黙して語らない騎士のお仕事。3
剣が真っ直ぐに下りてくる・・
と、右端から剣の切っ先が見えた。
下りてきた剣が右端から出てきた剣に、薙ぎ払われ、思いっきり左側へ飛んでいく。
「え」
声が出た瞬間、スローモーションが終わった。
どさっと尻餅をついて、上を見ると、目の前いっぱいに銀の甲冑が見えた。
その瞬間、助かった・・と思った。
「・・・ナル、下がってろ」
「・・・はい」
静かな声の指示通り、さっと後ろへ下がる。黒フードは驚いて魔法をかけようと構えるが、キラさんは物凄い速さで脇腹を剣の峰で打つと、ボキッと骨の折れる音が聞こえた・・。黒フードは、声もなく、そのままドサリと体が前のめりで倒れた。
キラさんは、倒れているおじさん達の前に手をかざし、
『捕縛』
そう言うと、おじさん達の体の下から、縄みたいな光の束が出てきて、あっという間にグルグル巻きにしてしまう。え、すご・・!思わず目を見張る。
キラさんは、こちらをじっと見て、私の手を握ってそばへ寄せる。
「すまない、遅れた」
って、言ってるけど、めちゃくちゃ汗かいてるし・・。息、切れてる・・。
きっと心配性のキラさんだ・・・。急いで来てくれたんだろうな・・そう思ったら、嬉しいのと、安心したのと、また会えた・・という安堵で、泣けてきた。
「・・・っう・・・」
「・・ナ、ル・・」
キラさんが言葉が全然出ないけど、めちゃめちゃ焦ってるのが気配でわかるけども、もう涙が止められなかった・・。怖かったし・・急展開すぎて、頭も動かない。告白されて、攫われて、殺されそうになるとか・・。
「うぅ〜〜〜〜・・・」
泣き止みたいのに、なんか涙腺が壊れたんだと思う。
と、止まらない・・・。
ボロボロ出てきて、なんとか袖口で拭くけど、間に合わなくて、
涙が頬をどんどん流れていく。
「ナル・・・」
キラさんがちょっと戸惑いつつ、そっと体を抱き寄せてくれた。
甲冑・・硬い。
でも、キラさんの手がポンポンと体を叩いてくれると、ホッとする。
頑張って、なんとか泣き止んで、目をこする。
「・・・キラさん、助けに来てくれてありがとう・・」
なんとか顔を見てお礼を言うと、キラさんは泣きそうな、嬉しそうな瞳をしながら、こっちを見ている。
「良かった・・・」
掠れるような声を聞くと、顔が赤くなる。
頬を撫でてくる指先が優しくて、嬉しくなる。
お互いに、顔が近くなった瞬間・・
「あ、いた〜!ナルさ〜ん、ウルキラ〜〜」
あー・・・なんか聞こえたぞ・・・馴染みのある声が。
そちらを見ると、団長さんが馬に乗ってやって来た。
「いや〜、ナルさんがまさか攫われるなんて思わなかったけど、おかげで保護反対派が一網打尽にできるわ〜。そこに落ちてる2人持っていくから、ちょっとウルキラ見張っててな」
「・・・ああ」
「ナルさんは危ないから、ウルキラから離れないでね。馬持って来させるから、一緒に帰ってね。じゃあね〜」
そう言うと、足早に屋敷の方へ駆けていった。
おお・・なんか団長さんっぽい。
「団長さんが、団長さんしてる・・・」
「・・あれでも仕事はできる」
「キラさんもそういう事、言うんだ・・」
「なぜ・・?」
「いや・・団長さんが聞いたら喜びそうだな〜って・・」
そう言ったら、思い切り顔をしかめたキラさんに思わず笑ってしまった。
やはり嫌いではあるらしい。
その後、他の騎士さん達が馬を持ってやってきた。
捕まえたおじさん達を引き渡すと、私達は先に馬に乗って帰っていった。
疲れ果てた私は馬に乗っているにも関わらず、すっかり船を漕いでしまい、眠ってしまったらしい・・。気が付いたらベッドに寝かされていた私は、朝起きたら隣でキラさんが寝ていて、朝一番に鳴く鶏のごとく叫んだことは想像に難くない。
そして、それを思いっきり笑って見ていた団長さんは、やっぱり許さない。




