黙して語らない騎士、海外出張です。19
散々海で遊んだニルギさん。
大変満足したのか、笑顔である。良かったよ・・楽しんで貰えて。
夕方の海を二人でぼんやり座って見つめていると、あと少しで帰るのか・・と、ちょっと残念な気持ちになる。
「シーヤも綺麗だけど、ソマニも綺麗だし・・、もうちょっといたい・・」
「いいんじゃないか?帰らなくても。ラトルが泣きそうだが」
「・・多分、書類の前で号泣してますね」
見える・・。
見えるぞ、大量の書類と、遠い目で見ているライ君の姿が・・。
あかん、早めに帰るからね!!ライ君!!!
ニルギさんは、ちょっと可笑しそうに笑うと・・、ゆっくり立ち上がる。
「まぁ、またウルキラと来ればいいさ。ほら、旦那が迎えに来たぞ」
「・・へ?」
後ろを振り返ると、キラさんがこちらへやって来るのが見えた。
「・・ナルの為に、仕事を終わらせてきたんだろう・・我が息子ながら健気だな・・」
しみじみ言われると、照れるんですが・・。
ちょっと目を逸らしつつも、「そうですね」って同意するとニルギさんは面白そうに笑った。
「ナル!」
嬉しそうな顔をして、そばへやってきたキラさん。
・・忙しいのに、ありがとう。
でも、めちゃくちゃキラキラしてこちらを見るので、若干恥ずかしいです・・。
「お仕事お疲れ様です。この後は大丈夫なんですか?」
「・・・あと一時間したら、首相と会食になった・・。ニルギ、出席してくれ」
「・・まだ老骨に鞭を打てと・・?」
老骨・・・・。
ニルギさんには縁のない言葉だな。
普通に20代に見えるのに・・。
キラさんは、ちょっと呆れたようにニルギさんを見つめて・・、
「会食後のデザートは、最近話題のパティスリーによるものらしい」
「仕方ない・・。自警団に戻って着替えてくるか」
変わり身はっや!!!
ウキウキした顔で、自警団に戻ろうとして・・、私を振り返ってみると、
「あ、戻しておくか」
「・・へ?」
ぱちっと指を鳴らすと、またも私の体が淡く光る。
体を見ると、元の姿に戻ってる!!
・・ニルギさん、凄すぎだな!?私が、自分の体をニルギさんを交互に見ると、ニヤッと笑って・・、
「せいぜい一時間の逢瀬を楽しめ」
そういって、自警団へ戻っていった・・。
なんというか、めちゃくちゃ楽しんでいるな・・ニルギさん・・。
キラさんを見上げると、嬉しそうに私を見つめている。
「・・散歩しながら、自警団に戻りますか?」
「・・ああ」
そう言うと、キラさんは私の手をそっと握ったかと思うと、ゆっくり手を絡める。お、おう・・、ちょっとこれは恥ずかしいな?顔を赤くすると、キラさんは表情筋が動いて、嬉しそうに微笑む。
「・・ナル、可愛い・・」
「あの、ちょっと・・、恥ずかしいので、今は控えて頂くと・・」
「もっと、一緒に居られればいいんだが・・」
ちょっと遠くを見つめる瞳になるキラさん・・。
そうだよねー・・、今回は、交渉も話し合いも、犯人検挙のための見回りも、キラさんがトップだからずっと仕事だもんね・・。
「・・今度、ゆっくり遊びにきましょう。キラさんとのんびり遊びたいです・・」
「・・ナル・・」
キラさんが、嬉しそうに見つめて、
ちょっと顔を寄せてくる。
ちょ、ちょっと、あの、ここは外でしてね?!
人の目がありましてですね・・・!!?
思わず視線をウロウロさせていると、キラさんは小さく笑って頬にキスする。
「・・皆、夕日を見てる」
「う、うーん・・、それはどうかなぁ?!」
キラさんは、ぎゅっと手を握って私の体を自分の方へ引き寄せる。
夕日を見ている人もいるだろうけど、海を見ている人もいる訳で・・、そうなれば私達も見る人も・・いる・・か?思わず首を傾げて考えていると、サッとキラさんはキスする。
「キラさん!!!」
南の島で浮かれているのは、どうも私だけではないらしい・・。
キラさんは、いつもより甘い顔で私を見ている・・。うう、いつもの倍キラキラしてません?照れ臭いわ、恥ずかしいわ・・、気持ちを誤魔化すように手を引っ張って、先に歩き出す私を後ろから小さく笑ってキラさんがついてきた。




