黙して語らない騎士、ほしいもの。6
作ったお菓子は残念ながら渡せなかったけど、
ココアにしてチョコは少し渡せた‥て事でいいのかな?
ココアを大事そうに飲んだキラさんは嬉しそうに笑ってくれたので良しとしよう。
「キラさん、お仕事はどうなんですか?」
「‥まだ少し魔物がいるので、殲滅する」
「やっぱり危険なんですね‥」
「いや、この時期に討伐に二度と出る事がないために」
「‥ああ〜〜〜動機〜〜〜!」
いいのかなぁ、そんなのが理由で。
でも後ろでそんな会話を聞いていた騎士さん達が頷いているので、いいのかな‥。
「じゃあ、まだちょっと掛かるんですね」
「いやすぐ終わらせて帰る」
キリッとした顔でキラさんが誓っているけど、後ろで騎士さん達が「あ、あれを!?」って悲鳴を上げてますよ?無理しないで下さいよ?
ニルギさんがちょっと面白そうに笑って立ち上がる。
「どれ、俺もちょっと肩慣らししてくるか。ウルキラ、休憩できたんなら一緒に魔物退治に行こう」
それを聞いてキラさんがちょっと顔を曇らせる。
「‥ナルといたい」
「俺とちょっと魔物を倒してて、今日は帰れなかったら?泊まるしかないなぁ」
ニヤッと笑うニルギさんに、キラさんがちょっと目を丸くする。
ああ、なるほど‥泊まっていくぞって事ですね?
キラさんがちょっと期待に満ちた目で私を見るけど、いいのか??公私混同してないかな?
「お邪魔でなければ?」
「魔物が大量にいるので泊まった方がいいな」
「あ、そういう?‥じゃあ、待ってます」
そういうと、騎士さん達が後ろでわっと喜びの声を上げる。本当にうちのキラさんがお世話かけちゃって‥。そんな事、我関せずのキラさんは嬉しそうに微笑み、私の頬をそっとひと撫でしてからニルギさんを見る。
「熊の形態が群れでいる」
「何頭くらいだ?」
「群れなんで、20頭は。あと魔法も使う」
「それは楽しみだ」
魔法!??
それって結構やばい方に分類される魔物では!?
あ、でもだからキラさんとクリスさんでここへ来たのか‥。再びニヤッと笑うニルギさんと、立ち上がったキラさんに騎士さん達が色々と武器の準備をする。
ほ、本当に行くの?しかも二人で??キラさんはクリスさんに今後の動きなんかを話してから、見送るためにテントの入り口まで一緒に行く私を見る。
「‥行ってくる」
「気を付けて下さいね」
「ああ」
ニルギさんはニヤニヤしながら、「ほら早く帰りたいなら早く行くぞ〜」とキラさんを急かす。本当にそういう時の顔は楽しそうだなぁ。
キラさんは、私の額にキスをすると、
「‥帰ったら、続き」
「続き‥?」
「こっちに」
そう言って私の唇に指でちょっと触れるので、瞬間顔が真っ赤になった。
キラさんは小さく笑うとテントから出て行ったけど‥、私は真っ赤になってテントの方へとても顔が向けられないんですけど!??ど、どうしてくれるんですか!!
両頬をグニグニと揉んで、心を落ち着けてから振り返ったさ!!
まったくもう!!なんて事をするんだ!!
騎士さん達の生温かい目に心がうっかり死にそうだったけど、騎士さん達としては魔法を使う魔物をニルギさんも来て手伝ってくれるのが本当に有難い!!と話していた。
少しして、山から狼煙のようなものが上がって、確認した騎士さんが
「‥あれは殲滅完了のお知らせです」
って遠い目をして話してた。
え??もう??魔物って、魔法‥。いや、あの親子はちょっと別次元に生きているか。
そうして、夕飯時食事を作る手伝いをしているとキラさんとニルギさんがようやく帰って来た。
二人ともなんとも晴れやかな顔だ。
ちょっと雪まみれの二人の方へ騎士さん達と駆け寄ると、キラさんが何か大きな白い袋を抱えている?
「キラさん、それ‥」
「ああ、魔物が色々貯め込んでいた。木の実もあれば、宝石まであって‥」
騎士さん達はびっくりしてその袋を見る。ニルギさんはニヤッと笑って‥
「酒まであったのには驚きだな」
「お酒?!」
「ナルも飲むか?」
ワインの瓶に入った綺麗な琥珀色の液体にちょっとワクワクすると、キラさんに止められた。
「‥ナルはこっちだ」
そう言ってキラさんに小箱を渡された。
中を開けると、チョコの詰め合わせだ!!驚いて顔を上げると、キラさんは小さく笑って‥、
「男性から、女性にでもいいんだろう?」
「そ、そうですけど‥」
「‥どっちにしろ渡したかったから」
キラさんはそう言って小さく微笑む。
私はなんとも嬉しくて小箱を大事に抱えた。うわぁ、貰えるのってこれは確かに嬉しいな!バレンタインデーが初めてすごく良い日だなって思った‥。




