黙して語らない騎士、海外出張です。25
夕食を食べて、一人ベッドの上でゴロゴロしていると、キラさんは戻ってくるなり私の部屋へやってきた。
「キラさん、お疲れ様です」
私が側へ行くと、無言で抱きしめられた。
・・うん、相変わらず無言である。
背中を撫でると、ホッと小さなため息が聞こえる。
・・色々と忙しかったよね。安心して貰えるなら良かったです。と、キラさんの肩越しに自分のカバンが見えて、買い物した物を思い出す。
「キラさん、ちょっと見て貰いたい物が・・」
「・・・ん・・」
ちょっと腕を緩めたけど、離れる気がないらしい・・。
腰に腕を回したままのキラさんに苦笑しつつ、キラさんを引きずるようにカバンの所まで歩いていく。小さな包みをカバンから出して、キラさんに手渡す。
・・プレゼント渡すのって、なんか照れるなぁ。
キラさん、私にしょっちゅうするけど、いつもこんな感じなのかな。包みを受け取ったキラさんは、そっと開けて中身を見る。
「あ、あのですね・・。キラさんが私の名前を書いて欲しいとか言ってたじゃないですか・・、か、体にはまずいと思って・・。あと、いつも私が貰ってばかりなので、その、たまには・・と思ってですね・・」
なんか言い訳のように話しながら、キラさんの顔を見る。
内側に私の名前が入っているのを見て、キラさんの表情筋が動いた。すごく・・すごく嬉しそうに笑って、私をギュッとまた抱きしめた。
「・・ナル、好きだ」
耳元で、嬉しそうに囁くキラさん。
・・これは相当嬉しそうだな。私はちょっと顔が赤いんで、そろそろ離して貰えると嬉しいなぁー。そう思っていると、キラさんの鼻先が私の鼻先を掠めたと思うと、そのままキスされた。
・・今回、なんかずっとキスされてる気がする・・。
そう思ったら、なんか恥ずかしいやら、照れ臭いやらで・・、腕の中から逃げ出したいんだけど。キラさんはそんな事を許さないとばかりに、抱きしめる。
「・・キラさん、なんか恥ずかしくて無理です・・。いっぱいいっぱいです」
「・・大丈夫だ。このまま腕の中にいてくれ」
「ん〜〜・・、そういう問題かな??」
いや、そうじゃなくてですね・・って、言おうとしたけど、そのままベッドまで連れていかれて、嬉しそうに私を見つめるキラさんに愛でられるだけ愛でられたのだった・・。
翌日。
快晴の中、騎士さん達と船に乗り込む。
セトリさんとは、別れる際に熱い抱擁をされたんだけど・・、美人さんの抱擁ってすごいパンチ力あるね・・。顔が赤くなってしまった・・。
目の端っこで、フランさんとセトリさんがちょっと照れ臭そうに話をしていたので、またも一人キュンとした。・・横でキラさんが、私を不思議そうに見ていたけど、あとで訳を話すね。
「またぜひいらして下さいね〜〜!!!」
セトリさんや、フランさんのお兄さんのユーリクさんが桟橋から手を振る。船の汽笛の音がして、なんとも情緒ある別れ方だなぁって思った。
私も手を見えなくなるまで振って・・遠くになったソマニを、キラさんと一緒に眺める。
「は〜〜・・、ソマニ、素敵すぎた・・」
「・・いつでも異動するぞ」
「・・うーん、キラさん私中心すぎでは・・」
ちらっと横を見ると、白い顔をした団長さんが私達を見ている。
「オネガイ、ナルサン、イカナイデ・・・」
片言になってるけど、大丈夫?
横ではニルギさんがお菓子の袋から、真っ青なクリームがついたドーナツを出して頬張っている。
「俺もいつでもソマニに行っていいぞ〜。お菓子も美味しいしなぁ。海で遊ぶのも面白かったし!」
めちゃくちゃ満喫してましたもんね。
ニルギさんの横に立っているフランさんはニコニコ笑いつつ・・、
「そうですね〜。僕もしょっちゅう帰る事になりそうですし、皆さんで行くというのも楽しそうですよね〜」
「やめてぇえええええ!!!!お願い!仕事頑張るからぁあああああ!!!!」
団長さんの悲痛な叫びが海の上で、波音と共に聞こえる・・・。
私とキラさんが可笑しそうに笑うと、キラさんの手首にキラッとバングルが光って見えて・・、ちょっと照れ臭くなって目をそっと逸らすと、キラさんが手を繋いできた。
・・いや、人前・・と、思ったけど、まぁ、南の国からの帰り道くらいいいか・・。そう思って、私もキラさんの手をそっと握り返した。




