黙して語らない騎士は過保護。10
茶色の瞳をした可愛い女性は、私を見て
「あの、遠征に行った騎士団の方達はまだ戻っていないんですか?」
「あ、はい・・まだいつ戻るかはわかってなくて・・」
「ええ〜〜、そうなんですか・・。ん〜じゃあ、すみませんがこれ、ウルキラ副団長さんに渡して頂けますか?」
可愛らしい女性はそう言うと、封筒を渡してくる。
「あ、はい?あ、お名前伺っても?」
「やだ〜、失礼しました!リルケって言います。ウルキラさんに名前をいえば、書類の事は分かってくれると思います」
「あ、お仕事の関係ですか?」
「うふふ〜そうですね〜」
・・なんか、本当に可愛らしい感じの人で、ちょっと警戒してたんだけど、気が抜けた。
「まぁ、帰って来たらまた伺いますので、よろしくお伝えください〜」
「あ、はい失礼します」
・・就職のマナー講座受けておいて良かった・・。
そんな間抜けな事を考えつつ、頼まれた荷物を訓練場に置いてから、預かった封筒をフランさんにどこに管理すればいいかと聞きに行く。
「そうですね〜。じゃあ、キラさんの部屋に置いて来てください。あ、2階のちょっと濃い茶色の扉です。はい、鍵」
「・・・フランさん、私を全面的に信頼しすぎでは」
「え〜、ナルさんは大丈夫ですよ〜」
疑う事を知らないような、無垢な瞳をしたフランさん・・。
守りたい、この瞳・・。
さっき、つまらない感情を持つきっかけになったリルケさんと話して、ちょっと気が抜けたおかげか、少し余裕が出てきたのかも・・。そんな事を思いつつフランさんから預かった鍵で扉を開けて、キラさんの部屋へ入る。そういえば、キラさんの部屋へ入るの初めてだな・・なんて思いつつ。
濃いシックな緑の壁に、組み木の床。
おお、落ち着いた雰囲気だな・・、シンと静かな部屋へ一歩入る。
ベッドにデスクと椅子。
書類の入った本棚。
小ざっぱりとした部屋で、キラさんを表すような部屋だった・・。
「小ざっぱりしすぎな気がする・・」
私でさえ、何かしら荷物があったというのに・・。
とりあえず頼まれていた封筒をデスクに置く。
横のベッドに腰掛けて、思わずため息をつく。いつ帰ってくるんだろ・・。流石に2週間以上経つなんて思ってなかった。窓の外を見ると、今日もいい天気だ。
ちょっと前まで、外でお弁当食べてたのにな・・。
野菜・・食べてるかな。
食べてなさそうだなぁ・・。帰ってきたら、何か作ってみる?
ベッドにごろっと寝転がって背伸びをする。
ふと目を瞑って、また起き上がる。よし、仕事へ行こう。
そう思って、扉を見たら、キラさんが立っていた。
「え?!キラさん??え、帰ってきたんですか??いつの間に・・」
私はびっくりして、思わず夢じゃないよね?って、思って周囲を見渡してしまう。だって、そんな帰ってきた気配しなかったし・・。キラさんは、こちらへツカツカと足早に向かってくる。
水色の瞳が、こっちをじっと見てる。
「あ、お、お帰りなさい・・」
ポカン・・とした顔で、挨拶するとキラさんはベッドに片膝を乗せて、ギュッと抱きしめてくる。
「ただいま」
キラさんの声だ。
キラさんが・・、帰ってきたんだ・・。
抱きしめられてようやく、じわじわと実感してきた・・。
そのまま、ベッドに二人で倒れこんでしまって、キラさんが私の首元に顔を寄せてくる。
「・・会いたかった」
静かな声が、甘い色をのせて響く。
鼻と鼻がくっつきそうなくらい、顔を寄せる。
水色の瞳が嬉しそうに、私を見つめるから、私は泣きたくなるくらい嬉しくて・・、キラさんに腕を回す。
「・・・私もです」
そういうと、キラさんの瞳がキラキラ光るように見つめてくる。
なんだかもうそれだけで、十分幸せで・・。
会えなかった分を埋めるように、何度もキスをした。




