとこちらは夫のキラさんです」
「はい!いつも兄がお世話になっています!特にナルさんの‥」
「セラ!!!!すぐ仕事!!!」
「は〜い」
特に私の‥なんだろう?
キラさんを見上げると、少し考え込んだ顔をしてから私を見て、
「‥可愛いと話してた、とか?」
「キラさんもそんな事を言うんですね‥」
なんかそんな事を思い付かなさそうなので、面白い。
夫婦をやっていても、発見の日々だな。
そんな事を話していると、ラフさんが執務室へやってくる。
「急に悪いな。ソマ二から連絡が来たんで、近くだったので寄らせてもらった」
あれ?まだ一週間後‥の出発だよね?
そう思っていると、団長さんは何か思い当たる事があったらしい。すぐに隣の部屋を勧めて、キラさんとフランさん、ノーツさんも呼んで話し合いをしに行った。
私とライ君は顔を見合わせる。
もしかしてまた何かあったのかな?
フランさんがいれば事情が聞けたけど、話し合いに行っちゃったしな。
「とりあえず、今できる事をしよっか」
「そうですね。セラ、こっちの計算頼む。終わったら持ってきて」
「はい!」
可愛いなぁ〜〜〜!!兄弟っていいな。
ほんわか和んでいると、ウルクさんが書類を持って執務室へやって来た。そして弟達の姿を見るとニカッと笑って、
「お!なんだ仕事頑張ってるか!?」
「うるさいバカ」
「ウル兄、今仕事中でしょ」
兄弟〜〜〜!!!
ウルクさんには何か厳しくないかい?
私が焦ってしまうけど、ウルクさんはヘラっと笑って「いつも通りで偉いぞ〜〜」と言って、私に書類を預けると「弟達をお願いしまっす!」と言って、あっという間に去っていった‥。どうやら心配して覗きに来たな?
ライ君とセラ君もわかってたらしく、二人で「変に心配しすぎなんだよ」「大丈夫って言ったのに」って言いつつ、書類をサクサク捌いていた。本当、この兄弟可愛いな。
そうして3人と、時々やってくる事務員さんと仕事をしながらお昼になる頃に団長さん達が別室から戻って来た。団長さんの後ろにいるキラさんは無表情だけど顔がいつもより険しい。もしや、これ‥何か大変な事が起きた?
ちょっとドキドキしつつ、ソファーでくつろぐ皆さんにお茶を配ると、
キラさんは私を見て、
「‥すぐ、これからソマ二へ行ってくる」
「ああ、そっちか‥!」
「なんだ?」
「いや、なんか大変な事が起きたのかな〜って‥」
「それは問題ないが‥」
すかさず隣に座る団長さんが「問題があるから行くんだろうが!」って言ってますよ?ラフさんはちょっと遠い目してますよ?私と団長さんで宥めるけど、キラさんは不服そうだ。無表情だけど。
「来週、ニルギさん達とソマ二に行きますから。すぐ会えますよ」
「な?ウルキラ、たった一週間先に行くだけだ。頼むぞ」
「‥仕事が終わったら休む」
「アホか!!!報告書もあるんだから、出勤しろ!!!」
この団長さんとのボケツッコミな会話も半年聞けなくなるのか〜と思うとちょっと寂しいけど、ま、いっか。そう思いながら聞いているとセラ君がちょっと驚いた顔をしている。
私は一つ咳払いをして、団長さん達に顔を寄せて小声で‥、
「ほら、未来ある若者に格好いい姿を見せてくださいね」
そう言うと、団長さんとキラさんがしゃんと背筋を正す。
団長さんはキリッとした顔でキラさんを見て、
「では、昼食後すぐにソマ二へ向かってくれ!」
「嫌だ」
「ウルキラあぁぁあああ!!!!」
「‥大人達、頼むよ〜〜〜」
私の呆れた声に、ラフさんが大爆笑するしセラ君はますます目を丸くするので、ライ君が「見過ぎ!!」って怒るし‥。本当にこの大人達は出発直前までウダウダだな〜〜‥。




