黙して語らない騎士は過保護。5
ただ一緒にお昼ご飯を食べるだけなのに、私の心臓が本当に大変な事になる所だった・・・。
若干、グッタリしつつ私とキラさんは訓練場の入り口まで歩いて行く。もちろん手を繋いで。ちなみに有無も言わさず手を繋いだよキラさん・・・。言葉ぁ・・。
入り口の手前で、キラさんの手を離そうとしたら、ちょっと引っ張られる。なぜだ。
「き、キラさん・・」
「・・夕方、迎えに行く」
「寮にですか?宿舎まですぐだし、大丈夫ですよ」
「・・・行きたい」
淡い水色の瞳は揺ぐ事なくじっと見る。
・・・わかりました・・決定事項ですね。
「・・・待ってます」
「ああ」
私は照れくさくてたまらないけれど、そう返事をすると、やっと手が離れる。
ちょっと足早に外へ出ようとすると入り口付近に、誰かが立っているのが見えた。
・・女性?見学に来た人かな?
騎士団の訓練場は、地元の人に見学できるよう開放しているので、お目当の騎士さんを見に来たり、差し入れする女の子達がよく来るのだ。
お昼が終わった頃だけど、随分早く来たんだな・・と、女性を見る。
茶色の髪を緩く編み、クリッとした髪と同じ色の瞳で可愛らしかった。はぁ〜こんな可愛い子がきたら、騎士団の人は大喜びだろうなぁ・・なんて思ってしまった。
私は、まぁ・・普通な顔なんで。
そう思っていたら・・、その女性はキラさんの方へ駆けて行って
「ウルキラさん!会いたかったです!」
と、声を掛けるから、思わず足が止まる。
チラッと後ろを見ると、嬉しそうに話しかけて、差し入れだろうか籠を渡していた。・・あ、ファンの方・・かな・・。うん、キラさん・・格好いいもんね・・。ちょっと胸がチクっと痛んだ。
キラさんが無表情で籠を受け取っているのを目の端で見ていたけど、なんだかその姿を見ていたくなくて、私は食堂へ走って行った。別に・・別にいいもんね!!
ちょっと・・胸はチクチクしていたが、私は掃除に打ち込んだ。
おかげでいつもより寮の中が綺麗になった気がする。
あっという間に夕方になって、掃除用具を片付けた私は、窓の外を見る。
訓練場からも、騎士さん達が寮に戻ってくる様子が見えて、キラさんもそろそろ来るかなぁ・・と、ちょっとそわそわしてしまう。
チクチクしたり、そわそわしたり・・、なんというか好きって自分の気持ちを認めても、こんなに落ち着かないなんて思わなかったものだから・・、なんだか複雑だった。
キラさんも、こんな感じなんだろうか・・・。
普段から無口だし、無表情だから考えている事が分かりづらいし、大人だから・・私みたいに落ち着かない・・とかないんだろうなぁ・・。ていうか、落ち着かないキラさん・・想像できない。
そう思ったら、なんか可笑しくなって頬が知らず緩んでしまう。
「ナル」
キラさんの声がして、振り向くと寮の扉を開けてこちらを見ているキラさんが立っていた。
「あ、キラさん、お疲れ様です!」
私はキラさんの方へ駆け寄ると、キラさんが少し嬉しそうに笑う。
キラさんは、指で私の頬をそっと撫でる。
「帰ろう」
「はい」
キラさんはそう言って、私の手を繋ぐ。
広い歩幅は私に合わせて歩いてくれる。・・なんだかそれが嬉しくて、さっきのチクチクした気持ちは、夕方の空に溶けていくようだった。
「空、綺麗ですね」
「ああ」
なんだかくすぐったい気分だったけど、まぁ、いっか・・そう思っていると
「ナルも綺麗だ」
「・・・っ、だから!そういうのは勘弁してくださいぃ!!!」
「でも、そう思った」
キラさんが、淡い水色の瞳でこちらを愛おしそうに見るから、夕方の空みたいに私の顔は真っ赤に染まる。・・甘いキラさんは心臓に悪すぎる!!




