黙して語らない騎士、夢を見る。4
キラさんとニルギさんが馬に乗って、早速現場へ向かい私はというと、騎士さん達のお手伝いをする。
といってもお茶を配ったり、テントへ案内したりするくらいだけど。
ウルクさんは地元の人を案内する私を見て、
「いやー、女性とか子供とかは俺の方見て、びびったりするんでナルさんいてすげー助かるっす!!」
「あ、ああ、なるほど??」
「あ、でも不審者には要注意っす!俺がウルキラ団長補佐に殺されるんで!!」
すかさずライ君が「お前の仕事だろーが!」と後ろからツッコミを入れる。
相変わらずこの兄弟のボケとツッコミは激しい。
「ナルさん?」
兄弟のやり取りを見ていると、後ろから声をかけられて振り返るとルーナさんが立っている。
「え?!ルーナさん!!大丈夫なんですか?!ここにいて‥」
「家の方にいたんだけど、どんどん植物が伸びてきて‥、さっき家の人達とここへ避難してきたの‥。良かった〜〜、ちょっと怖くて‥ナルさんを見たら安心したわ〜」
のんびり口調のルーナさんに、ちょっと力が抜けたけど‥。
こんな時だけど久しぶりに会えた上に、そんな事を言って貰えて嬉しくて私の頬が緩む。
「私も会えて嬉しいです。こんな時になんですけど、赤ちゃんおめでとうございます!体を冷やすとまずいですし、こっちのテントで休んで下さい」
「ありがとうナルさん。うふふ〜、やっぱり頼りになるわ」
花が綻ぶような笑みに私が癒される〜〜。
ウルクさんがルーナさんを守るように、家の人達と一緒にテントまで案内しようとすると、テントから少し離れた場所で濃い緑のローブのフードを被っている人が木の下に佇んでいる。
「‥誰かな?」
「どーしたんすか?」
「ここって地元の人しかいないよね?あんなフード被った人、珍しいなって」
ウルクさんは、私の言葉にハッとしてルーナさんを私に任せると、駆け足でその人の側へ駆け寄っていく。
「大丈夫っすか?怪我とかしてませんか?」
「え、あ‥」
「ここは危ないんでテントに‥」
「いや、あの、その‥」
不意にさっきウルクさんが自分が声をかけると怖がられるって言ってたなぁって思い出して、そばにいたライ君にルーナさんを守って欲しいと話して、私もフードの人の側へ駆け寄る。
「あの‥」
声をかけようとしたその瞬間、フードを被った人が手から何かを取り出して、ウルクさんに投げつけようとして私は咄嗟に庇う。
「ナルさん!!!」
ウルクさんの声がしたその瞬間、バシン!!!と大きな音が鳴り、私の守護魔法が発動したのだろう。フードを被った人を勢いよく弾いた。その拍子にフードを被っていた人は思い切り木に頭を打ち付けて気を失ったのか倒れてしまった。
ま、まずい?
あれ?でも守護魔法はこっちに攻撃しようとすると発動するから攻撃しようとしてたって事でいいのか??私は焦ってウルクさんを見ると、ちょっと驚いた顔をしていたウルクさんはすぐにフードの人に駆け寄るとフードを取る。
「あ、やっぱり‥!」
「え?」
「昨日、東の森で誰かが魔物に襲われてるって言ってたんすけど、駆けつけたらいなくて‥。ここの首の所に怪我がありますよね。濃い緑の服を着てたって言うから、もしかして‥って思ったんすよ」
そういえば団長さんも昨日魔物に襲われた人がいたらしいって言ってたな。そう思って、その人を見ると手首の所に何かタトゥーのようなものがあるのが見えた。
「‥これって‥」
「魔術師の刺青っすね〜。これ、ガダの人間だ。刺青を入れると魔術を高められるからって入れるんすよ」
軽い感じで言ってるけど、そんなの初めて知りましたけど??
「あ、でもそういえばニルギさんも肩に入ってる‥」
「国によって刺青入れる場所が違うんす。こいつは手首なんでガダっすね」
「そうなんだ!!!」
「まぁ、俺もつい最近知ったんすけどね!」
ニカッと笑うウルクさんにちょっと笑ってしまう。
うん、本当に正直である。
素早くフードを被った人を持っていたロープで縛ると、他の騎士さん達を呼ぶ。私はというとルーナさんの方へ戻り、ライ君と一緒にテントへと向かうことにした。
と、目の端にお日様が少しずつ上がる様子が見えた。
「あ、もうそろそろお日様が‥」
そう言いかけた途端、遠くの方から
「植物がこっちへ来たぞ!!!」
誰かが叫ぶ声が聞こえて、私とライ君、ルーナさんは顔を見合わせた。こっちに??なんで??!




