黙して語らない騎士、夢を見る。5
植物がこちらへ向かっている以上、ここは危険だ。
地元の人を馬車で連れて来ていたけど、場所を移した方がいいと判断され、騎士団の養成校まで運ぼうという話になった。急いでそちらへ避難してもらえるように誘導のお手伝いをする。
「ナルさんは?!」
ルーナさんと家の人達を馬車に乗せるとルーナさんが心配そうに私を見つめる。
「あ、私はキラさんが愛馬を置いていってくれたので、一緒に乗って避難します!少しでも皆さんが馬車に乗って行った方がいいですしね」
そう言ってヘラっと笑うと、ようやくルーナさんも安心したのか小さく微笑む。いや本当、キラさんが一緒に乗馬したいからって教えてくれたけど助かったよ。
馬車の後ろに私と、ウルクさんがライ君と一緒に馬に乗って後から付いていく。他の騎士さん達は、蔓を払いつつ徐々に追いかけてくるそうだ。
「なんだか大変なことになりましたね‥」
「もうそろそろウルキラ団長補佐が仕留めると思うんで大丈夫って思うんすけどね」
キラさんへの絶対的な信頼感。
すごいなー。
でも私もそう思うけど‥。
朝日が段々と昇ってきて、街の中も少しずつ見えてくるとホッとする。
その時、チルの足元からあの大きな蔓が地面からボコッと勢いよく出てきた!
「え?!!」
「ナルさん!!!」
ウルクさんとライ君が叫ぶけど、チルはその蔓から逃げるように私を引っ張っていく。
「ちょ、ちょっと待って!!!チル〜〜〜〜!!!!??」
馬車やウルクさん達から逃げるようにチルは走っていくので、慌てて手綱をしっかり握って前傾姿勢になりつつチラッと後ろを見ると蔓が確実にこちらを狙って伸びてきている。
なんで???なんで私を的確に狙ってくる?
「もしかして‥、さっきのガダの人なにかした?」
でも守護魔法で弾いてたし、大丈夫かな?って思ってたんだけど‥。
と、今度は前面から勢いよく大木か?!!くらいの太さの蔓が出てきた!!そして、その蔓に付いている蕾が一斉に目を開く。
「「目ぇええええええええええええええ!!!!!!!」」
ヤギ第二弾である。
気持ち悪い〜〜〜〜!!!!
チルが急いで方向転換しようとしてくれたけど、その瞬間ものすごい眠気が私を襲う。眠い??でも魔術は効かないはず?抗えないくらいの眠気に、手綱を持つ手が緩むけどなんとか堪える。
このままじゃ捕まる。
えーと、私の力‥体が隠せるけど、チルごと隠れられる?
もうずっとキラさんが一緒にいてくれるおかげで来た当初しか使ってなかった自分の力を思い出して、睡魔と戦いながら「消えろ‥消えろ‥」と念じる。
自分の手綱を持つ手を見ると、ふんわり消えている。
なんならチルの背中も消えている。
これなら大丈夫かもしれない。
後ろの方を見ると、蔓は追ってこない。どうやらあの目でこちらを探し当てていたらしい。それならきっと逃げられる!
消えろ、消えろ、今だけ消えろ。
そう思って、自分の体が消えた‥事を確認すると、私はとうとう眠気に負けてがくりと力が抜けてしまった。
チルの背中で寝てしまって、どれくらい経ったのだろう。
ふっと意識が戻ってくるのを感じて、私は恐る恐る目を開ける。
なにせ走っている馬の上で寝たんだ。
きっと地面に振り落とされて、打ち所が悪ければ確実に死んでいる。ここは天国かもしれない。いや、でもキラさんの守護魔法があればワンチャン大丈夫か?って思ってたり‥?
真っ白な雲に包まれた世界でありませんように!
そう思って目を開けると、そこはものすごい豪華なベッドの上だった。
「あれ??私、王様にでもなった??」
それくらい豪華で大きなベッドで、なんなら天蓋つきのベッドにびびった。
ルーンさんの所で泊めてもらった時も、相当豪華だったけど、ここも相当豪華ですね?!目を見開いていると、パタパタと小さな足音がする。
ベッドの向こうにある大きな木のドアが小さく開いて、何かがキラッと光って見えたかと思うと、すぐにドアの向こうへ引っ込んでしまった。
「え、ちょっと、待って!!!?」
私は慌ててドアの方へ走って、ドアを開くと、部屋の角に今度はキラッと何かが光って曲がっていくのが見えた。えーと、鬼ごっこ??




