黙して語らない騎士は過保護。8
遠征の準備を、フランさんや今回は詰所で待機する騎士さん達と着々と進めていると、あっという間に出発前日になる。
いつもふざけた様子の団長さんも、流石に日増しに疲れの色が見える。
・・っていうか、行く前から疲れていて大丈夫なんだろうか・・。流石に心配になる。
今回はニルギさんも同行するらしく、宿舎に泊まって、明日一緒に行くそうだ。準備していると、詰所で会ってちょっとお喋りする。
「元気か?どれ、ブレスレットを見せてくれるか?」
「あ、はい」
ニルギさんが作ってくれた魔道具のブレスレットを腕をまくって見せると、
「うん、ちゃんと流れてるし、大丈夫。まぁ、1週間は持つな」
「便利ですね〜・・。いいなぁ、魔法使えるって・・」
「・・使えて便利な時もあれば、不便な時もあるな。・・・例えば、今回みたいに駆り出されるとか」
「なるほど!」
私とニルギさんは思わず顔を見合わせて笑ってしまう。強いって、いいなぁ・・とちょっと思ってたけど、自分の意思とは関係なく巻き込まれる事もあるのか・・と、思うと納得した。
「ウルキラは元気か?」
「はい」
「騎士団に入ってから、うちの息子はちっとも顔を出さないからな・・。今回は久々の親子の時間が持てそうだ」
そうニヤっと笑うニルギさんは、キラさんが可愛いんだなって思った。
私は、思い出す間もなかった実家をふと思った・・。
「家族の仲がいいのは羨ましいです。うちは、結構希薄な感じだったんで・・」
そういうと、おやっと私をニルギさんが見る。
「ナルの家もそうだったのか?ウルキラも実家とは疎遠でな・・。まぁ、それもあって俺が育てたんだが・・」
「え?!そうだったんですか?」
「・・・ウルキラは、本当に言葉が足りないからな・・」
はぁっとニルギさんは、ため息をつく。
「・・・ウルキラを頼む・・。あいつは優しいくせに、不器用だから」
「・・はい」
育ての親なのに、キラさんを想って言う顔は、本当の親・・そのものだった。私も笑顔で返した。
「あ、ニルギ〜〜〜!仕事手伝ってくれよ〜〜!!あと、本当に騎士団に住んでよ〜〜!!」
団長さんが、書類を抱えつつ要望と要求をダブルでしてくる・・。
ニルギさんと思わずため息をついて、団長さんを見る。
「・・・あれは、そこそこに相手しておけばいい」
ニルギさんがそう言うので、私は固く誓った。
騎士団は明日遠征に出発・・だからか、いつもより落ち着きがなかった。
訓練場には、明日出かけるであろう騎士さん達に、女の子達が門番さんに差し入れを渡していたり、挨拶をしていた。おお・・・、前日だけど、結構自由な感じなんだな。なんかもっとピリピリしてるのかと思ってた・・。
「ウルキラさん!」
キラさんを呼ぶ女の子の声が聞こえて、私は声のする方を振り向くと、この間見た茶色の髪の可愛い女の子が、キラさんのそばにいて何やら話していた。
なんだか様になっていて、思わずぼんやり見てしまった。
周りに人がたくさんいるのに、フォーカスしたように2人がなんだか嬉しそうに話す姿に、胸が痛んで・・足が遠くへ行こうと、まるで引っ張って行くように動く。
あ、やだな・・。
チクチクも、モヤモヤも・・同時にやってきて、心の中がぐちゃぐちゃになっていく。どんどん歩く速度が速くなって、結局走って寮の中の掃除道具入れに閉じこもってしまう。
・・今日は、遠征前の最後の夕飯なのに、キラさんと約束していたのに、私はどうしても会いたくなくて、フランさんに頼み込んで、仕事を遅くまでさせてもらった。
キラさんが探してたよって、団長さんに言われたけど、曖昧に返事するしかできなかった。




