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黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人の日常編。
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黙して語らない騎士、夢を見る。1


団長さんが父になる!!

その情報はあっという間に広まった。

騎士団全体もだけど、ルーナさんは食堂で働いていた事もあって、特に食堂は大盛り上がりだった。ルーナさんもつわりがようやく収まったので、明日には顔を見せに来るそうで私もそわそわしてしまう。



フランさんは、赤ちゃん用品は任せて下さい!!と豪語するし、ライ君もお手伝いは得意です!って言うし、えーと、えーと私は、料理くらいなら?!あ、キラさんの方が上手だな?ニルギさんが「俺もご飯くらいなら‥」って話すので、全員で止めた。死人が確実に出るから止めた。



そんなこんなで結局ソワソワして終わった夕方、キラさんと一緒に家に帰る前に明日ルーナさんも来るし、お祝いのプレゼントを買おうとキラさんに誘われた。珍しい!!キラさんからそんなことを言うなんて!と、ちょっと目を丸くした。


一緒にお店のある通りまでキラさんと歩いて行くけど、今日も安定の無表情である。私から見ると、ちょっとお花が後ろから溢れてる感じだけど。



「‥キラさん、すごく嬉しそうですね」

「‥そうか?」

「はい、すごーく!」



私がヘラっと笑ってキラさんを見上げると、ちょっと照れ臭そうにはにかむ。


「‥ラトルには新人騎士の頃から世話になったしな」

「ああ、そういえば一緒に団長さんのお父さんのクロエさんに鍛えられてたんでしたっけね」


思い出しながらキラさんにそう話すと、小さく頷いて、キラさんは建物と建物の間から夕方のお日様の光を浴びてキラキラ光る海を見つめる。



「‥ニルギにあれだけ大事にして貰っていたのに、あまり自分に価値が見出せなくて、やけになって魔物を倒してた時期があって、ラトルとフランによく怒られた」


「え?!キラさんが??」



意外な言葉にキラさんの横顔を見上げる。

っていうか、フランさんもその頃から一緒だったんだ。驚いてキラさんを見つめると、少し寂しげに微笑んだキラさんに思わず言葉が詰まる。


そうだった‥。

魔力がないからって、お父さんに捨てられたキラさん‥。


ニルギさんが怒ってキラさんを引き取ったんだ。大事に育ててくれてたけど、それでも小さな子供が自分に価値がないって思ってもおかしくないし、傷つかないわけがない。



私はキラさんの繋いだ手をギュッと握ると、キラさんが嬉しそうに微笑んでくれた。



「‥ラトルに無茶するなとものすごく怒られて‥その日の夕方鳥のモビールをいきなりプレゼントしてきたんだ」


「あ!もしかしてニルギさんの家にあって‥、今はうちにある‥あの鳥?」



白い綺麗な鳥のモビールを、キラさんはニルギさんの家に行った時「これは持っていく」と言って持ち帰って、新居に飾ってあるんだけど、あれ団長さんから貰ったんだ。意外な事実に驚いていると、キラさんはちょっと可笑しそうに笑う。



「大事な友達だから、それをやるって‥。だから、自分は傷ついてもいいとか思って特攻するなって言われて、部屋に無理やり飾られた。モビールを見てお前の大事な友達が無茶すると傷付くって思い出せって‥」



‥思わぬ団長さんとの思い出話に私は口をポカンと開ける。

そんな過去があったんだ‥。そんな友情があったんだ。

だから、お互い憎まれ口を叩いたり、からかったり、遠慮なく言い合ったりできるんだ‥。私の知らない二人の話が聞けて嬉しいのと、そんな友情関係素敵すぎて‥羨ましいなぁって素直に思った。



「‥素敵ですね‥」

「今や腐れ縁だがな」



キラさんの言葉にちょっと吹き出す。

と、キラさんも可笑しそうに小さく笑う。

そうか、そんな二人だから団長さんが嬉しいのが我がことのように嬉しいんだなぁ。



「‥キラさん、鳥のモビール買いに行こうと思ってました?」



キラさんを覗き込むように私が尋ねると、無表情が綺麗な笑顔になった。



「‥ああ。できれば沢山鳥があるのがいいな」

「じゃあ、早くお店に行ってとびきりの探しましょう!」



ちょっと前を歩いてキラさんの手を引っ張ると、キラさんが私を嬉しそうに見つめた。



「‥いつか、うちも買い足したい」

「そ、そ、そうですね〜〜〜?」

「ナルは何色の鳥がいい?」

「ええええ、気が早くないですか???」



そう聞かれると、顔が赤くなるんですけど〜〜?!

キラさんからちょっと顔を逸らして、「‥水色ですけど」と呟くように言うと、キラさんが私の手をキュッと握る。



「用意しておく」



と、囁くように言うので夕陽に負けないくらい赤い顔になったのは言うまでもない。




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