黙して語らない騎士、海外出張です。16
私とセトリさんが助け出された夜、
キラさんとニルギさん、フランさん達は、一斉摘発した武器を違法に輸出した人達を逮捕し、その後すぐに主犯格を王都に護送。他の人達は調書を取りつつ、関係していた人達を更に探って逮捕・・と、大忙しだったらしい。
らしいというのはですね・・、
私はというと・・、薬を盛られたんで、眠気がすごくて・・爆睡してました。お昼近くまで。
鳥の鳴き声と、海の音がする。
「・・・ん・・・」
ふっと目を開けると、すっかりお日様が高い位置にいる・・。
あ、すっごい寝ちゃったのか・・。
ニルギさんに部屋に休む前に
「薬を盛られているから、無理せずとにかく寝ておけ」
って言われたけど・・、本当だったなぁ・・。ちょっと寝ぼけている頭を動かすべく、頭を動かすと・・隣にキラさんが寝ている。
あれ〜〜・・・・・?
私、家に帰ってないよね・・??
まじまじと見ると、キラさんは普通に昨日着ていた服を着ている・・。仮眠・・かな?
昨日の夜から、ずっと働き通しだったんだろうな。
ちょっと疲れた顔のキラさんの髪をそっと撫でると、綺麗な銀髪はサラサラと指の間を流れていく。
「・・・ナル・・」
寝言なのか、目を瞑ったまま静かに呟く。
寝ていても、私を呼ぶキラさんが可愛くて・・、ちょっと周囲を見てから、そっと頬にキスした。
「・・お疲れ様です・・」
小さく笑って、また髪を撫でると・・
いきなりキラさんに抱きつかれた。
「ちょ・・!!!キラさん!!起きてたんですか?!」
「・・・寝てた」
「じゃ、なんで今・・こんな・・」
「・・・今、起きた」
そういうんと違う!!!!
赤い顔をして、ギュッと抱きしめているキラさんを睨み上げると、キラさんは嬉しそうにニコニコ笑う。
「・・明日は、少し時間ができそうだ・・」
「あ、そうなんですか?海とか行けそうですか?」
「・・少しなら・・」
少しでも嬉しい!
せっかく綺麗なソマニに来ているのに、キラさんとはええと・・まぁ、ちょっとしたヤキモチで楽しく過ごせないですし。
「・・じゃあ、楽しみにしてます」
「・・・ああ」
と、ドアをノックする音が聞こえる。
「セトリです〜、ナルさん、起きましたか?」
ああ、セトリさんだ。
キラさんが体を起こしてくれて、返事をしようとする。
と、チュッとキラさんがキスしたかと思うと、ドアの方へ返事して歩いていく。
ちょ、ちょちょちょっとキラさん!!??な、流れるような一連の動作・・心臓に悪いのですが・・。赤い顔を誤魔化すように毛布を口元まで引き上げて、部屋へ入ってくるセトリさんを出迎えた・・。
昨日、同じように捕まっていたはずなのに、スッキリした顔のセトリさんはニコニコ笑って、本日もバッチリ綺麗にキメて部屋へカツカツとヒールの音を鳴らして入ってくる。
「おはようございます!!体調はもう大丈夫ですか?」
「おはようございます、はい、お陰様で・・セトリさんは、大丈夫なんですか?」
「久々にしっかり寝ましたからね!!今、逆に体調が良いくらいです!!!」
・・・寝て欲しい・・。
ちゃんとしたベッドで寝て欲しい・・・。
薬で寝かされて、よく寝た!と、豪語しちゃうセトリさんの豪胆さは嫌いじゃないけど、心配です・・。
「それよりも、私の軽率な行動でナルさんを事件に巻き込んでしまって、申し訳ありません・・。もっと早く、フランさんが首相の息子だと伝えておけば・・」
「いえいえ、大丈夫ですよ・・。そこは、もうお互い巻き込まれちゃったし・・、まぁ、夫が・・、た、助けてくれましたし」
ちょっとキラさんを照れつつ見ると、「夫」と言われて嬉しそうに微笑む。
うう、めちゃくちゃ嬉しそうだな・・。
「夫・・・?」
「あ、はい・・、伝え損ねてましたが、ウルキラは私の夫でして・・」
もう一年も経つのに、夫って呼ぶのは照れるし・・、人に言うのも照れる・・。赤い顔でそう言うと、セトリさんは目を丸くてして、私とキラさんを交互に見る。
「ええええええーーーー!!!!!すみません!!気付かなくて!!!」
・・いえ、主に腕を組まれている時点で言わなかったキラさんが悪い訳で・・。そう思ったら、なんかまた腹が立ってきて、こっちを嬉しそうに見るキラさんから、そっと目を逸らした・・。私、結構ヤキモチ妬きなんだな・・って、思いつつ。




