黙して語らない騎士、海外出張です。14
キラさんのブカブカのシャツを着て、急いでセトリさんの方へ駆け寄る。
キラさんは、どこから持ってきた大きな布を渡してくれたので、それで私がセトリさんの体を包む。・・キラさん、ソマニの浜辺に行ったら倒れちゃうんじゃないかな・・。
その間にキラさんは、先ほど倒した人達を魔法の縄で縛り上げる。
甲板の端に捕まえた人達を置きつつ・・、
「こっちへ船を寄越すよう、ニルギに知らせた」
「ありがとうございます・・、キラさん、ここって・・」
私は船の甲板に出て、キラさんに近付いて尋ねると
ちょっと未だに視線をそらしたままのキラさんが、
「ソマニの沖だ・・。武器の違法取引の一味が、フランといたお前達を狙って誘拐した」
「え!!?」
いつの間に??
確かに私達とフランさんは一緒にいたけど・・。
「・・フランは、ここでは有名人だからな・・、犯人達も保険のつもりで誘拐したようだ」
「そんなに有名人なんだ」
「・・聞いてないのか?ここの首相の息子だ」
なんだってーーーーーー????!!!
目を丸くして、キラさんを見ると・・、ちょっと面白そうに笑う。
「・・聞いてない・・、そんなすごい情報聞いてない・・!!!」
いや知っていても、何もできませんけどね?!
と、また花火がドンと、勢いよく上がった。
「・・お祭りって、明日からじゃなかったっけ・・?」
「花火は、今日から上げるらしい・・」
「あ、良かった・・。一日経ってるのかと思いました・・。あ、武器!!武器はどうなったんですか?」
キラさんに詰め寄るように聞くと、また顔を赤くして、慌てて目を逸らす。
「別の場所に・・。そこはもう押さえた。ナル達の場所だけが分からなくて・・、」
そう言って、ゆっくり私を見つめると、そっと私の手を握った。
白い・・淡い光が手の甲で、キラさんの名前を光らせている。
「・・・呼んでくれたから、ここへ来られた・・」
「そっか・・、これのおかげで・・。キラさんの名前が見えて、私も安心しました。ありがとうございます」
ヘラっと笑ってキラさんを見上げると、
キラさんは、ちょっと私の体を確かめるように腕を回す。
「・・良かった・・」
ホッとした声が聞こえて、
私も安心した。
キラさんの背中を撫でると、キラさんは私を見つめるけど・・、やはり照れ臭いらしい・・。すぐに目を逸らされた。
・・なんか、いつもジッと見つめられるのに、これは面白いな?
私はちょっとニヤニヤして、キラさんをここぞとばかりにジロジロと見た。
「キラさ〜ん、なんでこっち見ないんですか?」
「・・・・ナル・・」
「いつもこっち見るのにな〜?寂しいな〜」
「・・・その、」
「キラさ〜ん、ほらほら、こっち!」
ちょっと顔を赤くして、目をウロウロさせるキラさんが面白すぎて、からかっていると・・、急に私を見たかと思うと、名前が書いてある手の甲にキスしてくる。
「・・っ・・!!!」
わ、わわわ!!な、なんで手の甲に・・。
チュ、チュッって音を立てながらキスをするのを真っ赤な顔で見ていると、同じく赤い顔のキラさんが、ちょっと睨みつけるように私を見る。
「・・・ナル、今、ちょっと本当に抑えてくれ」
「・・ふぇ・・・・???」
何を抑えるのだ・・。
思わず顔を赤くした私を、キラさんはもう一度抱きしめると・・思いっきりため息をついた。
と、キラさんの背中越しに一隻の船がこちらへ向かってくるのが見えた。
あれ・・、もしかして助けに来てくれた船かな?
キラさんの背中をポンポンと叩いて、船を指差すと、キラさんはもう一度大きく息を吐く。
「・・・助かった・・・」
何か、キラさんに切羽詰まるような事態が起きたのだろうか・・。とりあえず、船から手を振る人が花火が打ちあがったおかげで見えたので、私は手を振っておいた。ちなみにキラさんは、やっぱりまだ顔が赤かった・・。




