黙して語らない騎士、王都合同訓練!23
翌朝、王都の方も大騒ぎだったらしい・・。
そりゃそうか、騎士団にスパイはいるし・・、文書まで盗まれてたんだ。防衛と攻撃の要にそんな輩がいたら一大事だよね・・。昨夜から、団長さんとニルギさんが転移魔法で手伝いに行っていたらしい・・。
帰ってきたらニルギさんにはお菓子と、団長さんには、何か美味しい物を持っていってあげよう。
朝食は執務室の横の部屋で、キラさんやフランさんと食べて、すぐに仕事を始める。なにせまだ見つかってないかもしれない重要な文書があるかもしれないし!
帰って来る前に、ある程度発見しておきたい・・。
「とはいえ・・団長さん、書類を最近隠す事を覚えましたからね・・」
私が執務室をぐるっと見て、思わず唸るとフランさんがにっこり微笑んで・・、ラフさんの後ろの棚をちょっとずらすと書類が封筒が出てきた!!
「まずここで・・」
ソファーをひっくり返すと、隙間に挟まっている封筒が!!!
「それと、ここ・・」
その後、キラさんのいつも座る椅子の裏をひっくり返すと、封筒がーーーー!!!!!
「はい、これで最後ですね!」
「・・・なんで、フランさん・・」
「昔から、隠す場所は大体同じですからね・・」
・・団長さん、フランさんだけは敵に回したらダメだぞ・・。
思わず心の中で呟いた。
団長さんの隠していた、やらなければいけない書類の中には、やはり重要な文書が入っていて・・、サボりぐせと隠すようになったおかげで、情報が守られるという・・なんというか素直に褒められない状況だけど、とりあえず安心した。でも帰ってきたら、絶対注意するけど。
ラフさんに文書を確認して貰って、転移魔法で帰ってきたニルギさんにチョコチップクッキーを贈呈する代わりに、ルーンさんに書類を直接渡してもらうように頼む。
重要な奴は、サクサク返したい・・。
持っていても怖いし・・。
ぶうぶうと文句を言っていたニルギさんだったが、帰りにお菓子の箱を2つホクホク顔で持って帰ってきた。
「ほら、こっちはナルの分だ。ルーン様からだぞ」
ニルギさんが渡してくれたけど、たまたま執務室へ戻ってきたキラさんがそれを聞いて箱をじっと見る・・。お菓子に罪はない・・。頼む、その目はやめてくれ・・。
執務室一同にお茶菓子として配っておいた・・。
午後になって、ようやく団長さんが萎びたナスみたいな顔になって帰ってきた・・。注意しようと思ってのに、あまりに疲れてたので・・注意は明日にしてあげよう。
キラさんは、オルク団長さんと訓練場で早速訓練をするらしい。
ニルギさんが、面白そうに見に行ったけど・・大丈夫かな。私は訓練場を見てから、団長さんに尋ねる。
「団長さん・・、ニルギさん見に行ったけど、大丈夫ですかね?」
「・・・今日は、オルク団長もようやっと鬱屈した気持ちを振り払える!!って言ってたから、血の雨が降るかも・・」
血の雨・・。
思わず向かいの席のラフさんを見てしまう・・。
ラフさんは、ちょっと遠い目をして、
「・・ほどほどで止めに行く・・」
そういうと、萎びた団長さんが静かに頷いた・・。
夕方、ラフさんと訓練の終了の鐘が鳴ったと同時に訓練場へ向かった。・・終わってないと、多分騎士さん達が死ぬし・・。訓練場へ行くと、オルク団長さんがちょうど終了の号令を掛けた所だった。
「あ、良かった・・時間通りに終わりましたね!」
「・・ああ、そうだな」
ラフさんにそう話しかけると、騎士さんも敬礼して片付ける・・かと思ったら、その場で全員倒れた。
え?
倒れた??
ラフさんを思わず見上げると・・、
「・・オルク団長も普段は優しいが、訓練は別だ。今まで、前団長が緩すぎたくらいだからな・・、まぁ、ちょうどいいかもしれないが・・。今日はニルギ殿もいたからな」
中央を見ると、ニルギさんが、
「なんだ?もう終わりか?」
って、キラさんに話しかけている・・。
恐らく相当の訓練をしたのだろう・・。エリスさんとクリスさんとノーツさんまで倒れてる・・。
誤解は解けたけど、このキツイ訓練で果たして騎士団同士の友情みたいなのは芽生えるのか?私は、心配したが遠くから手を振るキラさんが、とてもいい笑顔なので・・。とりあえず手を振り返した・・。皆さん、お疲れ様でーす。




