黙して語らない騎士、王都合同訓練!13
事務員さんの泊まっている寮の事件は、すぐに調べられたけど、犯人は見つからず・・。
ニルギさんが不審な動きがあったら、すぐに知らせが入るように魔法を張ってくれたらしい。とりあえずホッとしたけれど、王都の事務員さん達の顔が固い・・。
騎士さんや、事務員さんに挨拶しても返事を返してくれるけど・・、よそよそしくて・・、地味にへこむ・・。
今日は王都の騎士さん達と、シーヤの騎士さん達とで合同訓練をして、今度本格的に訓練を始める際には、どんな動きをするかを確認し合っている。
執務室から、キラさんやクリスさん、ノーツさんがエリス副団長さんと話し合いつつ、訓練をしているのを見ている限りは平和なんだけどなぁ・・。
思わず大きなため息が出ると、隣のラフさんが小さく笑う。
「・・珍しいな、気落ちしてる」
「・・それ、キラさんにも言われちゃいました・・」
ちょっと横目で答えると、ラフさんは可笑しそうに笑う。
「ナルさんの笑顔が一番好きな奴だからな」
「・・ちょーっと、恥ずかしいんですが・・」
ラフさんは、クスクス笑いつつ書類を私に渡す。
それを受け取って、確認するとファイルに挟む。
「王都の騎士さん達も、事務員さんも、最初は仲良くできそうだったんですけど・・、やっぱり色々起きすぎて、なんというか見えない壁ができちゃって・・」
「まぁ、そういう感情がお互いどこかあると思って、向き合っていくしかないな・・」
「やっぱり、そういうものなんですか?」
私が口を尖らせると、ラフさんが優しく笑う。
「・・何でも頑張りすぎるからなぁ、ナルさんは。だから、ウルキラが心配するんだろうが」
「・・頑張っているとは思ってないんですよ?」
・・まぁ、もがいている感覚に近いかも。
ラフさんは、「そうか」と小さく笑って、また書類を渡す。
「団長の後ろの本棚の上から3段目に、まだやってない書類があるぞ」
サラッと言うので、聞き逃しそうになった!
パッと団長さんを見ると、「バレた!!」って顔をしてる!!!
「「「「団長さん!!!!」」」」
「えー!!なんで?ミラファ殿!!??」
「・・もう少しで、王都の騎士団が来るだろ・・。早めに終わらせておこう」
砂糖たっぷりのついたドーナツをドンッと机に置いて、
「終わらないと完食させます!!!」
と、真っ青な顔をした団長さんに宣言した。
仕事をしなさーーい!!!
・・そんな一悶着あったけど、仕事がなんとかひと段落して、私はお昼をキラさんと訓練場で食べる為に食堂へ向かっていると、王都の騎士さん達の声が訓練場から聞こえる。
「・・何で、あんな訓練を・・」
「こっちだって必死にやってる・・」
「お前もそう思うだろ?」
・・なんか、不穏な会話が聞こえるんだけど・・。
王都の騎士さんの足音が聞こえて、思わず違う方向へ歩いて行こうとすると、エリス副団長さんがこちらへやってきた。
い、今、このタイミングはまずいかもーーー??!
「・・こ、こんにちは!!」
「こんにちは、お仕事お疲れ様です」
エリス副団長さんの声がすると、ピタッと王都の騎士さん達の声がしなくなって、ちょっとホッとした。糸目のエリス副団長さんは、静かに私を見て・・、そして訓練場を見るので・・何だかドキドキしてしまう。
「・・色々、お騒がせします」
「い、いえいえ??!」
なんか、声が裏返ってしまったんだけど・・。
ちょっと顔を赤くしつつ、「食堂に行くなら一緒に・・」と、言ってくれたので一緒に歩いていく。
「ナルさんは、この騎士団はどう思っていますか?」
「へ?ここですか・・、なんかのんびりしてるけど、皆、街とか人とかを守りたい!っていう気持ちが格好いいなって思ってます!!あ、王都の騎士さんも格好いいと思いますよ!お城で見たオルク団長さんとの試合、すごく格好よかったです!!騎士さんって、みんな素敵です!!!」
キャンプの時でも、イベントの時でも、いつでも騎士さん達は明るくて、でも真面目だし。オルク団長さんもお城で会った時、優しかったしなぁ・・。ニコッと笑うと、エリス副団長も静かに笑って・・、
「では、期待に添えられるよう更に精進いたします」
そう言って、スッと腰を屈めて礼をするのであまりの格好よさにドキドキしてしまった!!そんな事をされたのが初めてだったので、顔が赤くなってしまって・・キラさんが風邪では?!と、心配してくれた。すみません・・そっちでないやつです・・。




