黙して語らない騎士は心配性。10
今日の籠に入ったお昼は、燻製されたお肉のサンドイッチだった。
隣に座ったキラさんに、自然に・・自然に・・と自分を律しながらサンドイッチの包みを手渡した私、すごいと思わない?私は思う。強く思う。若干、目は泳いでたけど。
「・・今日も美味しいですね」
「そうだな」
中庭を見ながらじゃないと、食べられない。
もう一つサンドイッチがあるが、隣に座るキラさんの気配だけで、お腹いっぱいだ・・。
あとで食べようかな・・その前に果物食べようかな。籠の中を見ると、つまんで食べられるマスカットみたいな果物が入っていた。
「サンドイッチ・・」
「はい?」
キラさんの声に、顔を上げる。
「食べないのか・・?」
「あ、ああ・・。ちょっとお腹空いてなくて・・。キラさん良かったら食べます?」
「ああ」
私の分を渡すと、キラさんは黙々とあっという間に食べてしまった。
「・・キラさんは、本当によく食べますね」
「ナルは、もう少し食べた方がいい」
「・・ちょっと、深い理由がありまして・・」
「理由?」
キラさんが、じっと私を見る。
うっ、目が合ってしまった・・・。
顔がみるみる赤くなるのが自分でもわかる。
「え、と・・・」
普段は口が回るのに、言葉が全然出てこない。
そんな私を見て、キラさんが柔らかく笑う。・・・少しだけね。
そんな顔を見たら、なんて言っていいのか、もうわからなくなる・・。どうしよう、とりあえずここから逃げたい!
・・・そうだ、うん、お腹痛いとか言って、逃げよう。
そう思ってたのに、キラさんの手が魔法をかけてくれた手首を掴む。
「え」
「行くな」
キラさんが、じっとこちらを見る。
え、なんで逃げようとしたのわかったの・・???
浮かせようとした腰を、結局ペタッと下ろすと、キラさんはそっと手首を離す。
「・・ここにいて欲しい」
水色の瞳が熱を持ってこっちを見ている。
思わず私もその瞳を見つめ返す。
「・・やっと、こっちを見た」
キラさんがそんな事言うから、胸が痛くなるくらい鳴る。
そんな事言われたら、困るんだけど・・。主に心臓が。
「見てます・・・よ?」
「前みたいに目を合わせてくれない」
「・・・え、っと、気のせいかと思います・・よ?」
うぅ、そう言われると目を逸らしにくくなるじゃん!!!我慢大会みたいなことになってません?!両者見つめ合いつつ、勝負を決めるのか?いや、本当・・勘弁して!って、思っていると・・
「・・・寂しい」
キラさんのポツリと呟いた一言に、思いっきり心臓潰された。
・・・ダメ・・。そういうの本当、ずるい・・・。キラさん、イケメンなんだよ?知ってた!?ちょっと儚い感じのする・・けど、男らしい美形なんだよ?心臓に悪いくらい格好いいって思ってるんだよ?!
顔が真っ赤だろうな・・、そう思ったら、キラさんの目元も薄っすら赤い事に気付く。
その事実に、体が強張る。
「ナル」
「はい・・」
静かなキラさんの声が頭に響く。
「好きだ」
淡い水色の瞳が、私を捕まえた。
ああ・・、もう降参です。逃げるなんて無理だった・・。
はい、認めます・・。
自分の気持ちを認めます。全面降伏です。
「・・・・私、も、です・・」
真っ赤であろう・・私は声を絞り出して言った。
言ったから、もういいよね!?目を思いっきり逸らした。
だって、もう心臓はキラさんと一緒に馬で全力疾走した時と同じくらいの速さだ。
「ナル」
甘い声がこちらを呼ぶ。
目をそっと見ると、そんな目もできるんだ・・ってくらい、甘い、蕩けそうな水色の瞳が、どんどん近付いてくる。
やっぱりずっと見てたら、心臓がもたない・・。
そう思って目を瞑ると、静かにキラさんがキスしてくる。
心臓はもう、うるさいくらいに騒いでいた。




