黙して語らない騎士、温泉旅行。4
お昼を受け付けで貰って、各自で食べると温泉タイムである。
・・しかし、この国は、肌をうっかり人様に見せてはいけないので、男性も女性もザックリとした紺色の作務衣みたいな服を着て入るらしい。
は〜〜!
私の国では、服を着て入るのはマナー違反なのに・・。
異世界だと違うなぁ・・。
混浴もあるけど、男女で分かれてるらしい・・。着てるなら混浴でもいいと思うけどなぁ。
「・・キラさん、一緒に入れる所に行きますか?」
試しにそっと聞いてみると、真っ赤になってしまった。
そうか、恥ずかしいのか・・ならば仕方ない。
「じゃあ、私は女性側の方へ行ってきますね」
そういうと、コクコクと無言で頷くキラさん・・。可愛いなぁ。
女性側は、なんとなく衝立っぽいのがあって・・、でもみんな服を着てる。不思議な光景だ・・。お湯は乳白色で下は濁っているので、何も見えない。
・・これ、もうちょっと奥まで行けば、誰も見えないし、脱いでも問題ないのでは?
そう思って、棚田の奥まで進んでいくと誰もいない。
お、ちょうどいいなぁ〜。
柳のような木の枝が垂れていて、誰もいないのをいいことに中にタンクトップは着てるし・・と、上着を脱いで木に掛けた。
下に流れていくお湯を見て、すっかりリラックスモードだ。
気持ちいい〜・・。昼風呂って最高だ!
棚田のふちに腕をのせて、下の棚田を見てみると・・、騎士団の人達が入っていた。・・・衝立の意味とは???
よくみると、キラさんの頭も見えた。
銀色の髪の人は少ないからすぐ分かるなぁ〜。
団長さんが、フランさんに嬉しそうに話している。
「あー、こういうコースまたやりたいなぁ」
「・・分かりますが、クリスさんに聞かれると二度と無くなりそうですから、声は抑えめで」
・・ありがとうフランさん。
静かに頷いていると、足元をなにかがヌルッと触れる。
「ひゃっ!!???」
慌てて足元を見るけど、そうだった!見えない!!
「ナル?!」
下からキラさんの声がして、見てたのがバレないように浅瀬へ戻ろうとすると・・、今度は明確に足元に何かが絡みついてきた!
「や、ヤダ・・何?!き、キラさん!!!」
足を振って、絡みついたのを取ろうと動かしていると、キラさんがこちらへジャンプしてきた。
え?飛んできた?!結構な高さがなかったっけ??
思わず驚いて目を丸くする。
と、足元に絡みついていたのが、上に這い上がってくる感覚にゾワッとして・・
足を上げると、黒い物体が太い蛇のように絡みついてるけど・・
こ、これって・・
「す、スライムーーー!!!???」
一瞬で身体中に鳥肌が立って、足を振ろうとするけどギュウっとスライムが離れまいとくっ付くので、パニックである。
「き、キラさん!!!!」
体を起こすと、今度はキラさんが目を丸くする。
え?何かあった?
自分の体を見ると、あ、そうだ・・上着脱いでた。
「え、え、ええと??!」
思わず、またお湯に潜って足を上げる。
ど、どうすればいいの??
慌てていると、キラさんが静かにやってきて、足にくっついているスライムに魔法の詠唱を唱えた・・と、思ったら、ビクッと動いたスライムが、みるみる萎れていく!!
シュウ・・と跡形も無く消えた足を見て、キラさんを見ると・・
「・・・今は、こっちは見ないでくれ・・」
「あ、はい・・」
真っ赤になって向こうを向いているキラさんがいた・・。
あの、一応服は着てますけど・・。これでもダメなのか・・。異世界夫婦って難しいなぁ。
念の為、周囲を見回してくれたキラさんはスライムが他にいないか確認してくれた。時折、魔物が温泉に紛れ込むことがあるらしい。
異世界の温泉、怖い・・。
キラさんは、木に引っ掛けておいた服を持ってきてくれて、そっと向こうを向きながら渡してくれた。
「・・・ここではちゃんと着てくれ・・」
「二人だったら、いいんですか?」
あえて聞いてみた。
キラさんは、ちょっと真っ赤になりつつチラッと服を着た私を見て、
「・・・照れてしまうから、無理だ」
・・・うちの夫が可愛すぎる。
ちょっと笑うと、キラさんは小さく笑って下へジャンプして戻ったけど・・、えーと、その戻り方はいいのか??下で団長さんが「うおぉおおい!!ウルキラ!!」って、叫んでるけど。




