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黙して語らない騎士に花束を。  作者: のん
黙して語らない騎士と異世界人の日常編。
263/566

黙して語らない騎士、王都合同訓練。2


夕方、キラさんと一緒に家に帰る予定だったが、団長さん達と会議があるので私は執務室の横でキラさんの報告書を読みつつ時間を潰す事にした。


ちょっとワクワクして、ファイルを開くと、

少しカビ臭いけど、綺麗なキラさんの文字が確かにそこにあった。



『3月5日 シーヤ騎士団入団。騎士として活躍できるように励みます』


おお・・、シンプルだ・・。

報告書って、もっと色々書くんじゃないのか?

下の団長の欄に、


『頑張れ』


ってしか書いてないから、そんなものなのか?

次のページをめくると、訓練の内容と自分がこなした数が書いてある・・。あー・・、キラさんっぽい。ちなみに団長さんの欄には、


『適当に励め』


・・この団長さんやる気あるのか?

なんかキラさん・・、このコメントでやる気が出たのだろうか・・。私が首を傾げていると、ニルギさんがいつの間にか扉の前に立っていた。


「ニルギさん・・、いつの間に」

「ナルが一人で百面相している間だな」


なんと、乙女の顔をじっと見ているとは失礼な・・。

私がちょっと不満げに見ると、可笑しそうに笑って私の読んでいる報告書を覗き込む。


「・・なんだ報告書か」

「・・何を見てたと思ったんですか・・」


あきれるように話すと、ニヤッと笑うニルギさん・・。



「キラさんの新人の頃の報告書を読んでいたんです。なんか面白い事、書いてないかな〜とか、失敗談とかないかなぁとか・・」

「なるほど・・。どちらかというと、団長の欄の方が面白いかもしれん」


「団長さん・・?」



そう言われて、ニルギさんがちょっとページをめくる。

指差すページを読むと、キラさんが魔物を討伐した事が書いてある。・・大変シンプルに『大蜘蛛倒す』に対し、団長さんの欄には・・


『お前、強いのは分かったけどな?いきなり一人で突っ込むな!危なねぇからな!?毎回言ってるけど、一言いえ!!』


・・・なんというか、すごく分かります・・団長さん!

つい、静かに頷いてしまった・・。

ニルギさんは、またちょっとページをパラパラめくって・・、指差す。



『一言いって、戦った』


に、対する団長さんの欄には・・、


『お前、陣形とか隊形とかちっとは気にしろ!!一人で戦ってるんじゃねーんだぞ!!あと一言が一言すぎて理解するまでに時間が掛かるって事も念頭に入れて早めに言え!!!』


あ、ああ〜・・・・これもすごく分かります!団長さん!!

でも、なんだろう・・この団長さんって、今の団長さんじゃないはずなのに・・反応が似てる・・。


「なんか・・、ラトル団長さんに似てますね、この団長さん」


私が思わずニルギさんにそういうと、ニヤニヤして・・



「そりゃ、あいつの父親だしな」

「え!!?団長さんのお父さんも、団長さんだったんですか!?」


「ちょうどウルキラが騎士団に入団した時にな。ラトルと一緒によく怒鳴られていたな・・。ウルキラはあの通り、涼しい顔をしていたが・・」



すっごい想像できる・・。

はぁ〜・・でも、親子で騎士団長なんてすごいな・・。

ニルギさんは、報告書をパラパラと懐かしそうに見ている。・・そっか、ニルギさんはキラさんの新人時代も知っているんだなぁ・・。


「ウルキラがドンドン強くなるんだが、意思疎通が難しくてなぁ・・、ラトルの親父によく何故か俺が怒られた・・。まぁ、ラトルとウルキラはいつの間にか仲良くなってたがな・・」


「なんとなく想像つきます。今、団長さんのお父さんは?」

「ラトルが団長になる少し前に、足を怪我してな。あっさり引退して・・、あちこち遊び歩いてる」


・・そんな所も、団長さんに似ている。

ニルギさんは、ちょっと優しく笑いながら報告書を見つめる。



「・・ラトルも、ウルキラも、いつの間にか随分と成長したな・・」



懐かしむように、愛おしむように報告書をめくって、私に笑いかけるニルギさんは、お父さんの顔だった。



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