黙して語らない騎士は心配性。9
キラさんの一挙一動に、オタオタしている・・。
どうしたらいいんだ・・。
今日の朝食もうまく話せなかった・・・。
はぁ・・と、ため息をつきながら、今日は宿舎の掃除をしていた。
キラさん、ほとんど汚さないから・・、すぐ終わるんだよね。最初は不慣れなために、時間が掛かってたけど、大分上達したな私。そう、自分を褒めた。
「ああ、ナルさ〜ん、すみませんがキラさんにこれ、持っていってもらえます〜?」
「あ、フランさん」
のんびり〜とした口調で、籠を渡される。
うん、今、キラさんに会いたくない。
・・・でも、フランさんに言われれば、お仕事だし断れない。
「これは・・・?」
「お昼ご飯です〜。キラさん、今日休みなのに根詰めて訓練してて・・、ナルさん休憩させて来てください」
「え?!私がですか?!」
「ナルさんくらいじゃないですか?止められるの〜」
「そんな闘牛士じゃないんだから・・・」
どこか遠い目になった私は悪くない・・。
でも、なんでそんなに訓練してるんだろ・・?何かあったのかな・・・??
「キラさん、どこにいるんですか?」
「訓練場です〜。じゃあ、よろしく〜」
そう言って、フランさんは足早に去っていく。本当にいつも忙しそうだなぁ・・。
私はもう一度ため息をついて、訓練場まで歩いていく。
レンガでできた訓練場は、中庭を通っていくと、相変わらず爽やかな風が吹いてくる。今日はちらほらと、訓練場に見学のお客さんが来ているのも見える。
お目当の騎士さんに、きゃー!と、声をかける女の子達。
照れながら練習してる騎士さんなんかもいて、ちょっと見てて和む。・・・うん、人の恋路は見ていて気が楽だ。
今日は休みだからか、キラさんは訓練場の端で素振りをしてた。
ええ〜〜・・休みの日まで練習とかストイック過ぎない?私なら全力でダラける。何もしたくない。
キラさんにどう声を掛けようかな・・と、思って訓練場を囲ってある柵へ近付いていこうとすると、他の騎士さん達に声をかけられる。
「ナルさ〜ん、お疲れっす〜」
「お疲れ様です〜。訓練、毎日大変そうですね」
「いや〜、ナルさんが来てからしっかり休めるようになったんで、大分楽になりました!」
「え?そうなんですか??」
「・・・ウルキラ副団長・・、スパルタで・・」
「あ、ああ・・・・」
どこか遠い目をした騎士さんの濁した言葉・・、はい、理解しました。
「しっかり休憩が取れるよう、ずっといてください!!」
「あ、は〜い・・・・」
やめてぇ・・、そんな守り神みたいに拝まないで・・。横を通り過ぎつつ、他の騎士さん達が拝んでいく姿に、意識が飛びそうになる・・。
「ナル」
聞き覚えのある、静かな低い声がする。
ドキっと、心臓が跳ねるけど、平常心・・。私はゆっくり振り返る・・。
「キラさん・・、お昼持って来たので、休憩しましょう?」
キラさんは静かにうなずき、いつもの木陰を指差すと、手を洗いに行った。いやだから、言葉ぁああ!!!後ろで一連の様子を見ていた騎士さん達が、静かに騒ついている。「休む・・?」「ウルキラさんが・・?」「微笑んでた?」と、声が聞こえた気がしたけど、無視する事にした。
木陰に座って、お弁当の中身を確認する。
・・良かった、ピクルスは入っていない。
思いっきり、胸をなでおろした・・・。
手洗い場を見ると、顔も洗っているキラさんが見えた。
そうだよね〜・・・めっちゃ汗かいてたし・・。
あんなに訓練しないと、続けられない騎士さんのお仕事って大変だよね。私は、タオルでゴシゴシ顔を拭いてるキラさんを、ぼやっと眺めていた。タオルを首にかけて、キラさんがこちらを見る。
やべ・・、目が合うと、照れくさいのでさっと逸らした。
あ・・、わざとらしかったかな???うー・・、でも居たたまれなくなっちゃうんだよね・・。
私は自然な感じで、訓練場を見ながらキラさんが来るのを待っていた。
サクサクとキラさんが芝生を歩いて、こちらへ来る音を聞くたびに、顔が赤くなっていく気がする。
う、うぅ〜・・・。今日のお昼も味がするんだろうか。
大分混乱した頭で、ちらっと思った・・。




