黙して語らない騎士のお仕事。1
トントン・・・と、ドアをノックする音が聞こえる。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい、日がすっかり暮れたようで、薄暗い中、私は体を起こす。キラさんかな・・?そう思って、ドアを開けると、誰もいない・・。
「あれ・・・?」
寝ぼけてたのかな?
そう思った途端、足元にポッカリと穴が開く。
「・・・・え・・」
瞬間、穴にものすごい勢いで吸い込まれる。
な、何・・??!!!ぎゅうぎゅうと体が足元からものすごく強い力で引っ張られ、目が回る・・。き、気持ち悪い!!!自分の体が落ちていく感覚に耐えられなくて、目をつむった。
そうしてどれくらいしたのだろう。
ズキッと、体が痛み、そっと目を開ける。
周囲を見ると、薄暗いロウソクが灯った石でできた部屋、そして鉄格子・・。
「えー・・・」
思えば遠くへ来たもんだ・・。まごう事なき牢屋だよ・・。
すぐ目を覚ました・・と思っていたけど、気を失っていたのだろうか、膝を擦りむいていたけれど、血が乾いていた。頭がまだちょっとクラクラする。
「やっと起きたか」
私は鉄格子の向こうにいる黒いフードを被った男がこちらを見ていた事に気付く。クックック・・と、悪者っぽい低い声で笑うので、漫画みたい・・なんて思ってしまう・・。
「まさか本当に騎士団に異界人がいるとはな・・」
「もしかして、魔法で連れてきた感じですか?」
「その通りだ・・・。驚かないんだな」
「おたくと違って、こっちは異世界に来た人間ですよ?今更です・・」
「ほお・・」
黒いフードを被っているいかにも悪者は、少し感心したようだ。
まぁ、感心されてもなぁ・・。
「ふん、後である方がこちらへ来る。それまで大人しくしていろよ」
そう言って、去っていった。典型的な悪者のセリフだな・・。
どこか非現実的で、漫画みたい・・しかコメントが出てこない。けれど密偵がいるって団長さんが言ってたけど、私をここまですぐに連れてくるって・・騎士団、大丈夫なのか?
体を動かすと、腕がズキっと痛むので、手首のボタンを外して腕を見ると、擦り傷ができていた。あーあ、これキラさん見たら心配の限りを尽くすな・・。
手首を見ると、キラさんがかけてくれた魔法の模様が銀色に光っていた。
お昼まで一緒にいたのに、
甘い声で告白してくれたキラさんがいない、
蕩けそうな瞳で見ていたキラさんに、もう会えないかもしれない・・
そう思ったら、こっちへ来てから一度も泣いてないのに、急に不安になって、目に涙が溜まっていく。
「・・・・・・キラさん、早く来て・・」
足を抱えて、涙を流すまいとする。
今は泣きたくない。
悪いやつに、こんな姿見せたくない。
なんとか涙を拭いて、どうにか脱出できないかを考える。
窓はないし、鉄格子・・、見張りは、弱っちいと思ったのか、一人もいない。
鉄格子のそばに近付いて、どうにか削るとか外せる方法・・ないかなぁ・・と注意深く見たり、引っ張ってみる。うーん・・、ビクともしない!!
異界人の特殊な力・・とかあるなら、今こそ発揮する所なのに!
なにか、何か力・・。
こう、ステータスとか、空中に状態が表示されないかな〜と思って、手をかざすが、何も起こらない。うん、多分そういう設定の世界じゃないな。
どこか遠い目をしていると、牢屋の入り口らしき所から、鍵を開けるような音が聞こえる。
まさか、黒フードの「ある方」か?
え、やだ・・会いたくない!どこかに隠れられ・・る場所がない!!
体をせめて隠したい!見えなくなる方法ってないかな・・。
結局、オロオロして私は壁の端っこに体を寄せるしかできなかった・・。
ガチャン!!と、扉が開く音がして、ドカドカと人が入ってくる。
さっきの黒フードの男と、でっぷり太ったヒゲのおじさん、あと護衛の人かな・・ごつい感じの人だった。
そうして太ったヒゲのおじさんは牢屋を一目見るなり、叫んだ。
「異界人がいないじゃないか!!!」
・・・・・え?私、ここにいるけど・・。




