黙して語らない騎士、呼んで欲しい。15
養成校の見学を終えて、一旦騎士団へ戻ったら、港町を観光するそうだ。
戻る際に、また竜に乗るのか?
もう戦う事がなければ大丈夫かな?
私が迷っていると、エリスさんがニコニコ笑いつつ、
「ナルさん、もし良ければウルキラ団長補佐と馬に乗って、騎士団へ戻ってもらってもいいですか?」
「「え??いいんですか??」」
「はい!私も竜に乗ってみたいので!」
と、ルーシュさんの竜…アビーを指差す。
あ、はい!なるほど。納得いたしました。
ルーシュさんを見ると、ジトッとエリスさんを見ているけど‥い、いいのかなあぁ〜〜??ヴァン団長さんが面白そうに笑って、
「エリス副団長、以前酔ってしまったそうですが大丈夫ですか?」
「今回は、距離が短いのでちょっと挑戦したくて‥」
「なるほど、挑戦は大事ですからね!ルーシュ、エリス副団長を頼むぞ」
超絶いい笑顔でヴァン団長さんがルーシュさんに笑いかけると、ルーシュさんは苦い顔をして、
「‥‥‥承知しました」
う〜〜〜ん、全然納得してないな?
キラさんを見上げると、帰りも一緒に馬に乗れる!とあって、無表情なんだけど嬉しそうだ。‥分かりやすい人がここにも…。
馬は時間が掛かるので、先に出発させてもらう事になる。
一応ルーシュさんに一声かけに行く。
「ルーシュさん、色々ご迷惑お掛けしてすみません。酔ってしまったけど、またアビーに乗せて下さい!一旦、お先に失礼します」
「ああ、後でまた」
ルーシュさんはそういって、小さく笑うと
エリスさんが驚いてルーシュさんをまじまじと見る。
「え、ルーシュ副団長、可愛い」
ボソッと話すと、ルーシュさんが驚いた顔をしてエリスさんを見る。
「「今、仕事中ですよ!!!」」
「いや、すみません。つい心の声が‥」
ニコニコして話すエリスさん。
固まるルーシュさん。
お、おお‥???
私を挟んで、あの、そういう攻防はね?照れちゃうというか、ど、どうしたらいいかな〜〜〜?そっと一歩ずつ下がると、キラさんが私を無言でヒョイっと持ち上げる。
「「ウ、ウルキラ団長補佐!?」」
私がそういうと、キラさんはちょっと眉を潜める。
「なぜ戻っている」
「なぜも何も、ルーシュさんが目の前にいるのに、呼べませんって!」
ヒソヒソと小声で話すけど、まぁ、あっちはあっちでなんだか大変そうだから、大丈夫かな?って思うけど…、やっぱり注意されたくないし。
キラさんは、それもそうかと思い直したのか、私をいつの間にか連れてきていた馬にヒョイっと乗せる。頼む、頼むから一声掛けてくれ。
私を馬に乗せたキラさんは、ルーシュさんとエリスさんを見て、
「先に戻っていますが、何かあればすぐうちの騎士対応します‥。では、お先に失礼します」
ルーシュさんはハッと正気に戻った顔をすると、慌てて敬礼し、エリスさんはニコッといつものように微笑む。うーん、あそこにも策士がいた。
生徒の皆やクロエさん、ラフさんに挨拶をしてから養成校を後にして、騎士団まで馬に乗っていく。と、キラさんは私の腰に腕を回して、ぎゅっと抱きしめてくる。
「‥キラさん、仕事中ですよ〜」
「ナルも仕事中だが、名前はいいのか?」
あ、いつもの癖で!!
っていうか、キラさんが言っちゃう??
ちょっと口を尖らせて、キラさんを見上げると、小さく笑って私の頬にキスをさっとする。
「「ウルキラ団長補佐!!!」」
「もう戻った」
「人で遊ばないで下さい!!!」
そんな攻撃、対応してないんですけど〜〜!!
赤い顔でキラさんを睨むと、私を見て、
「‥家に帰ったら、だったな」
「覚えてません」
「俺は覚えてる」
「〜〜〜〜仕事中です!!」
私の赤い顔を見て、キラさんは面白そうに笑う。
まったく‥帰ったら街の案内もあるというのに、今日を私は乗り切れるのかなぁ〜〜。騎士団に戻ったら、ニルギさんの専用棚にある甘いクッキーをもらっておこう。




