黙して語らない騎士、呼んで欲しい。5
ニルギさんと一緒に行った竜の休憩場所、まさかルーシュさんの竜とは知らずベッタベタに触ってしまった‥。あとで怒られたらどーーしよーー‥。
ちょっと遠い目で、ニマニマ笑うニルギさんと一緒に食堂でご飯を食べた。
「‥ニルギさん、知ってたでしょ?」
「どうだかな〜。まぁ、どっちにしろ明日は竜に乗ることになるんだ。慣れておいたほうがいいだろ」
「やっぱり乗るんですか?!!しかも仕事に行くの??!」
美味しい魚の煮込みを食べつつ、遠い目をした‥。
ニルギさんはニマニマ笑って、
「明日は竜に乗ったナルを写真で撮っておこう!ウルキラも喜ぶぞ」
「‥一人で乗るわけじゃないですよね?!」
「恐らく」
「「恐らく〜〜!!!」」
気が遠くなりそう‥。
散々ニルギさんにからかわれて、執務室へそろっと戻ると書類を山盛りに置かれて遠くを見つめている団長さんと、無言のキラさんが見えた。え、なに、怖い。
思わずそっと閉めようかと思ったら、奥に座っていたフランさんが穏やかに微笑みながら手招きしてくれた。おお、我が執務室の癒しよ!!
「ナルさん、今日はお疲れ様でした。大変だったようで‥」
「ふ、フランさん〜〜〜」
ホワホワと癒し成分が飛んでいるかのようなフランさん。
こうしてみると、私は本当に優しい職場の人達に支えられていたなぁって、痛感する。
と、キラさんが私を不満そうに見つめている。
「‥すまない、助けられなくて」
「いやいや、国交問題になりますし‥。私はいかに職場の人に恵まれてたんだろうって、しみじみと思いましたよ」
団長さんが自分を指差して、
「え?そう〜〜?」
「「ただし団長さんは別です」」
「そんな〜!今日はずっと僕心配してたのに!」
…なんとわざとらしい。
ジトッと見てると、キラさんが私を見て、
「明日は俺が一緒に行く」
「え?キラさん、書類の仕事は??」
「終わらせた。あとの書類は全て団長だ」
えーと、机の上の山のような書類ですね?
団長さんが、書類の山を見て遠くを見つめた。あー‥、キラさん本気を出して書類仕事したんだな。フランさんが、ニコッと笑って、「明日は団長さん頑張りましょうね!」とさらっと釘を刺してる。
ひとまず今日は仕事を終え、明日朝早く騎士団へ出勤だ。
キラさんと一緒に家まで歩いて帰る。
騎士団を出て、街の中を歩いて行くけど‥、
はぁ〜〜〜、一日長かった〜〜〜!!でも、やっとキラさんを堂々と呼べる。そう思ったら、なんかそわそわしてしまう。
よ、呼び捨てとか、しちゃう??
「き、キラ‥‥‥さん!」
「ん?」
「えっと、いや、その‥、よ、呼んでみたくて‥」
くぅっ!!やっぱり呼べない!!
しかもウルキラ団長補佐って呼ばないといけない状況だから、キラさんって呼ぶのさえもなんか照れ臭く感じてしまう。赤い顔になっていると、キラさんがちょっと笑って、
「ナル」
「はい?」
「俺も呼びたかった」
「〜〜〜〜!!キラさん!」
可笑しそうに笑うキラさんに、私はますます顔が赤くなる。‥今日は、キラさんとも仕事が離れてたしなぁ。キラさんもちょっと寂しいとか思ってくれたのかな?
ふと、ニルギさんに明日は竜に乗る‥という話を思い出した。
「キラさん、明日は訓練の後、近くの街を観光するって言ってましたけど‥、竜に乗るんですか?」
「訓練の時だな。街へは流石に無理だからニルギの転移で行く」
「「ぐぅ!!ニルギさんにもからかわれたぁ!!」」
全くうちの騎士団ときたら!!
私がブスッとしてると、キラさんがくすくすと笑う。
「ナル」
「はい?なんですか?」
「明日の分も呼んでおきたい」
ううう〜〜〜!!
キラさんが、当社比2倍で甘い!!周りに人がいない分、余計に甘い!!!
「ど、どうぞ???」
目をウロウロさせてそう話すと、キラさんがニコッと笑って私の名前を耳元で呼ぶんだけど、これ、もうどうしたらいいのかな??顔が真っ赤になってしまった‥。




