黙して語らない騎士、呼んで欲しい。9
訓練を終えて、昼食をキラさんとそのまま木の下で食べるけど‥、
横でキラさんが黙々とお昼を食べているのを見て、さっきのルーシュさんとの会話を思い出してつい笑ってしまう私。
キラさんは、その度に気になるのか私をじっと見る。
言ってもいいのかな?
でも、あまりくっ付かないようになんて、言っても気にしなそうだしなぁ。
「‥ナル、何か楽しい事が?」
「そうですね〜。色々あったけど、ルーシュさんとちょっと仲良くなれたのが嬉しかったです!」
私の言葉にキラさん、ちょっと目を丸くする。
なにせ私、怒鳴られっぱなしでしたしね。
でも、男性社会で負けてたまるか!と、ルーシュさんは戦っていたのだろう。そう聞くと、私に対してもつい「男性に負けないように!」っていう気持ちで指導してしまう気持ちも分からんでもない。私のいた世界にだって、そうやって差別する男性もいたし、女性もいた。
そう考えると、私はシーヤではそんなに嫌な思いをした事ないかも?
そう思って、キラさんを見る。
もしかしたら、きっとそんな人もいたかもしれないけど、キラさんが守ってくれてたのかも‥とも思う。
いや、守ってくれてたっけ。
いきなりこっちに来て誘拐された時、異世界人の私を殺そうとした人から守ってくれたし、王都へ行った時もキラさんは、さりげなく守ってくれてた。そう思ったら嬉しいのと、有難いのとで‥、胸がじんわりと温かくなる。
愛称呼びは、控えめに‥
って言われたけど、すみません。ルーシュさん、こればっかりはできないかも。だって、そんなキラさん好きだし‥。
じーっとキラさんを見ながら考え事をしていると、キラさんが私の頭をそっと撫でる。
「ナル?」
「‥キラさんに、いつも助けられているなって、ちょっと思って‥、キラさんありがとうございます」
ヘラっと笑ってそう話すと、キラさんは嬉しそうに微笑んだ。
今は、周囲に人もいないし‥、これくらいなら許される‥よね??思わず周囲を見回すと、キラさんは私を自分の膝の上に乗せた。
「「き、キラさん!!!職場ぁあああ!!!」」
る、ルーシュさんにあらぬ誤解を受けたんですよ!?
夫婦だって知られても、控え目にねって言われたんですよ!?私は、キラさんを見て、
「‥い、家に帰ったら!!!」
赤い顔であろう。
重々承知してます。私はキラさんにそう話すとキラさんは少し不満そうだったけど、そっと隣に座らせて、
「名前も、今みたいに呼んで欲しい」
「よ、呼びますよ、夫婦、だし」
うう、こういうやり取り、未だに照れてしまう。
あれだな、キラさんが格好いいからだな。そんな風に思っていたら、流れるように頬にキスされた。こ、こらぁああ!!!私が周囲を慌てて見回すと、キラさんがクスクスと静かに笑った。
そうして、昼食を片付けたら
いよいよ騎士の養成校まで、竜に乗って飛行である!
私はもちろんルーシュさんと。
青い竜のアビーは、目をキラキラさせて竜の休憩場所へ行くとドスドスと歩いてきて、嬉しそうに翼を動かす。お、おお、迫力あるなぁ。他の竜騎士さんは、クリスさんや、ノーツさん、キラさんと一緒に乗って行く為の準備をして待っていた。
不意にキラさんと目が合って、小さく手を振ってくれて、私も手を振った。
養成校まではほんの15分。
馬だったら30分なのに、やっぱり空の旅は全然違うんだな。全力で飛んだら、10分くらいだっていうし‥。
ルーシュさんは、革のしっかりした手袋を付けて、準備万端である。
「ルーシュ副団長、よろしくお願いします!」
私がビシッと敬礼すると、初めて面白そうに笑ってくれた。
お、おお!!ルーシュさんの笑顔!!
私が目を丸くしていると、ヴァン団長さんがニヤッと笑って、「お、珍しく笑ったな」ってからかうように話すと、途端に表情が消えてヴァン団長さんをジロッとルーシュさんが睨んだ。
あ、嗚呼〜〜〜、せっかくの笑顔が〜〜〜。




