黙して語らない騎士、王都合同訓練!12
王都の騎士さんにお礼を言って、一緒に食堂まで歩いていく。
と、エリス副団長さんが訓練場の方からこちらへ歩いてくる。ちょっと驚いた顔をしつつも、微笑んでくれたので・・
「おはようございます!」
もちろん挨拶しますとも!エリス副団長さんも、挨拶してくれた。
一緒に王都の騎士さんと、副団長さん、私で食堂まで歩いていくと、私を見て糸目だけど、エリス副団長さんが何だか嬉しそうに見ている。
「・・ナルさんは、お噂通り人の心を柔らかくするんですね」
「へ?そんな噂があるんですか?」
そう言うと、面白そうにエリス副団長さんが笑う。
「・・昨日の今日で、うちの騎士が手伝ったのでしょう?そうだと思いますが・・」
あ、ああー・・、そうですね。昨日は色々ありましたね。
ちょっと頷きつつ・・、
「・・できれば、同じ騎士さん同士仲良く仕事が出来たら嬉しいなぁ・・とは思いますね」
「そうですか」
「あと、以前オルク団長さんに会った時すごくお世話になったんで・・、うちの団長さんも一緒に訓練した時、すごく素敵だったって言ってました!」
そう話すと、王都の騎士さんが、
「そうなんですか!?」
って嬉しそうに食いついた。・・やっぱり王都の騎士団でも人気なんだなぁ〜。エリス副団長さんもちょっと嬉しそうに微笑んで・・、
「うちの団長は、情に厚い人でして・・」
って、語り出すので・・、これは王都の騎士団、団長愛がすごいなぁって思った。・・うちの団長さんはなぁ・・書類とかお仕事がなぁ・・。そんな事を思いつつ、両脇から食堂へ着くまで、オルク団長さんへの迸る愛を語られた私だった。
そうして、あっという間に一週間が経ち・・、来週には合同訓練が本格化するぞ!!と、なったある日・・、
王都の事務員さん達が泊まる寮に、今度は泥棒が入った。
朝はいつも通りだったのに、昼の休憩で私物を取りに戻った事務員さんが気付いて、慌てて執務室へ駆け込んできたのだ。
団長さんはすぐに紛失物がないかを確認してもらうと、一旦、フランさんに街の宿を手配して貰って、そこに一時滞在してもらう事にした。
「・・鍵は、各自掛けてあったのに・・」
事務員さん達が使う部屋で、仕事をするものの・・、ショックで元気を無くしている事務員さんの背中をそっと撫でる。ここの所、何もなかったから・・私もショックだった。
しかも今回は、王都の事務員さんだけ狙っての泥棒だ。
幸い取られた物はなかったらしいが、やっぱり怖いし不気味だ。
鍵だって掛けてあったし、管理していた人も何にも異常はなかった・・と言っていた。
せっかくいい感じに仲良くなれてきたと思ったのに・・。
こんな事が起きると、またいい感情がわかないよね・・、お昼はキラさんと訓練場で食べようって約束しておいて本当によかった・・。ため息をつきつつ、食堂から受け取ったお昼ご飯を持って訓練場へ向かう。
「ナル」
キラさんの呼ぶ声にハッとして、周囲を見ると私の後ろからキラさんが駆けてきた。
「あれ?訓練場にいたんじゃなかったんですか?」
「ああ・・、さっき団長に呼ばれて・・」
「・・お疲れ様です」
私がそう言うと、キラさんが私を見つめて、
「・・ナル、休めているか?」
「え、いつも働きすぎなキラさんに言われちゃった・・。私、疲れて見えます??」
静かにキラさんが頷く。
そ、そんなにか・・。
一緒に訓練場の木陰まで歩いていきつつ、
「疲れているっていうか、どうにも出来ないんだけど・・どうにかならないかな・・って、そんな事を考えちゃって・・」
「そうか・・」
静かに頷いたキラさんは、ちょっと葉の色が変わってきた芝生の上に座ると私も隣に座る。と、キラさんは自分の太ももの上をポンと叩く。ん・・・?なに・・??
「え・・な、んでしょう?」
「以前、ナルに膝の上に頭をのせて貰ったら落ち着いた・・」
「いや、恥ずか・・・」
って言いかけた・・、私の体は、あっという間に横倒しされる。
・・遠慮は一切無視されたようだ。
キラさんに膝枕されて、慌てて顔を見上げると、優しそうな瞳でこちらを見つめるキラさん。
「ナル・・」
何かを言うわけではないのに、キラさんの雄弁な瞳がこちらをじっと見るので、顔が赤くなってしまう・・。キラさんが優しく頭を撫でてくれると、なるほど確かに体の力が抜ける・・。ホッとした顔をすると、キラさんが嬉しそうに笑った。




